戦士との対談
しばらくして戻って来た時、彼は派手な先住民族風の格好をした大柄の女性の他、何人かの男女を連れていた。
「ボス、こいつらがそうです」
「そうかい」
派手な格好の女性…おそらく、部族長だろうか。
彼女は、私達…特に私を、熱心に見てきた。
そして、龍神さんを見て言った。
「あんた、殺人者だね?」
「御名答。けど、ここの方々に手を出すつもりはないんで悪しからず」
「そうかい。懸命な判断だ。それで…」
次に、女性は私を見てきた。
「確かに、水兵だね。なんでこの町に?」
「彼が行きたいと言ったので来たんです」
「ほう。ならあんたに聞こうか。なんでこの町に来たんだい?」
「ただの観光さ。あと…」
龍神さんは、目を鋭く光らせた。
「再生者王典…の情報を、集めにな」
すると、女性はにわかに驚いたようだった。
「なっ…そんな事調べて、どうすんだい」
「決まってるだろ…奴を、倒すのさ」
族長は、口をあんぐりと開けて立ち尽くした。
「あ…あんた、本気で言ってる?」
「もちろんだ。この子を連れて歩いてるのは、そのためだしな」
それには族長だけでなく、周りの戦士達も驚いたようだった。
「そのため…って、この子水兵だろ?戦闘の経験はあるのかい?」
「いや、あまりない。だが、この子なら大丈夫だ」
「どうして言い切れるんだい?あいつは、うちらでもかなわないくらい強いよ。まして、そんな幼い子じゃあ、返り討ちに合うのが関の山だ」
「ところが、だな…この子は生の始祖の末裔なんだ」
すると、人々は驚いた。
「な、なんだって…?」
「それ、本当なのか…!?」
「ああ。な、アレイ?」
「え、ええ…」
いきなり私に振ってきたので、面食らった。
「私はアレイ・スターリィ。彼の言った通り…私は、生の始祖の末裔です」
「ああ、そうだったか…
生の始祖様の末裔は、もう死んだとばかり思ってたんだが…まだ、生きてたんだね。よかった…本当に、よかった」
族長は、感激していた。
まあ、正確には私は一度死んでいるし、姉に関しても死人なのだけど。
「でも、どうして水兵なんかになったんだい?」
「それは、よくわからないんです。私は元々人間で、事故で命を落としました。そして気づいたら、水兵に転生していて…」
死んだ人間が水兵に転生する原理や基準は、よくわからない。
水兵長…レークで言えばユキさん…が、関係している事は確かだろうけど…なぜ私が水兵として転生したのかに関しては、未だに何も説明されていない。
「そっか。まあでも、アンデッドにならなかっただけよかったじゃないか」
「それは、まあ…」
よく考えると、本当にその通りだ。
死んだ人間がアンデッドになる、という可能性は死因に関わらず否定できないし、何より私の場合、姉という前例がある。
私も、姉のようにアンデッドとして復活してもおかしくなかった。
そうなっていたら、龍神さんやユキさん、町のみんなにも出会えていなかったどころか、命ある存在として生きていく事さえできなくなっていた。
そう考えると、本当に…私は幸運だった。
「あの、ボス…そろそろ…」
「…あっ、そうだ。せっかく来たんだ。これを食べていきな」
族長がそう言うと、一人の男性が平べったい入れ物を持ってきた。
その中には、丸いクッキーのような物が並んでいる。
「これは?」
「うちらの…戦士の伝統的な食べ物なんだ。口に合うかわかんないけど、ぜひ食べていってくれ」
「わかりました。いただきます」
一つ取って食べてみた。
小麦か何かを練って焼いたものっぽいけど、クッキーとはまた違った食感と独特な甘みがあって、美味しかった。
「ん、おいしいです」
「だろ?」
「口に合ってよかったよ。これ、俺の嫁が作ってるものでな。今度店を出すんだが、そこで出そうと思ってるんだ。いけるかな?」
「いいと思いますよ。水兵の私の口にも合うので、きっと…」
「いやいや、それはないな!」
龍神さんの元気な声で、みんなが振り向いた。
「食感微妙だし、味薄すぎな。これなら、普通にその辺で売ってるクッキーの方が全然美味いぜ!ははは!」
朗らかに笑う彼の言葉で、場の空気が凍りついた。
「…えっ?」
彼は、何が起きたのかわからない、という顔をした。
龍神が空気を読めないのは、私自身と同じだったり。




