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黒界異人伝・生命の戦争  〜転生20年後の戦い〜  作者: 明鏡止水
二章・死の炎

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再襲

完全に日が沈んでから約20分後、ロザミから連絡が来た。

「西の方角に敵軍が現れました。

塔を西向きに動かすので、狙撃をお願いします」


西の方を見ると、確かにアンデッドの大群が見えた。

暗視魔法のおかげで、暗くても普通に見える。

「わかりました。ありがとうございます」


そして、私達のいる塔がまるまる動き出し、西の方を向いて止まる。

マドール城は別名「機械仕掛けの城」とも呼ばれていて、城壁や塔、果ては居館までが自由に動き、その形や位置が多様な変化を遂げる。

昔はよく動いていたらしいけど、今は戦争の時くらいしか動かない。


…そうだ、今は、これは…戦争だ。

「生きた」死者と私達の、戦争なのだ。


「結構連れてきたみたいだな…」

彼は弓を取り出す。


「ざっと1000、といった所でしょうか。

今はまだこちらには気づいていないでしょうし、少しでも数を減らしましょう」

そして私も弓を構え、矢を番える。



「[拡散氷矢]!」


「[流星撃ち]!」

私達が放ったのは、どちらも複数の矢を降らせる技。

矢には魔力を込めてあるので、普通の矢より長く、そして早く飛ぶ。

そして技自体の威力が高めなので、普通のアンデッドならほぼ一撃だ。


一度だけでなく、何度も技を放つ。

魔力と技力はかさむけど、兵士達の負担を少しでも減らしたい。


やがて、城壁から様々な色の炎や光がアンデッドに向けて打ち出され始めた。

兵士たる術士や魔法使いが戦ってくれているのだ。

「頭数はある程度減らせたはずだ。あとは任せよう」


「そうですね。一旦城壁の外に出て、東の方に行きましょうか」


アンデッド軍団の近くにエイミ達はいなかった。

となれば、おそらく反対側から来ている。


その見込み通り、町の東に彼らはいた。



「来たな」


「諦めが悪いわね」


「当然であろう。

この町を滅ぼすのは、我らが主の意思。

楓姫様の望みとあらば、我らは尽力するのみだ」


「あいつは、この町を潰したくて仕方ないみたいでね。あいつの友人として、希望に応えない訳にはいかないのよ。

て訳で、あんた達には消えてもらうわ」

と、ここでエイミに魔弾が飛んできた。

エイミは瞬時に気づき、バックダイブして回避した、

「っ…何者!」


「私です!」

現れたのは、ロザミとリヒセロさんだった。

今の魔弾を撃ったのはロザミだったらしい。

「っ…お前達!」


「話は聞きましたよ。何度来ようと無駄なことです。

町は渡しません!」


「あら、ニームの長の妹さんとロザミ…だったわね。

何、こいつらはお前達が呼んだ用心棒、ってわけ?

まったく、随分と頑張るわね」


「あなた達などに、勝手な事はさせません!

今度こそ、あなた達を倒します!」


「マトルアは術士の国。お前たちのような外道が来る所ではない!

何度来ようと、この国はお前たちには渡さない!」


「相変わらず威勢はいいな。水兵どもにそっくりだ。だが、果たしてどうかな?」


バスムは杖を取り出し、術を唱えた。

「闇法 [深淵の霧]」


怪しく紫に光る霧があたりを覆い、強い倦怠感と胸の痛みが襲ってきた。

「うっ…!胸が…!」


「何これ…苦し…い…!」


「っ…!毒の瘴気か…!?」


「毒とは違う…体を内側から蝕む闇の瘴気。

純粋な闇に属さぬ者を蝕む霧…」

仮面をつけているのでわからないけど、バスムは平気そうだ。

エイミは、当然のように平然としている。


「これで私達の方が有利ねぇ…。さあ、始めましょう!」

エイミは私に斬りかかってきた。

咄嗟に結界を張って防いだけど、今のはなかなか重い攻撃だ。

何発も喰らえば、余裕で結界を割られるだろう。


「[ジゴクラッシュ]!」

バックダイブしようとしたけど、怠さと苦痛で思うように体が動かず、結局食らってしまった。


「アレイ!大丈夫!?」


「え、ええ…」

そうは言ったけど、結構なダメージだった。

服が胸元から裂けて血が溢れ、強い痛みが襲ってくる。

そこにさらに瘴気の影響が重なり、とても苦しい。


正直立てない程だったけど、魔力で傷と痛みを癒やして無理やり体を動かした。

みんなが戦っている中、私だけろくな戦果を上げずに倒れる訳にはいかない。


「へえ…根性あるのね」

エイミが隙を見せたその瞬間、









ロザミが術を放っていた。

「[道化師(ジョーカー)の玉遊び(ボールキア)]」


それはエイミの顔に右から当たり、吹き飛ばした。


「エイミ様…!」

間髪入れず、バスムにも同じく術を当てて吹き飛ばす。

私はエイミに追撃しようとしたけど、ロザミとリヒセロさんはバスムに追撃しようとしていた。


龍神さんもちょっと驚いていたけど、奴を見て何か悟ったのか、一緒に追撃した。

「[ベターバット]」

「[妖剣かまいたち]」

「[ラインスパーク]」


バスムは血を吐いたものの、死にはしなかった。

そして、その仮面にはヒビが入っていた。


それを見て、私も彼らの考えを理解した。

こいつの正体は、恐らくは…


龍神さんが痺れさせ、リヒセロさんが仮面を引っ張ったが取れない。

そこで、私とロザミで力を合わせて術を放った。


「「合術 [ノワールオンフリーズ]!」」

バスムに黒い巨大な氷がつき、弾け飛ぶ。

見た目は派手だけど、これは相手を殺すための術ではない。


むしろ、彼らを救うための術だ。

彼に…いや、正確には彼の仮面にかけられた呪いを解くのが目的だ。


それを見たエイミは、

「なっ…!や、やめろ…!」

と手を伸ばしてきたが、リヒセロさんが斬りつけた。

「ぎゃっ!」


私とロザミは顔を見合わせ、頷く。

そして、こう唱えた。

「「高貴なる仮面の者よ、汝を蝕む忌まわしき呪い、我らがここに解かん!」」


仮面が眩い光を放つ。


「ぐあっ…!温かい光…苦しい…!!」


光を浴びたエイミが苦しむ。

アンデッドが浴びて苦しむ光…

それは生命の力、あるいは純粋な光の属性を持つ光だ。


そして、光が消えた時…

彼は、本来の姿に戻っていた。


「これは…!?」

それを見たロザミが驚く。

勿論私も驚いた。


呪いが解けた黄色い仮面。

そしてその下の素顔は、ベクスに間違いなかった。




異人・術士

豊かな魔力を有し、魔法を上手く扱える人間「術者」が異人として進化した種族。

魔力を体に取り込み、魔法を自在に操る事が特徴で、異人の中では殺人者や防人と並び最も人間に近い種族の一つ。

上位の種族と比べると身体能力や魔力は劣るが、専攻の属性を持たずどんな属性の魔法でも扱う事が出来る。

そのまま昇格すると魔導師、光・闇・(ことわり)(光と闇と黒以外の属性の総称)のいずれかの属性を究めると修道士・祈祷師・魔法使いという種族になる事ができ、それらの種族を含む術士系という巨大なグループを形成している。

 

異人・マスカー

「仮面の者」として古くから世界各地で知られる種族。

多種多様な仮面を被り、全身をすっぽりとローブで覆った姿が特徴。

常に複数人で現れることとその外見故、他の種族から不気味がられる事が多いが、実際は独自の社会を築いてひっそりと生活している大人しい種族。

その正体は仮面に魔力や魂が宿ったもので、肉体を持たない珍しい「霊体系」に分類される異人。

上位種族に肉体を有し、より高度な社会を築く「ペルソナ」が存在する。



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