発見
壁の先には、大きな下りの階段があった。
覗き込んでも下が見えない。かなり長いみたいだ。
「行こう」
彼は恐れることなく降りていく。
数分かけて階段を降りきったその先には、大きな部屋…
いや、部屋というよりは宝物庫?のようだったー
が、あった。
「頭数に見合わない位溜め込んでたんだな」
龍神さんは、恐らくかなりの量の金貨が入っているであろう袋を1つ、手に取りながら言った。
「本当ですね。
こんなにたくさんの宝物を…」
「いや、このどっさりあるのは宝でも何でもない」
「え?」
「俺らにとっちゃあな。
本当に大事なのは、これくらいだ」
龍神さんが握っていたのは、一枚のメダル。
銀色で、何かの模様が刻まれている。
大きさは4cmくらい。
「それは…?メダル、みたいですけど」
「そう見えるよな。
でも、これはメダルじゃあない」
彼は、メダルを両手で持って魔力を流した。
すると、メダルに刻まれた模様が光りだした。
その模様は、どこかで見たことがあるような…
そんな気がした。
「これって…」
「槍が刺さった逆さのドクロ…これは、王典の一味の証だ」
「王典…って八大再生者の…
でも、なぜ?」
「あり得るのは2つ。ここの奴らがどこかでこれを拾ってきたか、奴ら自体が王典の一味か。
だが、王典の一味にはアウトルが多くいたと聞く。
それに、ここには昔色んな良からぬ奴がいたんだろ?
なら、答えは1つだよな」
「…彼らが、王典の…」
「これは銀だから、ここの奴らは一味の中でも下っ端の連中だったんだろう。だが、放っておけばいずれ、近くの街を襲っていただろう」
「近くの街、って…」
もし私達が、ここの存在に気づいていなかったら…
そして、私達のこの活躍が、人に知られることはないだろう。
なんだろう、この…
素直に嬉しいような、でもちょっと悔しいような、上手く言葉に出来ない、気持ちは。
「どうした?」
「あ、いえ…
ただ…」
「ん?」
「これが、吸血鬼狩りの気持ちなのかなって…」
「そうか…」
この気持ち…
なんか、懐かしいような気もする。
そして、何か新しいものに目覚めた…ような感じだ。
「なら、これからどうすればいいかもわかるな?」
「…えっ?」
「…まだ完全にはわかってなさそうだな。
ヒントはアルノで見たものだ」
アルノで見たもの?
何かあっただろうか。
「アルノで見たもの、って…
彫刻…ですか?」
「そうだ。あの彫刻、何をかたどったものだったか覚えてるか?」
「たしか、鎖みたいなもの…でしたね。
でも、それがどうかしたんですか?」
「このメダル、ドクロ以外に何が書かれてる?」
ドクロ以外に書かれてるのは…
「あっ!」
今気づいた。
このメダルの縁の模様、アルノにあった彫刻と同じ形だ。
龍神さんは続ける。
「知ってるか?アウトルは、複数の徒党にわかれて街を襲撃する。
奴らはガードが弱そうな所を見つけると、その近くで焚き火をしたり集会をして騒いだりする。
そしてその次の満月の夜、そこを襲う。
確か今日、満月だったよな?
あ、あと1つ大事な事を言ってなかったな。鎖が複数本縦に繋がったような形の紋章は、再生者の僕の証だ」
と、言うことは…
「…すぐに戻るぞ!」




