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黒界異人伝・生命の戦争  〜転生20年後の戦い〜  作者: 明鏡止水
二章・死の炎

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邪教徒二人

ユゥルは一冊の黒い呪術書を取り出す。

「出でよ、カーカス!」

地面が盛り上がり、肌が茶色っぽいゾンビのような怪物が三体現れた。

リヒセロさんがまとめて剣で斬ると、分裂して増えてしまった。

「なっ…!」

「ふははは!ユゥルのカーカスは、そんな剣などでは殺せんわ!」

リブーが高笑いした。


とその刹那、キャルシィさんがリブーに斬りかかる。

リブーは杖でキャルシィさんの斧を防いでいた。

「力は見事だ…だが!」

リブーはキャルシィさんを弾き飛ばし、

「力技ではどうにもならない事もあるのだ!

出でよ異形アドヴァー!」

サソリのような黒い異形を呼び出した。

こいつは見たことがある。夏の夜に町に入ってくる、獰猛な異形だ。

こいつが厄介なのは、物理攻撃がろくに効かない事。

しかも耐久がそこそこあるので、結構術を当てないと倒せない。

「へえ。確かに、力ではどうにもならない事もあるわね。

けど、この程度の奴をぶつけてそんな台詞を吐くのは違うんじゃない?」

キャルシィさんにとっては何てことない相手であるらしく、

「水法 [デッドスプラッシュ]」

一撃で葬っていた。

それを見たリブーは、再び異形を召喚した。

今度は、1体でなく10体近く。

「[ブリザードルーラー]!」

「[ジェットチェイサー]!」

「[エルクボルト]!」

キャルシィさん以外の全員が、それぞれ術を放った。

そして全ての異形を速やかに倒し、三人でリブーを狙う。

リブーはすぐに反応し、反撃してきた。

「[常々の闇]」

術をかわして近づき、まずリヒセロさんが斬りつける。

次に龍神さんが斬り、最後に私が斬る。

「ぐぉっ…!!」

リブーは呆気なく倒れた。



「我が魂は、偉大な主と共に…」




ユゥルはというと、術で生み出した刃でキャルシィさんと斬り合いをしていた。

そして、相方が倒されるのを見たユゥルは、取り乱すことも激怒することもなく、

「リブーをやったか。

けど関係ない…あたしは楓姫様の力を授かったんだ!」

と、新たに杖を取り出した。

「偉大な主よ、我が身にあなた様のお力をお与え下さい…」

杖に莫大な魔力が集まっていく。

私達はすぐに個別で結界を張り、防御の構えを取った。

そして…


「炎法 [ドラゴファル]!」

莫大な炎を噴き出した。

それは数秒程続き、結界ごしに熱が伝わってくるほど激しいものだった。

「この炎は…」


「うちらの主、楓姫様のお力さ!

あたしは恐れ多くも、あのお方の力の一部を使わせて頂き…そのかわりに、あの方の完全な復活の手伝いをさせて頂いてるんだよ!」


「完全な復活…?どういう事?」

リヒセロさんがそう聞いた。

「25年前の儀式で、生の始祖の血を引く者…星羅こころ様が再生者となられた。それによって、楓姫様は復活なされた。だが、まだ一つ封印が残るせいで、お力を取り戻されていない。

封印を解く方法はただ一つ…

もう一人の生の始祖の血を引く者にして、星羅こころ様の妹…

アレイを、殺す事だ!」

やはりそうだったんだ。

彼女らの狙いは、キャルシィさんもだけど私もだったんだ。


「なるほどね…」

キャルシィさんは斧を下げた。

「どうした?降伏か?」


「そんな訳ないでしょ?」

リヒセロさんは、キャルシィさんから離れた。

それを見て私もああ、来るな…と思った。


「そういう事なら、なおのことあんた達を逃がす訳にいかないなー、ってね」

そして、長は現した。

莫大な力と威圧を放つ、8枚の黒い翼を有する堕天使のような姿を。


これこそ、黒夢の水兵長の本来の姿。

そして、ニームの長の本気の姿だ。


ユゥルはにやりと笑った。

「ふふ…いいねえ!あんたのその凛々しいお姿を見たかったんだ、ニームの水兵長さんよ!」


「あなた…お姉様の力を知らないの?」

リヒセロさんが、呆れにも聞こえる言葉を発した。

「知ってるともさ。その翼に秘められた闇の力は…あたしらにとっちゃ、どんな財宝より価値があるシロモノだよ!

本当は体ごと持ち帰りたい所だけど…状況が状況だからね、仕方ない。

妹ともども始末して、その躯から剥ぎ取ってやるよ!」

ユゥルは嬉しそうな声をあげ、

「楓姫様への捧げ物として十分だ…

呪術 [死神の宴]!」

呪札を取り出し、無数の死神を呼び出した。

死神たちはたちまちキャルシィさんに群がり、キャルシィさんの姿は見えなくなった。

「お姉様!」

リヒセロさんが叫んだけど、この位心配ない。

私達の予想通り、数秒の後、死神達は翼で吹き飛ばされた。

「こんなもん?」


「そんなはずがない。次はこうよ!

呪術 [哀れなる姫]!」

地面から黒い女性?が現れ、その目からムカデが這い出てきて、髪が蛇になってキャルシィさんを襲った。

けれどキャルシィさんはその蛇とムカデを手で捕まえ、

「化け物が私に触るなんて許さないわよ?」

と両方を限界まで引っ張り、そして離した。


「ならばこれでどうだ…

呪術 [葬(そう)()()(むくろ)]!」

虚空に現れた黒い球体から、無数の人の手がキャルシィさんに向かって伸びる。

「あら、薄気味悪い」

キャルシィさんは翼で手を防ぎ、素早く広げて手をよけつつ、

斧で切り上げて手を球体ごと消し飛ばした。

「なっ…」

ユゥルは驚き、そして怯んだようだった。


「もうショーはおしまいかしら?」


「…おのれ、舐めやがって!」

ユゥルは激昂し、杖に魔力を集めて殴りかかってきた。

「もうすねちゃったの?つまんない」

キャルシィさんはユゥルの杖を右手だけで受け止め、

[錨(いかり)を上げよ]」

斧を振り上げた。



ユゥルが吹き飛ばされ倒れた所に、リヒセロさんが追撃した。

「剣技 [切り開き]!」

お腹を斬られ、血が噴き出す。

さらにそこに、キャルシィさんも追撃。

「最後は私にやらせて?

斧技 [小物の腹開き]」

斧を振り下ろし、ユゥルの体を縦に真っ二つに切り裂いた。


「楓姫の護りがあらん事を…」

ユゥルはそう呟き、事切れた。








リヒセロ·ファンド·ロームド·レニーム

キャルシィの3歳下の妹。

一目で相手の経歴や種族·名前などの情報がわかる「解析」の異能と、優れた剣の腕を持つ。

大柄な姉とは違い、身体は比較的小柄。

その戦法も姉とは異なり、スピードとテクニックを活かした戦いを得意とする。

普段は見せずあまり知られていないが、水兵長の血を引くため姉同様に闇の翼を持っている。

かつて魔女の元で修行した経歴があり、術の扱いにも秀でている。属性は風。


異人·祈祷師

術者から分岐する種族の一つ。

闇魔法の他、異形や悪魔、邪神など「闇の者」と呼ばれる存在と契約を交わし、その力を用いる事ができる。

その性質·思考上、カルト団体や新興宗教の構成員となる場合が多い。

上位種族の呪術師はより強力な闇魔法の呪術を扱い、さらに上位の陰陽師は複数の属性を有する高位の術[陰陽道]を扱う事が出来る他、最上位の術の一つである九星天術を扱える者も存在する。


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