起死回生
王典は私達を改めて睨み付ける。
そして、
「[デッドマンズ·オンスロート]」
恐らく補助技であろう技を自分に使い、
「[巨人連弾]」
連続攻撃を撃ち込んできた。
幸い判定こそ大きいものの連射速度はそこまで早くないので、一撃一撃を回避するのは難しくない。
でも避け続けるのは疲れるし、身体中の痛みで動きが鈍っている。
かといって当たれば致命傷は避けられないだろう。
体に無理を言わせ、しばらく回避を続けた。
「…」
突然、王典は攻撃を止めた。
そして、
「情けないな。生の始祖の血を引き、殺人鬼と共にある者だというのに、戦いの痛苦に負けるとは。
お前には、勝ちたいという気持ちがないのか?」
と言い出した。
「…何ですって?」
「当然だろう?真に勝ちたいと思うならば、どれほどの痛み、どれほどの血を舐めようと、全力で戦うはずだ。
傷の痛みに負けるは己の弱みに負けると同義。
まあ、所詮は人間上がりの貧弱な娘ということか」
そう言っている間にも龍神さんが攻撃を仕掛けていたが、どれもさほど効いていないか弾かれてしまっていた。
さっきまで普通に効いてたのにどうして…と思ったけど、考えてみれば王典は地属性。電属性である龍神さんが不利になるのは必然だ。
「多少は骨があると思ったのだが、思い違いだったようだな…
俺は弱い奴に興味はないが、俺にはお前が必要だ。
素直に来てはもらえなさそうだからな、仕方あるまい」
王典はそう言って、技の構えをとった。
(あれは…)
なんとなくわかる。
あれを食らえば、私は死ぬ。
攻撃しようにも、弓を構える事もマチェットを振る事も出来そうにない。
(ああ、終わりか…)
やっぱり、私に再生者と戦うなんて無理があったんだ。
もはや抗う気力もなく、棒立ちした。
でも、何だろう…
心のどこかに、まだ死にたくないという感情があった。
私には、まだすべき事がある。
私には、まだ大切なものがある。
私にはー
「す…」
「…?」
「[スターナイト·トライアンフ]!」
無意識のうちに、術を放っていた。
そしてそれは、今までで一番効いていた。
「アレイ…!」
龍神さんが驚き、そして感心していた。
「ぐあぁっ…」
王典は吹き飛び、後ろに倒れ込んだ。
言われなくてもわかる…
今のは、かつてここで使われた技。
そして放ったのは…言うまでもない。
「お、おのれ…」
王典が立ち上がってきた。
「小生意気にも、あの陰陽師の術を使いやがって…」
「私が彼女の末裔だと知っているのなら、始めからわかりきってた事のはずよ。
そして…」
あの錫杖を取り出す。
「私が、あなたを倒すべくしてここに来たことも!」
それを見た王典は若干驚きつつも、
「小娘が何を…!
殺人鬼もろとも、殺してくれる!」
怒りにも近い雄叫びを上げ、私に飛びかかってきた。
でも、もう恐れる事はない。
錫杖を掲げて、
「陽道 [赦しの火光]」
かつてと同じ術で止めをさす。
王典はふらつきながら後退していき、倒れると同時に消滅した。
私は、中央におかれた古びたハンマーに近づく。
そして唖然とする龍神さんを尻目に、
「星法 [昴の子らの歓声]」
小さいけれど強力な結界を張り、封印した。