勇者
アレイが安堵した所に、勇者がかかってきた。
アレイは慌てて弓で受け止めたが、本当に間一髪の所だった。
あと少し遅ければ、胸を刺し貫かれていただろう。
俺はそんな勇者に背後から飛びかかる。
勇者は、素早く振り向いて受け止めてきた。
その隙に後ろからアレイが氷の術を放つと、若干痛みを感じているような表情をし、後ろに大きく飛び退いた。
「…!」
アレイは、勇者の顔を見た。
その顔は、生前となんら変わらない、凛々しいものだ。
だが、俺から言わせればそんな事はどうでもいい。
「ラカル…!」
悲しげに言い放つアレイ。
…アレイがどう思おうが勝手だが、こいつは死人。生きた異人のように動いてるが、紛れもなく死体。
もはや、生前何であったかは関係ない。
敵として、獲物として、倒すだけだ。
勇者は、手の甲をアレイに向けて光らせた。
すると、アレイの体から魔力が消えていった。
「…!」
完全に消えた訳ではないが、それでもだいぶ消失してしまった。
なるほど、魔力を失わせるのか。
吸い取るのか純粋に失わせるのかはわからないが、とにかく魔力を減らす効果があるようだ。
かと思ったら、今度は俺にもその光を向けてきた。
この手の技は目に入れるか、浴びると効果が発動するというのがお決まりだ。
なので、闇の術を唱えて遮光性のある壁を張りつつ、目を押さえる。
目を押さえたのは、まぶたを貫通してくる可能性を考慮しての事だ。
光が消えたのを察知し、結界を消して目から手を離す。
勇者が歯ぎしりをしてるのを見る限り、やはり目に入れる事で効果を受けるものだったようだ。
まぶたを貫通する力があるかはわからないが。
…関係ないが、某モ◯ハンにも閃光を放ってくるモンスターがいたな。
確か、あいつの閃光はまぶたを貫通してくる…って設定だったと思ったな。
しかしまあ…懐かしい話だ。
昔は数少ない友人だった樹とか姜芽とよくやったもんだ。
樹その他とのギ◯クエ周回は最高だった。
さてさて、勇者さんは次は手を天にかざして、雷を打ち出してきた。
ド◯クエかよ、と突っ込みたくなった…というのはさておき、アレイを守らねば。
「[サンダーウォール]!」
アレイの前に飛び込んで電気の壁を張り、彼女への雷の直撃を防いだ。
アレイは、今の雷に怯えていた。
まあ、それはそうだろう。
水兵…もとい海人は、電気に弱い。
空から降る強大な電気…即ち雷は、海人にとって抗えぬ恐怖の象徴だ。
「…!龍神さん…!」
「大丈夫だ!…それより、魔力は大丈夫か!」
「半分ほど吸い取られましたが…なんとか!」
半分吸い取る、ときたか。
こりゃ、なかなか厄介だ。
「そうか…よし!」
魔導書を開く。
「[ダークマター]」
黒い魔力の霧でダメージを与える、高位の闇魔法。
少し直球すぎる名前のような気もするが、これはなかなか強い魔法だ。
勇者は盾で魔法を防いだが、アレイの放った矢を背に受けた。
「[レイヴンバレット]」
これがなかなか強いようで、勇者は怯んだ。
その隙に、こちらも技を決める。
「[メドールスラッシュ]」
胸を切り裂かんとばかりに斬撃を飛ばす。
すると、勇者は剣を横に構えて斬撃を受け流してきた。
「やるな」
素早くまた手を光らせてきたので、バク宙で躱す。
そして、そのついでに魔導書を出して攻撃する。
「[ノヴァ]」
これは花火のような爆発を起こして攻撃する光魔法で、頑丈な武器や防具をつけた相手であるほど威力が高くなる、という特殊な効果がある。
この勇者は…どうなのだろうか。
魔法を食らった勇者は大きくのけぞり、吹っ飛んだ。
そこに、アレイが術を使う。
「氷法 [アイススパイク]」
鋭利な氷を降らせ、勇者を攻撃した。
結構な数が当たったが、勇者はあまり反応を見せなかった。
アレイはこいつに魔力を吸われたから、あまり強い術を使えないのだろう。
それでも、あえて術を使っているのには何か理由があるのだろうか。
「[氷閉じ]!」
またアレイが術を使った。
勇者の体を巻き込み、地面にへばりつくようにして氷がついた。
「…!」
アレイがこちらをちらりと見てきたが、何の意図があるのかわからない。
きょとんとしていると、アレイは驚きつつ呆気にとられたような顔をして言った。
「今のうちです!」
「え…あ、ああ!」
やっとわかった。今のうちにとどめを…という事か。
「[サウザンドゲイザー]」
途中で複数に分裂する斬撃を放ち、勇者をズタズタにした。
勇者はそれでもなお立ち上がってこようとした…が、さすがに立てず、そのまま力尽きた。
これで、勇者一行は全滅だ。
あとは、こいつらを操ってたアンデッドを始末するだけだ!
更新遅れてすいません。