妖精息子3の14
「いいんですか?」
「いいよ。このままだと戦闘に巻きこまれて2羽とも死んでしまうかもしれないだろう?
正直、ぼくは実の親だからと言ってこのものたちに特別な感情はなにも無いのだけど、母さまやさわこに接しているうちに少しあまくなったみたいだ。ここで死なれても、後味が悪い」
実の子の冷静きわまりない言いぐさに、夫婦は
「ああ、あんた。聞いたかい?親孝行な子だねぇ」
「ほんとうだ。ふつうのカッコウは産みの親のことなんか、なにも気にかけないよ。やっぱり高貴なもののところに預けてみるもんだなぁ。取り替えてよかったよ……っと、おや娘さん?あんたとは前に会ったことがあるね」
さわこを見て、首をかしげる。
えっ?あたし?そういえば、さっきからなんだか2羽とも見おぼえがある気がしてたんだ……
同じく不審を感じていた少女に
「そうよそうよ、あたしたちが診療所にいたときに会ったんだ。のんのんせ……」
ドンッ!!ガラガラガラ……!
雌鳥が言い終える寸前に、地下中にすさまじい衝撃とさまざまなものが崩れる轟音が響いた。
「きゃきゃあ!きゃあきゃあきゃあ!きゃあ!」
急なことに、カッコウ夫婦が慌て羽たたく。
ヘイタイムシがふりかえって
「なんということだ!抜け道への通路が塞がった!これでは、一度上にもどるしかない!」
そんなことを言われても、上では激しい戦闘がくりひろげられている。そんな危険なところに坊をつれてもどるわけにはいかない。
「かと言って、このままではにっちもさっちもいかん!このあたりもいつ崩落するかしれぬ」
いったいどうすれば……
文字どおり行き詰まったさわこらに
「……外に出たいなら、あっしが案内してやりますぜ」
カッコウのとなり牢屋で、声を出すものがいた。
それは……
「人形?」
そこにいるのは、なにかの破片をつぎはいでつくられたモザイク人形のような風体のものだった。見るからにポロポロとしている。
「ただし、あっしも連れ出しておくんなさいよ」