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黒界異人伝・生命の戦争  〜転生20年後の戦い〜  作者: 明鏡止水
五章・毒の水

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海の伏兵

 私は氷の魔弾を放った。

水中にいるし凍るかなと思ったけど、そんなことはなかった。


向こうは魔弾を受けても怯みもせず、片方は術を使ってきた。

「海楼よ、私に答えよ」


それは、足元で水を渦巻かせ、数秒後に弾けさせるという術だった。

私は水流の類の攻撃は無効化できる。だから、当然これに巻き込まれることもなく、傷を負うこともなかった。


 でも、術を受けてから、徐々に体力を奪われる感覚がし始めた。

この感じ・・・負傷毒にも似てるけど、あれより強力だ。一体、何だろう?


「・・・皆さん!大丈夫ですか!?」

私は龍神さんたちの方を向いた。

でも、彼らは大丈夫そうだった・・・私と同じ状態異常を付与された以外は。


「っ・・・この感じ」

龍神さんは、左腕を押さえて唸った。


「こりゃ、『血の契約』だな。単純な負傷毒の、強化版だ」


「みたいね。今どきのフィージアは、こんなものまで使ってくるのね・・・」

 どうやら、わからないのは私だけのようだ。

樹さんは負傷毒の強化版と言っていたけど、どうもただの毒とは違うような気がする。


「我々は『魔神の心』を授かった人間。例え相手が生来の異人であろうと、任務の邪魔になる存在であるならば、排除できるだけの力がある・・・この『契約』も、その一つだ」

左のフィージアが、そう言った。


「左様だ。祖国に絶対の忠誠を誓う我々にとって、力とはこの身と同じ、祖国の駒に過ぎない」

右のフィージアは、言いながら周りの者たちに指示を出した。


「行け。この者たちを、生きて返すな」


 これまで2人の周りにいただけの奴らが、一斉に向かってきた。

彼らは剣や槍を持っており、強力な技を出してはこないものの、動きは洗練されている。


途中でふと思ったのだけど、リーダーの正体が人間であるということは、こいつらも人間なのだろうか。

だとしたら、どうして海の中でこんなに身軽に立ち回れるのだろう。


そもそも、どうして海の中で息が続いているのだろう。

そう思っていたら、一つ気がついた。


 こいつらはウェットスーツとリュックのような装備を身につけているのだけど、これらから力を感じる。それも、海人の。


だから、私は1人の剣を受け止めつつ言った。

「あなた達、その装備は・・・」


すると、そいつはすんなり答えてくれた。

「これは祖国から支給された装備だ・・・海で活動する者に必須の、祖国の技術の塊だ」


「へえ。なら、その素材は?」


「言うまでもあるまい。お前の仲間、その屍から取られたものだ」


 やっぱり、そうか。

フィージアに限らず、一部の組織は海人を殺して剥ぎ取った鱗や鰭などを使って、海に入れる装備を整えることがある。


確かに、海人の素材は船なんかを作るにはうってつけだろう。

でも、私にそれを見せたらどうなるかくらい、察することはできないのだろうか。


「ふーん。なら、なおのことあんたたちを許すわけにはいかないわね」

 私は水兵、海人の仲間だ。

さっきそれを自分から言ってきたのはどういうつもりか知らないが、いずれにしても自分の首を絞めたも同然だ。


「凍りなさい・・・体の芯まで」

向こうの脇腹を掴み、私は魔力を流した。

そしてその体を、徐々に凍りつかせていく。


 何気に、私は相手を即死させる技や術は結構持っている。

この術、「フローズンスキン」もそうだ。

相手の体を凍りつかせ、生命活動を停止させたあとに叩き割る、文句無しの即死術だ。


 その間に、他の奴らが横槍を入れてきたけど、龍神さんたちが対処してくれた。

そして、数秒後に掴んでいた奴を完全に凍結させ、私はその体を叩き割った。


それを見ても、他の連中は何の反応も見せない。

フィージアにとって、戦友とはどんなものなのだろうか。

同じところで戦っている戦友を殺されたら、普通は何かしら動揺するものだと思うけど。



 1人のフィージアが、私に向かって槍を投げてきた。

結界で弾いたと思ったら、再び動き出して右肩を突いてきた。


その際、抜こうとしていた弓を手放してしまった。

まずい・・・!と思ったけど、樹さんが飛び出して向こうと殴り合い、気を反らしてくれた。


 槍は、もう追ってはこなかった。

それよりも、最初のリーダー2人が私を狙ってきた。


「どうか私の信念を・・・」

よくわからない台詞を述べて、剣で突いてきた。

避けたけど、急に体が重くなってきた。


それで気づいた。今は、持続ダメージを受けているのだ。

回復しようとしたら、なぜか効かなかった。

毒の類かと思い、毒を解除する魔法を使ってみたけど、やはりというか意味がなかった。


「血の契約、だっけ。一体何のカラクリなの?」


「知らないのか?異人だというのに」


「まあ仕方あるまい。水兵では、これを知らなくても」


 そこで、朔矢さんが2人を薙ぎ払った。

「アレイは水兵だけど、元は人間よ?」


「・・・昇華したか。それとも転生者か?どちらにせよ、知らないものは仕方ない。

君は殺人者だな。ならば、一つ教えてやったらどうだ?」


「言われるまでもないわ」

そして、朔矢さんは私をチラ見してきた。

「覚えといて、血の契約は、毒とは違う。かかってる間はどんな回復も封じられるし、術とかで治療することもできない」


「えっ?それじゃ・・・」


「でも、傷を癒し、解除する方法はある。それはね・・・とにかく、相手を殴ることよ。

[アラウンド・ザ・ワールド]」


 旋刃盤を横に振るい、朔矢さんはあたりに血を迸らせた。


フィージア・マリントラベラー

海での活動に特化した「魔神の心」と装備を与えられた、フィージアの部隊。

「マリンレンジャー」の下級部隊にあたり、彼らの周りを囲う兵士として活動する。

その体にまとったウエットスーツのような装備は、罪なき海人から剥ぎ取られた素材で作られている。



血の契約

状態異常の一つ。

回復効果が無効化されつつ持続ダメージを受けるが、相手に攻撃をするとそのダメージの分だけ回復し、与ダメージが一定を超えるとクリアされる。


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