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黒界異人伝・生命の戦争  〜転生20年後の戦い〜  作者: 明鏡止水
五章・毒の水

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フォンク海底

 ユキさんにことを説明すると、驚いていた。

やはり、フィージアがレークに入ってきていることは気づいていなかったみたいだ。


「これからは、定期的に町全体に探知結界を張って、フィージアの者がいないか確かめる。もしいたら、他の子たちにも言って常時監視しておくわ。

それで彼らが何か罪を犯せば、この町の法に基づいた裁きを下せるから」


「えっ?監視するだけですか?」


「そうですよ!今回奴らがしたことだって、アレイの能力があれば証明できます!どうして奴らを締め出さないんですか!?」

私もキュリンさんも、納得がいかなかった。


「残念だけどね・・・彼らはそんな素直でも、単純でもないの。締め出したところで、必要があればいずれまた来るでしょう・・・どんな手を使ってでもね。

それで、町の者が被害を被る可能性もある。

ノグレには一応報告するけど、向こうもフィージアには手を焼いているみたいだから・・・」


「つまり、実質こちらからは何もできないということですか?そんなのって・・・」

やられっぱなしってことか。

そんなの、納得いかない。納得出来るわけない。


「あなたたちの気持ちはよくわかるわ。でもね、彼らのバックに大国がある以上、彼らを下手に怒らせるようなことはできないの。・・・ごめんなさい」

 ユキさんは、頭を下げてきた。


「その代わり・・・にはならないけど、今日は神殿に泊まっていきなさい。あ、シレイネの囮にした男たちと、アイゼスの官吏たちは、後で適当な子たちに向こうに送ってもらうから」


「・・・わかりました」

煮え切らない気持ちはある。でも、ユキさんに頭を下げられては、どうにもならない。

これからは、町のみんなはあんな怖い連中と常に隣り合わせで暮らさなきゃないなんて。


こうなると、奴らにさっさと満足して帰ってもらうくらいしかないが、彼らの目的はよくわからない。

フィージアは、一体何の目的があるんだろう。




 翌日アイゼスにワープし、ウェニーさんにレークでのことを説明した。

ウェニーさんは、私たちと海鱗が無事だったことを嬉しく思うと言っていた。


「学者たちから、話を聞きました。人魚の夢を出現させるには、晴れた夜に海中に差し込む月光を人魚の海鱗で反射し、フォンク海底のサンゴ礁の中央のくぼみを照らせばいいそうです」


「サンゴ礁?」

 樹さんは、この冷たい海にサンゴ礁があることに驚いたのかもしれない。

でも、冷たい海にもサンゴは結構ある。

何なら、ニームの海にも「氷サンゴ」というサンゴが住み着いていたりする。


「はい。学者たちから聞いた限りでは。

ちょうど、今日の夜は晴れる見込みです。今夜、行かれるといいでしょう」


「ウェニーさんは、来ないんですか?」


「はい。ただし、必ずや人魚の夢を持ち帰り、私に見せてください。長らく、あの宝石を直接見てみたいと思っていましたので」


「もちろんです」

樹さんも私も、それに文句は言わなかった。





 夜、私たちはレークの南西から海に入った。

寒かったけど、海に入るとそうでもなくなる。


ちなみに、朔矢さんも一緒だ。

なんでも、暇だからついてきたらしい。

彼女には、夜の「仕事」があるのではないかとも思うけど。


 ちなみに、樹さんは彼女を「素直じゃないがかわいい」、「中身はアレだが見た目はいい」と言っていた。

それに対して、朔矢さんは悪かったわねとむくれた。


とか何とか言いつつ、彼に手を差し出されるとすんなり握っていたあたり、やっぱり素直じゃないみたいだ。


「そりゃ、殺人鬼だしな。見た目だけでも、かわいくないとな」

 龍神さんにそう言われると、朔矢さんは「どういう意味よそれ!」と怒った。

でも、私もこの人はきれいだと思う。


まあ、その美貌と身体を活かして男性を誘惑し、その命と物を奪い取っているのだから、彼の言う通りというか・・・心は殺人者のそれだろうけど。





「もうすぐです」

 泳ぐこと20分。

私の感覚に間違いがなければ、そろそろフォンク海底のはずだ。


「いよいよか。ついに・・・ついに、人魚の夢をこの目で見られるんだな!」

樹さんは、早くもはしゃいでいた。


「そんなはしゃぐことないでしょうに・・・」

朔矢さんはため息をついた。


「・・・あれ?ちょっと待ってください」

私は、何か嫌な気配を感じた。

なんだろう、これは。


異形やアンデッドではない。

それらとは、また違う。


「ん?どうかしたか・・・」


 その直後、私はかすかな水の流れを感じ取り、身を翻した。


「アレイ・・・!?」

龍神さんは私の行動ではなく、私が動いた理由に驚いただろう。

正面から、衝撃波のような攻撃が飛んできたからだ。


「何?何?」

 朔矢さんが困惑している中、それは姿を現した。


青色や緑色の、ダイバースーツのような服を着込んだ集団。

でも酸素マスクなどはしておらず、代わりに奇妙な仮面を被っている。

その下は異人か、はたまた人間か。


「・・・こいつら、まさかフィージアか!?」


「そういや、フィージアには海軍みたいな部隊もいたな!でも、なんでこんなとこに・・・!?」


「きっと、海鱗を狙いに来たんだと・・・!」

 すると、私に攻撃をしてきたやつが言ってきた。


「御名答だ。我々は『マリンレンジャー』、フィージアの特殊部隊。君たちに恨みはないが、これも任務だ。人魚の海鱗だけを残し、消えてもらおう」


声や容姿は元より、口調からも男か女かよくわからない。

ただ、この海鱗を狙う敵であることは確かだ。


「せっかく取った海鱗を、フィージアなんかに取られてたまるかよ!」

 樹さんは棍を抜き、朔矢さんたちも武器を構えた。

もちろん、私もだ。


「ほう・・・我々に本気で楯つくとは。『水母』様に聞いていた通りだな」


「水兵もいるし、気が大きくなったかな?・・・まあよい。相手が何者であれ、我々は任務を遂行するのみだ」


先頭の2人は、そう言って仮面の奥で笑ったように見えた。

フィージア・マリンレンジャー

海洋での活動を専門とする、フィージアの特殊部隊。

基本的には船舶で移動し活動しているが、海に潜ることもある。

戦闘の技術は並の海人より優れており、体一つで長時間の潜水も可能。

フィージアの軍人は、「魔神の心」を与えられることで異人と同等かそれ以上の力を得る。

それをもってすれば、普通の人間には過酷な環境でも任務を遂行できる。

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