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黒界異人伝・生命の戦争  〜転生20年後の戦い〜  作者: 明鏡止水
一章・流れる血

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戦士との対談

しばらくして戻って来た時、彼は派手な先住民族風の格好をした大柄の女性の他、何人かの男女を連れていた。


「ボス、こいつらがそうです」


「そうかい」


派手な格好の女性…おそらく、部族長だろうか。

彼女は、私達…特に私を、熱心に見てきた。

そして、龍神さんを見て言った。

「あんた、殺人者だね?」


「御名答。けど、ここの方々に手を出すつもりはないんで悪しからず」


「そうかい。懸命な判断だ。それで…」

次に、女性は私を見てきた。

「確かに、水兵だね。なんでこの町に?」


「彼が行きたいと言ったので来たんです」


「ほう。ならあんたに聞こうか。なんでこの町に来たんだい?」


「ただの観光さ。あと…」

龍神さんは、目を鋭く光らせた。

「再生者王典…の情報を、集めにな」


すると、女性はにわかに驚いたようだった。

「なっ…そんな事調べて、どうすんだい」


「決まってるだろ…奴を、倒すのさ」

族長は、口をあんぐりと開けて立ち尽くした。


「あ…あんた、本気で言ってる?」


「もちろんだ。この子を連れて歩いてるのは、そのためだしな」

それには族長だけでなく、周りの戦士達も驚いたようだった。


「そのため…って、この子水兵だろ?戦闘の経験はあるのかい?」


「いや、あまりない。だが、この子なら大丈夫だ」


「どうして言い切れるんだい?あいつは、うちらでもかなわないくらい強いよ。まして、そんな幼い子じゃあ、返り討ちに合うのが関の山だ」


「ところが、だな…この子は生の始祖の末裔なんだ」

すると、人々は驚いた。


「な、なんだって…?」


「それ、本当なのか…!?」


「ああ。な、アレイ?」


「え、ええ…」

いきなり私に振ってきたので、面食らった。


「私はアレイ・スターリィ。彼の言った通り…私は、生の始祖の末裔です」


「ああ、そうだったか…

生の始祖様の末裔は、もう死んだとばかり思ってたんだが…まだ、生きてたんだね。よかった…本当に、よかった」


族長は、感激していた。

まあ、正確には私は一度死んでいるし、姉に関しても死人なのだけど。


「でも、どうして水兵なんかになったんだい?」


「それは、よくわからないんです。私は元々人間で、事故で命を落としました。そして気づいたら、水兵に転生していて…」


死んだ人間が水兵に転生する原理や基準は、よくわからない。

水兵長…レークで言えばユキさん…が、関係している事は確かだろうけど…なぜ私が水兵として転生したのかに関しては、未だに何も説明されていない。


「そっか。まあでも、アンデッドにならなかっただけよかったじゃないか」


「それは、まあ…」

よく考えると、本当にその通りだ。

死んだ人間がアンデッドになる、という可能性は死因に関わらず否定できないし、何より私の場合、姉という前例がある。

私も、姉のようにアンデッドとして復活してもおかしくなかった。


そうなっていたら、龍神さんやユキさん、町のみんなにも出会えていなかったどころか、命ある存在として生きていく事さえできなくなっていた。

そう考えると、本当に…私は幸運だった。


「あの、ボス…そろそろ…」


「…あっ、そうだ。せっかく来たんだ。これを食べていきな」


族長がそう言うと、一人の男性が平べったい入れ物を持ってきた。

その中には、丸いクッキーのような物が並んでいる。


「これは?」


「うちらの…戦士の伝統的な食べ物なんだ。口に合うかわかんないけど、ぜひ食べていってくれ」


「わかりました。いただきます」

一つ取って食べてみた。

小麦か何かを練って焼いたものっぽいけど、クッキーとはまた違った食感と独特な甘みがあって、美味しかった。


「ん、おいしいです」


「だろ?」


「口に合ってよかったよ。これ、俺の嫁が作ってるものでな。今度店を出すんだが、そこで出そうと思ってるんだ。いけるかな?」


「いいと思いますよ。水兵の私の口にも合うので、きっと…」


「いやいや、それはないな!」

龍神さんの元気な声で、みんなが振り向いた。


「食感微妙だし、味薄すぎな。これなら、普通にその辺で売ってるクッキーの方が全然美味いぜ!ははは!」





朗らかに笑う彼の言葉で、場の空気が凍りついた。



「…えっ?」

彼は、何が起きたのかわからない、という顔をした。







龍神が空気を読めないのは、私自身と同じだったり。


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