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黒界異人伝・生命の戦争  〜転生20年後の戦い〜  作者: 明鏡止水
一章・流れる血

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魔魂刀

「ほーう…」

ゼガラルは何やら頷いた。

「何だ」


「出来損ないとはいえ、勇者の一行をこうも容易く倒すとは。だてに吸血鬼狩りではないという事だな」


「出来損ない…!?」

アレイが食いつく。

「そうだ。勇者などと言っても、所詮は戦士の小僧。下等種族の寄せ集めの一行など、とるに足らん。それなりに実力があったのは認めるが」


今の発言で、こいつのタイプがわかった。

要は、こいつは力や立場、出自で人の価値を決めつけるタイプなのだ。

漫画やドラマでおなじみの、典型的な悪役だ。

人間界にいた時も、嫌と言う程見た奴だ。


しかし、こういう奴は対処が簡単だから助かる。

見返す、という訳ではないが、殺せばいいのだ。

そして、今際の際になって盛大に後悔させる。

それで、スッキリするってのもあるしな。


「そうかい…そいつは光栄だ。ところで、お前は王典の部下だと聞いたんだが?」


「だったら、何だと言うのだ」


「なおのことお前を倒さなきゃだな。散った勇者の無念も晴らさねばなるまいし」


「そうか…ならばやってみるがいい」

言われるが早いか、アレイが弓を射った。

それは一見普通の矢のようだったが、強い魔力が込められていた。

ゼガラルは避けた…と思いきや、矢が横に分裂して見事命中した。


「弓矢、か。非力な小娘に相応しい武器だな」


奴は斧を出し、アレイに飛びかかった。

アレイは氷の壁を作り出して防いだ。

だが、じりじりと押される。


「っ…うぅっ…!」

少々キツそうだった。

なので、横から電撃を撃ち込む。

ゼガラルが電気で痺れている間に、アレイは壁を消して距離を取り、矢を放つ。


「[ブリザーショット]!」

矢尻に氷をまとわせた矢は、見事ゼガラルの胸を撃ち抜いた。

そして、間髪入れずに魔弾を放つ。

魔弾は、斧に弾かれた。


アレイは、跳ね返された魔弾を顔に食らった。

胸を撃ち抜いた奴が、武器を普通に使って魔弾を跳ね返してきた事に驚き、隙ができたようだ。

だが、そんな事で驚いたり怯んだりしてる暇はない。

敢えて言わないが、アンデッドは基本的に痛覚が死んでいるか鈍いので、物理的な攻撃で怯ませるのはあまり有効ではないのだ。


「…!!」

後ろに倒れたアレイに、ゼガラルは斧を振り下ろす。

「おっと!」

間一髪で救い出した。

奴の斧は、石の床に深く食い込んだ。

技なしでも、相当なパワーがあるようだ。


「っ…龍神さん…ありがとうございます」


アレイはなぜか顔を赤くしていた。嬉しいのだろうか。

仲間を助けるのは当たり前の事だと思うのだが。


アレイを降ろし、俺は刀を振るう。

巻き起こした直線の斬撃を五角形にし、飛ばす。


「ふん…この程度!」

奴は容易く避け、斧を後ろに構えて向かってきた。

そして、俺の前で急停止して斧を叩きつけるように振るってきた。

ジャンプして躱したが…この技、見たことがある。

名前は忘れたが、打撃の効果もある技だったはずだ。

人間の時からの、ほとんど唯一と言っていい友達が、使っている技の一つだ。


奴は、俺が落ちる所に陣取って斧を振り上げようとしてきた。

そこで、両手を伸ばして刀を奴の額に突き刺し、静止する。

そして、刀を抜いたらすぐに錐揉み回転しながら顔を踏みつける。


ゼガラルは顔を押さえて喚き散らした。

その隙に、刀に魔力を流す。


こいつは、確かに強い。

それは、斧の動きを見てわかった。

だが、じっくり相手をする意味がない。

こいつでは、アレイの実戦相手にならない。


アレイは今は弱いかもしれないが、戦いのいろはを覚え、真髄を覚醒させれば、間違いなく強い。

しかし、それには幾度もの戦闘の経験、そして手強い相手との戦いの経験が必要だ。

こいつが手強い相手であれば、多少楽が出来そうだと思ったのだが…


訓練相手にならない以上、長く相手する必要はない。

さっさと終わらせてしまおう。



俺の刀は特殊な代物で、そのままではその辺の武器屋で売られてるような刀と同程度の威力・斬れ味しかなく、見た目もごく平凡な刀でしかない。

だが、魔力を流すと途端に覚醒する。


「…!?」

アレイもそれとなく感じ取ったようだ。

魔力を流すと、刀身全体が銀色の光沢を纏うようになる。

それは、もはや刀身自体が光っていると言っても差し支えないほどの輝きを放つ。


この刀の魔力の伝導性は一級品で、少しの魔力を流しただけでも刀身全体に行き渡る。

そして、魔力が流れた時、こいつは斬れ味、威力共に並外れたものとなる。


武器強化は、他の異人がよくやるような、武器をオーラが包むとか、振った時に特殊なエフェクトが出るようになるとか、ああいうものばかりではない。

むしろ、こういう一見地味なものこそ強いのだ。


俺は、静かにゼガラルに歩み寄る。

「龍神さん…!?」


「どうした?叩き潰されに来たか?」


「…」

奴の目の前で止まり、一言発する。


「王典は、どこにいる?」


「あの方は、ドーイの地下におられる。

かつて封印された、あの場所で…星羅こころの妹を待っておる」


アレイが何か言いたげだったが、それを言うことはなかった。

「そうか。で、お前はなんでここに居座ってるんだ?」


「それは簡単なこと…ドーイへ赴き、王典様を倒さんとする愚か者どもに裁きを下すため。そして、あの方に挑む資格のある者を見極めるためだ」

まあ、そんなもんだろう。

とすると、先程のラカル一行にはその資格はなかったということか。


「地上にゾンビをうろつかせてるのは、何故だ?」


「わからんのか?それもまた、身の程知らずの異人どもをおびき寄せるための餌よ」

なるほど。

ゾンビに町の人間を襲わせ、町の人間が外部の異人にゾンビ…ひいてはこいつ自身の討伐を依頼するように仕向けてたわけか。

そして、こいつはそれで来た異人を倒して…というわけだ。

そういえば、途中の階に元々異人だったっぽいゾンビが何体かいたな。


ま、だからどうにかなる…という事でもないが。


「ほう…」


「満足か?」


「ああ…以上だ」

 

ゼガラルはにやりと笑って、斧を振るってきた。



俺はそれを電光石火の速度で躱し、その背後に回って首を掻き切った。


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