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黒界異人伝・生命の戦争  〜転生20年後の戦い〜  作者: 明鏡止水
二章・死の炎

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星気霊廟・生存者の試練2

どうにか彼が脱却策を打ち出してくれればいいんだけど…


そんな願い事をするまでもなかった。


「雷法 [電圧開放]」


彼が体から電気を出して浴びせてくれたお陰で、私達は開放された。


まだ魔力は回復しきっていないので、純粋な武器の技で攻める。


「剣技 [隼(はやぶさ)返し]!」


「刀技 [水月斬り]!」


向こうは剣で龍神さんの攻撃を、ハンマーで私の攻撃を受け止めた上で、

「人外剣…」


剣の技を使ってきた。

どうにかしのいだけど、続けてやってきた短剣の技はそうもいかなかった。

「非情刃…」


左足に攻撃を食らうと同時に、膝をついてしまった。

立とうとしたけど、痛みで立てなかった。


(すじ)を切られたのかもしれない。

とすると…


「アレイ!」


龍神さんが飛び込んできて、バリアを張って攻撃を防いでくれた。

「大丈夫か…!?」


「た、立てなくて…筋を切られたかも、知れないです…」


「なにっ…!っ、っ……!!」


式神の計9本の腕を用いた攻撃。

彼はそれをどうにか受け止めたけど、少しずつ後退している。


このままでは危ないので、ちょっと無理はあるけど、治癒魔法をかけて足の傷を癒し、彼のサポートをする。


「[モナークブレイク]!」

私より上位の種族に特効がある弓の技。

式神に特効があるかは分からないけど、素でも威力が十分あるし、通じるはずだ。


 

私の技を受けて、式神はにわかに怯んだ。

その隙をついて、龍神さんが払い抜ける。


フローズンクラスト、と唱えようとしたら、別の術が浮かんできた…。


「氷法 [フリーズモール]!」


相手の体を瞬時に凍りつかせ、即死させる。

式神に即死が効くかは分からないけど、威力もある程度あるはず…。





式神の体は凍りつき、動かなくなった。


程なくして凍った体を解かして動き始めたけど、もう襲ってはこなかった。


「見事だ。

この先の試練はさらに過酷だが、それでも進むか?」


もちろん、進むと答えた。

ここで止まる理由はない。




奥へ行くと、先へ進む通路の前に式神が立ち塞がり、部屋の中を何人もの式神が歩き回っていた。

立ち塞がっている式神に声をかけると、何も言わずに4本の牙を持ち、コウモリのような翼を生やした怪物に変身した。

それと同時に、部屋の中にいた式神たちが一斉に牙を剥き、襲ってきた―




「…へえ、原種吸血鬼か」


見るが早いか、龍神さんは吸血鬼の胸に掌を打ち付けてふっ飛ばし、倒れた所に刀を突き刺した。


魔力はすでに回復していたので、後ろを向き、背後からくる吸血鬼達を「凍てつく大地」で倒す。

何体か仕留めきれないものもいたので、それらは矢を射って倒す。


そう言えば今更だけど、なぜ私は普通の矢や氷の術で吸血鬼やアンデッドを倒せるのだろう。

龍神さんは私に吸血鬼狩りの素質がある、なんて言ってたけど…実際、どういうことなんだろうか。


まあ何にせよ、今は考える時じゃない。「生き残る」時だ。



次の部屋は、さっきと全く同じ部屋だった。

デザインも、奥への通路に式神が立ち塞がっている点も同じだ。

ただ、部屋の中を歩き回っている式神の数がちょっと多い。


やはり、出口に立ち塞がっていた式神に話しかけると吸血鬼に変化した。

勿論、部屋の中を歩き回っていた式神も同様に変化した。


またまとめて片付ければいいだろう…

そう思ったのだけど、氷の術が全く効かなかった。

  

「アレイ、こいつらは耐性持ちだ!」


龍神さんの言葉を聞いて、すぐ理解した。


彼らは仲間が倒されると、その原因となった武器・属性の攻撃に耐性を持つようになる。

つまり、徐々に有効な攻撃手段が減っていく。


この先も出てくる可能性を考え、衝撃魔法で倒した。

あと何回出てくるのかわからないけど、得意な攻撃手段は取っておいた方がいい。


部屋の奥にいるものは龍神さんがやってくれる。

さっきは刀で倒していたけど、今は電撃を浴びせて倒している。


あんなに飛ばして大丈夫なんだろうか。

私の知る限り、彼が使えるのは刀と弓、体術、そして電と月の術。  

手段を変えながら攻撃するにしても、技を連発すれば疲れるし、術を連発すれば魔力が枯渇してしばらく回復や緊急防御が出来なくなる。


私の場合、相手にもよるが基本は技を駆使して戦い、ある程度疲れてきたら術に切り替える。

そして、どんな戦闘でも最低2回の防御結界と治癒魔法を使えるだけの魔力を残す。

私は魔力は高めだけど体力はそんなにないので、最悪、どうにか死なずに済むようにしているのだ。


彼はどうなんだろう?

何も考えずに戦っているとは考えにくいけど…

だからと言って、道具などで魔力や体力を補強しているようにも見えない。


とにかく、この試練が終わるまで彼が持ってくれればそれでいい。

私も彼の事は言えないが。


次の部屋にいた式神もすべて吸血鬼だった。

やはりさっきより数が増えている。

これは、魔導書を使って唱える中級の光魔法「グリーム」で倒した。


それに触発されたのか、龍神さんも魔導書を使って敵を倒していた。

最初は何の魔導書を使っているのかわからなかったけど、数秒後にわかった。

彼が使っているのは「クルーエル」、闇の即死魔法。

決まると相手が目や耳、口や鼻から血を噴き出して倒れるというかなり過激な魔法だ。


無駄にレベルの高い魔法なので祈祷師や術士にはまず扱えず、効果があまりに酷いため陰陽師や魔女は殆ど使わない。

使うのは、ごく一部の祈祷師や血を好む殺人者くらいのものだ。

…まあ、彼の場合は関係ないか。



次の部屋には、奥への通路を塞ぐ式神はいたけど、部屋の中をうろうろする式神はいなかった。

そして…


「来ましたね」


「よくぞここまでの試練を生き延びた」


「ここまで来れる者はそういませんよ」


「少しは骨があるようだの」


男女2体ずつ、計4体の式神が一斉に喋りだした。


「ごちゃごちゃ言わないでくれ。

要は、どういう事なんだ?」 

龍神さんが、半ば呆れながら言った。


「我々は次の試練の相手。

貴方達の精神力を試させてもらう」


「ここは色欲の試練。貴方達に、誘惑に負けぬ強い心があるか、見極めさせてもらいます!」


誘惑、か。

古の時代にはアンデッドが異性の生者を誘惑して堕とす事が多かった。

自身の心に打ち勝てるか、ということだろう。


…もしかしたら、これは吸血鬼狩りの素質がある者を選び抜く試練なのかも知れない。


「なるほどな…」



まあ、これは大丈夫だろう。

だって…




「準備はできているようだな。では、参ろう!」


「私達と貴方達…

魅力があるのは、どちらなのでしょうね?」




私達は、異性の誘惑に負けるほど浮ついてはいない。



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