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妖精息子3の13

 そこには、牢屋がならんでいて、いかにもじめじめと暗い。


 坊は柵の向こうをうかがうと

「――ああ、いたいた。やっぱりこんなところにいたの?気配はなんとなく感じていたけど」


 柵の向こう……牢の中にいたのは、坊とそっくりな形をした、しかしもっと大きく成熟した鳥2羽だった。

 坊と似ているというより、間違いなく同じ種族だ。


 その2羽(顔はそっくりそのまま人間の中年の男女)は、坊のすがたを認めると

「ああ。おまえ、ほらごらんよ。あれは、おれらが預けたぼうやだよ」

「ああ、ほんとうだ。あたいらの愛の結晶だねぇ」

挿絵(By みてみん)


 仲むつまじげにたがいの羽根を擦りよせあって

「見てごらん。いまじゃすっかりこの世界の高貴なものだ。よくやったものだねえ。これも、おまえがたまごをうまく王妃の寝床に投げこんだからさ」

「いや、あんたがうまく警備の目を外に向けてくれたおかげだよ。よくやってくれたねぇ。チュッチュ」

「いやすべておまえの手柄だよ、チュッチュ」

 仲良くついばみあう。


 夫婦つがいらしい。そして、どうやら坊の本当の親はこの2羽ということになるようだ。

 彼らが、坊と王子のたまごを取り替えたのだ。


 どうして、坊の親がこんなところでつかまっているのだろう?

 さわこの疑問に、


 雄鳥おどりは肢で顔を掻くと

「へへへ。おれらカッコウは、産み落としたこどもに直接関わることは一切しないけどね。ただやっぱり、こどもがどんなふうに育っていくかには興味があるからねぇ。観光がてら、もう一度この世界までその子の様子を見に来たのさ。

 前にこの城に忍びこんだときうまく行ったから、今度もうまく行くだろうと思ってたら、どうも前より警備がかたくなっていてねえ。つかまってしまったよ」


 雌鳥めどり

「あの奥方ときたら、あたしたちの顔を見るといやな顔になってね。首をはねてしまえと言ったのよ。あたしたちはもう死刑寸前。おっかないよ。ブルブル」


「そうだ、おそろしいな。でも俺たちゃ死んでもいっしょだよ、おまえ。チュッチュ」

「あら、あんたうれしいよ。あんたといっしょなら、あたしゃなにもこわくないよ。チュッチュ」

 こどもをほったらかして、ふたたびついばみあう。


 子のほうは、落ち着いた口調で 

「やはり母さまが捕まえていたんだね。ぼくにないしょで処刑する気だったんだろう……まったく彼女ときたら心配性なんだから。ぼくを実の親に取られるとでも思ったんだろう。そんなことないのに……まあいいや。

 さわこ、このものたちを逃がしてあげて」



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