表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/321

翌朝、俺達はすぐに塔へ向かった。

塔へは、1時間半ほどでついた。


塔のまわりには、大量のゾンビの無惨な死体が転がっていた。

ラカル達は、塔に入る前からけっこう派手にやったようだ。


「ちょっと待って下さい」

突然、アレイがそう言ったので立ち止まった。


「どうした?」


「なんか、嫌な予感がします。信じたくはないですが…とりあえず、見てみます」


「わかった」


アレイは目を閉じた。

塔の中を覗いてみるのかと思ったのだが、過去を見てみるという意味だったようだ。


「…」

アレイはしばらく黙っていたが、やがて目を開け、

「えっ?そんな…!」

と、悲鳴のような声をあげた。


「どうした?」

彼女の反応からして、何を見たのかはほぼわかったようなものだが、一応聞く。


「龍神さん…これ、見て下さい!」

アレイは、空中に映像を映し出した。


塔の最上階に鎮座する、大振りの斧を持った体格のいいゾンビ系のアンデッド。

おそらく、こいつがゼガラルだろうか。


そこへ、ラカル達一行がやってきた。

ゼガラルは部下たるゾンビ達を倒されたことに憤慨しつつも、ここまでこられた異人がいた事に関心し、部下を新たに呼び出して彼らの相手をした。


ラカル達は、途中までは割と押していた。

だが、そのうち僧侶が倒れると、そこから戦士、魔法使いと倒れ、やがて勇者も倒れてしまった。


「どうして…どうして…!彼らは、あんなに強かったのに…!」

アレイが嘆いているが、俺としては「まあ…予想通りだな」という感じだった。


正直、ラカル達の戦いぶりは悪くなかった。

戦士と勇者が肉薄して、僧侶が回復やサポートをし、魔法使いが遠隔攻撃。

一見上手い感じに連携が取れていて、大抵のやつとは張り合えるように思える。


だが、奴らはひとつ、重大な欠点があった。

そして、それを突かれた。


奴ら一行は、攻守共にバランスよく配慮していた。

そして回復は、一応戦士と勇者も回復アイテムを持ってはいたが、基本的には僧侶と魔法使いに任せていた。


これが問題だったのだ。

これまでの旅ではそれでよかったのかもしれないが、特定の役割を誰かに完全に任せるのは、高位のアンデッドとの戦いにおいてやってはいけない行為の一つ。


その理由は、至って簡単。

一つの役割に当たっている者がやられると、一気に全体の予測やプランが崩れ、結果的に総崩れになるからだ。


故に手慣れた奴は、例え部隊を組んでいても、誰かに特定の役割を任せっきりにはしない。

回復など、最低限自分でできるだけの用意はしておく。

不死者狩り…もとい吸血鬼狩りのパーティにおいては、突出して得意な役割があり、かつ相応の実力がある…という奴がいない限り、役割というのはほぼ名ばかりなのだ。


まあ、RPGだったらバランスが取れたチーム編成なんだろうが。

ドラ◯エとかF◯(ファ◯アー◯ムブレム)とかなら回復役、物理の削り役、魔法の削り役、壁役、と分ける意味もあるのだが…あいにくこれはゲームではないので、役割分担をする意味はあまりない。

むしろ、パーティの倒壊を招きかねない。


いずれにせよ、今のでラカル達が敗れたことがわかった。

大陸の皆さんには残念だが、勇者はここに死したのだ。


ならば、する事は一つ。


「アレイ、俺達も向かうぞ!」


俺はアレイを引っ張るようにして、塔を駆け上った。

道中の階をうろついていたゾンビは、全て倒していく。

こうしないと、後が怖いからだ。




さて、ものの数十分で塔の最上階についた。

階段を駆け上がり、奴の姿を目に捉える。


奴は、壁沿いにずらっと並んだゾンビの前で、まるで俺達が来る事をわかっていたかのように構えていた。

「やっと来たか…待っていたぞ、我らに逆らわんとする愚か者よ」


「悪かったな。すぐに登ってきてもよかったんだが、どうも先客がいたみたいなんでね。しばらく観戦させてもらったよ」


「そうであったか。だが、奴らはもうここにはおらんぞ」


「…!」

アレイは、弓を構えた。


「まあ、そうだろうな。ところで、お前の部下どもはそれだけか?」


「えっ…?」

アレイがちらりと俺を見てきたが、何も言わない。

すぐにわかることだからだ。


「ほう…わかるのか」

ゼガラルは、にやりと笑った。


「そりゃあな。…俺は吸血鬼狩りだぜ?わかんなくてどうする」


「吸血鬼狩り?…ならば余計に好都合だ。こやつらの実力のテスト相手にふさわしい!」

そして、奴は斧を高くかかげた。


すると、奴の後ろからふらふらと数体のゾンビが現れる。

それを見て、アレイは小さく悲鳴をあげた。

「…!なんてこと…!」


それは…まあ、もはや説明不要かもしれないが、先程俺達が見ていた、かつての勇者一行の成れの果てだった。


「やっぱりそうしたか」


「当然だ。こやつらは、私をあと数歩の所まで追い詰めた。だが、魔法を封じたらあっさり巻き返せた。所詮は低級の異人、儚いものよ。

だが、こやつらの実力は本物だ。故に、我が下僕…ことに王典様の下僕として、使ってやることにしたのだ。

…さあ、行け!この二人の命も奪って、同胞にしてやるのだ!」


勇者ラカル…いや、死勇者ラカルといったところか。

奴とその仲間は、かつて敵だった死人の命に従って動き、俺たちを襲ってきた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ