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鬼哭のナツメ  作者: れーめぃ
3/5

【3】白銀を纏う者

無事依頼も終えた次の日、私達は休暇を取ることにした。


「ナツメ〜!!」


一階の食堂で朝食を取っていると、二階の宿場の方から声がした。

それから幾許もなくして、階段からナギがひょっこりと頭を出した。


「ん?ナギか。どうしたんだ?」


「今ね、占い師がこの近くに来てるみたいだよ!ちょっと見に行かない!?」


「ん〜?」


占い師か……。

そう考えながら思い出すのは、昔出会った市女笠の占い師だ。

鬼が知り合いにいるだとか不思議な事を言っていたし実際変な力で未来を見てくれたので、著名な者かと思い天狗と同じく情報を集めたのだが、天狗とは違い何一つ掴めなかった。

もしかしたらその人だろうか?

そう思うと、好奇心が湧いた。


「…よし。食べ終わったし行ってみるか」


「ほんと!?わぁーい!」


「こらナギ。食堂で騒ぐな」


「だって!ナツメが誰かと行動するの珍しいからさ!」


「それはそうだが……まぁいい。行くか」


「うん!」


そうして食器を戻すと、私達はその占い師が居るという場所へ向かった。

そうして10分程走るナギについて行くと、路頭の柳に腰掛ける女を見つけた。

その女は市女笠を身につけ、白銀に彩られた美しい着物をきていた。

一瞬驚いたが、服の色と物静かな印象が別人である事を告げていた。


「……あら?お客さんね」


「こんにちは!占いをして欲しくて来たんですけど大丈夫ですか?」


「ええいいわよ。それじゃ私の目の前に立ってくれる?二人一緒でいいから」


「はーい!ほらほらナツメも!」


そうしてナギに引っ張られて女の前に立つ。


「それじゃ見るわね」


女は目を閉じた。

それから女は目を閉じたまま静かに喋り出す。


「まずそっちのちっちゃなお嬢さんからね。どれどれ………これは、なんとも……忌々しい」


突如として女がそう呟くが、ナギには聞こえなかったようだ。


「なんだ?なにか見えたのか?」


私はそう問う。


「…お嬢さんは最期まで幸せな人生よ。…良い人に出会ったのね。ただ…鹿に気を付けて 」


「鹿??なんで鹿なの?」


「それは言えないの。ごめんなさいね」


「ふーん……まぁ幸せなら良いよね!ちょっと思っていたのとは違うけど、私には十分だよ!」


「そうなの。いい事ね」


そう言って女はにっこりと微笑んだ。

そうして私の方を向く。


「次は貴方ね……えーと…これは」


「ああ分かってるよ。『色々なものを失う』だろ?私を占った奴は大抵そう言う」


「あら…そうなのね…。因みに他に誰が貴方を占ったの?」


「ん?占った奴か?あんたと同じ感じの市女笠と黒と青の着物を身につけた女だよ。あんたよりは元気だったけどな」


そう言うと急に女は目を見開き驚いた表情をして立ち上がった。

そうして私に近づき詰問する。


「その女の人と出会った場所は!?どんな声だった!?見た目は!?いつ出会ったの!?」


「おい!?ちょっと落ち着け。なんだあの人がなんかやったのか?」


「……私が旅をしている理由の一つがあの人を探す為よ。少なくとも貴方に今聞くまでその人は"数千年"消息が知れなかったのよ」


「……は?数千年?そんなに生きられる訳ないだろ。妖だって衰える年月だぞ」


「ええ。普通の妖ならね。ただ、それよりも生きられる"ありえないほど理解不能な種族"がいるじゃない?」


「……まさか」


「そうよ。恐らくその人は神よ。それも、相当上位のね。何千年も自我を保てるなんて神でしか成し得ないから」


「あの人が……」


なんという事だ。あの人、市女笠の元気な占い師は神である可能性が出てきた。

確かに本当に神ならば、一人旅をしていても安心だろう。

しかし疑問が出てくる。

それは一体何のために旅をしているのかだ。

数千年も、たった1人で。

考えていると、ナギが口を挟む。


「ねぇ!何を話してるの?」


「ん?あぁ…昔会った人の話だ」


「ふーん。その人がどうかしたの?」


「それは……」


返答に困っていると、唐突に市女笠の女が話し出す。


「お話はお二人でゆっくりどうぞ。私はこれで失礼するわね」


「あれ?もう行くのか?」


「ええ。占いで少しは路銀もできたし。私の旅路が長くとも無駄ではないことが分かったしね。貴方のお陰よ、ありがと」


「いやいいんだ。私も気になってたことが一つ消えてスッキリしたからな」


「そう。それじゃまたどこかで。願わくば、貴方達に蒼き光の護りがありますように」


そう言って市女笠の女は去っていった。

私は気にかかっていた事を思い出す。


「なぁナギ」


「ん?なになに?」


あの女がナギを占う時に言っていた『忌々しい』とは何だったのだろうか。


「…いや。なんでもない」


「えー?気になるー!」


「いやいやそんなに面白いもんでもないからな」


「ふーん、ならいいけど…」


そうだ。今は言わなくてもいい。

まだ何も分かっていないのだ。

鴉天狗も、神も、市女笠も、この世界の事も。

全部が全部、謎に包まれているのだ。

だからまだいい。そう思った。


「よし!占いも終わったし帰るか!」


「うん!そうだね」


そんな簡単なやり取りをして私達は帰ることにした。

《泡沫ノ夢》に帰る途中、様々なお店や見世物を楽しんだ。

そうして部屋着いた頃には既に夜になっていた。


「はぁー!楽しかったー!!ナツメは?」


「あぁ、楽しかったよ」


「だよねだよね!!じゃあさ、また今度遊びに行こうよ!今度はもっと沢山の事をしようよ!」


「そうだな。今度はもっと楽しいことをしような」


「うん!それじゃ、私は先に寝るね。おやすみナツメ」


「あぁ、おやすみナギ」


そうしてナギが寝たのを確認した後、一日中遊んで疲れた私も寝ることにした。



______________________________________



無限に広がる森の海を眺めながら、白銀で彩られた市女笠を着ている女は星の下に座る。


「やっぱり山の上は良いわね。森も星も見える」


垂れ衣を靡かせながら、市女笠の女はそう考える。

しかしどうしても気がかりな事があり、綺麗な夜景に集中出来ていなかった。


「あの子…なんであんな……恐ろしいことになるの?」


そう言いながら、予知の中で見たものを思い出す。


「血溜まり、涙、誰が叫んでいたの?あれは…なんであんな……そうなのね。実に、実に忌々しい……」


そうして不快な表情を森に向ける。

森がそれに恐怖するかのようにざわめいた。


「……あら、気付かれたかしら。5キロは離れているのに。この距離でも気付くなんてほんとに恐ろしいわね。それじゃ、逃げましょうか」


そう言い市女笠の女は人型に切った二枚の紙を取り出し、地面に投げる。

紙であるにも関わらず、鋭利な刃物のように人型人形は地面に刺さった。


「よし。これならまだここにいるって勘違いしてくれるかしらね」


そうして市女笠の女は森の中へと走り去って行った。

後に残ったのは、二枚のヒトガタと今も森に残る憎悪の念だけだった。

どうも皆さんこんにちはこんばんは。

短いと思ったのなら気の所為ということにしておいて下さい()


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