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黒界異人伝・生命の戦争  〜転生20年後の戦い〜  作者: 明鏡止水
一章・流れる血

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血の戦い

王典の体が瞬間的に凍り付き、動きを止めた。

その隙に、釘付けから脱出した龍神さんが、

「[ペルトグラドス]」

サマーソルトのような体術を放った。

王典は表情をにわかに変え、後ろに吹き飛んだ。




「なぜだ…」

まとわりつく氷を剥がし、王典が低い声で唸った。

「?」

「スターライトの銘がつく術を、なぜお前が持っている!」

「なぜ、って…」

そう言われてもなんとも言えない。

今の技は、今突然閃いたものなのだから…

「わからないか?」

「…!?」

龍神さんが言い出す。

「アレイはシエラの末裔…

奴の力を持っていても不思議はないだろう?」

とすると、今のは私の先祖の力を借りるか何かした術?

てことは…

「なるほど…な…確かに、そうだな。

だが…」

王典は構えて、

「所詮は水兵、俺の敵ではないわ!」

ハンマーを高々と振り上げた。

王典の左肩、左腕、武器が、徐々に薄い岩で覆われていく…。



左半身が岩でできているようにも見えるその姿を見て、こいつは私が倒さなければならないものだと直感した。

そして…

「地の獄に送ってやろう…

[グランド·ショック]!」

地面を叩くことなく、武器を振るった。

地震が起き、地面が割れ、複数の割れ目が現れた。

「っ!」

間一髪、落ちずに済んだ。

「ほーう…」

龍神さんが言い出した。

彼は割れ目に飲み込まれる前にジャンプして天井に刀を刺し、掴まっていたようだ。

「町の方で地震が多いと聞いたが…

やっぱりお前の仕業だったんだな」


「あの程度の地震は、我が力の副産物に過ぎん。

だがこれは、俺自身の力そのものだ…」

王典がそう言った直後、私の足元が崩れた。


ジャンプして回避し、弓を撃つ。

「[ヘッドステッチ]」

一応やってみたけど、やはりというか気絶は効かないようだ。

そればかりか、

「奥義 [大地惨状]」

カウンターで強烈な技を使われた。


私は避けたけど、龍神さんはもろに食らってしまった。

彼の身体は無数の鋭利な岩に貫かれた。


それを見て、王典は歓びに満ちた笑い声を上げた。

「うはははは!いいなあ!

血にまみれた肢体!殺意に満ちた眼差し!

それでこそ、殺人者!真の戦いに参加する資格がある者だ!」


その上で、奴は龍神さんを更に煽った。

「どうだ?今のは効いたか?俺が憎いか?悔しいか?

ならば戦え。…さあ、来るがいい。

この地を染めるは、俺の血かお前達の血か…

それを、決めようではないか!」


私が心配するまでもなく、龍神さんは岩から身体を抜いて脱出した。


「それは望むところだ…」

身体のあちこちを貫かれ、血まみれになっている。

しかしそんな状態になっても、彼は諦めていない。


「バイスブレード…!」


「[大地の脈動]」

王典が技を唱える。

するとどうだろう、先程それなりのダメージを受けた技を受けても、平気な顔をしていた。


「っ…![グロウサンダー]…!」

龍神さんは術を撃ったが、これもほとんど効いていない。


「こそばゆいな…」

王典はため息をつく。

そして…


「奥義 [土伏臥龍怒(どふくがりゅうど)]」

ハンマーを振りかぶり、振り下ろす。

それは轟音と共に激しい揺れを起こし、その威力の凄まじさを語る。


龍神さんは血を吐き、一度項垂れたものの、すぐに立ち直ってくる。

「…!」


「うむ…まずまずだな。あとはお楽しみの…」


次は私の方に来るのを察し、前方に宙返りしつつ、

「[隕石割り]!」

王典の左肩目掛けて、(かかと)落としの体術を撃ち込んだ。

意外にも、王典はたやすくよろめいた。

なのですかさず、

「[アイシクル·ボンバー]」

氷の力を宿した回し蹴りで追撃した。



「ぐあっ…!」

今の連撃はかなり効いたようで、王典は武器を落とした。

この隙にさらに追撃を…

と思ったのだけど、足を掴まれてしまった。

そしてそのまま振り回され、頭を地面に叩きつけられた。

さらに続けて、頭から壁に投げつけられた。



「っ…」

さらに王典は、私の太ももにハンマーを叩きつけてきた。

と思えば、今度は右肩を殴り付けてきた。

血こそ出ないけど、骨に響くような痛みが襲ってくる。

そのうち、骨が折れる感覚がした。

同時に、これまで以上の激痛に襲われた。

「まだだ…まだだ!」

王典は喚きながら、私を攻撃してきた。


「血を…血を流せ…!」

その目は、異様な殺意と渇望を感じさせた。

そう言えば、王典は元々殺人者だったんだっけ。

私のすぐそばにも殺人者がいたけど、ここまで露骨に血を欲する事はなかった。

最も、龍神さんは殺人者の上位種族だし、彼が特別なだけなのかもしれない。


とにかく、王典は異様な眼差しと動きで、私の体のあちこちを攻撃し続けた。

そしてしばらくして、疲れたのか手を止めた。

「なぜだ…なぜ血が流れない!

普通はー」


ここで、龍神さんが王典の背後から斬りかかった。

王典は彼の腕を掴もうとしたものの、掴めなかった。

そして、

「[ガノックスパイン]!」

とどめだと言わんばかりに、王典を斬りつけつつ払い抜けた。

私も立ち上がって手をかざし、

「[スレイブレイト]!」

魔力球を複数打ち出して攻撃した。




王典の体のあちこちから、血が流れ落ちる。

龍神さんや私の体も、その血でまだらに染まった。

王典は一際大きな傷を折った右の脇腹を押さえ、唸っていた。

…でも、怯んだり弱ったりしている様子はない。

むしろ、

「く、くく、く…」

奇妙な声を上げ始めた。

そして、

「くっ…はははははっ!!!」

嬉しそうに大笑いした。

「これだ、これだ!

戦いは、こうでないとな!」

そして私達の方を改めて見て…

「骨があるようで安心した。そろそろ始めようか…

血と殺意にまみれた、本当の殺し合いをな!」


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