洞窟の住処
私達は階段を登ったところの両脇で、弓の弦に使っている紐をピンと張って待つ。
少し待つと、奴らが階段を登ってきた。
そして先頭にいたものが転び、そのまま後続も次々に転んでいった。
これを、まとめて倒す。
「氷法 [グレイシャル·イロージョン]」
術の範囲が広いので、下に落ちたやつもまとめて倒す事ができた。
階段を降りて壁の彫刻を見ると、どうも牛みたいな動物と戦っている?男性を象ったもののようだった。
男性の近くには、骨付き肉や焼き魚の乗ったテーブルが彫られている。
そしてそのすぐ真下には、「血塗られた贈り物を」と書かれている。
さらに、その下には小さな彫刻…何かの液体が注がれたグラス、骨付きの肉、魚、蛇の4つがあり、これも下に何か文字が書かれている。
グラスの彫刻の下には「至高の一杯」
肉の彫刻の下には「極上の獲物」
魚の彫刻の下には「幻の魚」
蛇の彫刻の下には「森の王なる蛇」
…とある。
「何でしょうか、これ…」
「たぶん、上の彫刻の中にないものを何かしろ…
ってことなんだろうが、どうすりゃいいんだか。
押せばいいのか?」
でも、下の彫刻を押しても何も起きなかった。
「駄目か…とすると?」
この時、奥の壁に複数空けられた穴からアウトルが複数人現れた。
奴らは、弓で狙撃するものと斧を持って肉薄してくるものにわかれて攻撃するようだった。
「…謎解きはバトルの後で、だな!」
彼は弓を構え、狙撃部隊を倒していく。
私は…
(これを試してみましょう)
今朝磨いてもらったばかりのマチェットを抜く。
抜いた途端、刀身が不思議な光を放ったように見えた。
斧を持った敵が数人降りてきた。
(大丈夫かな…)
私は剣…いや、マチェットだから刀?
とにかく、刀剣の技は持っていない。
あくまでもテストで使ってみるだけだから、地道に敵を倒していこう。
そのつもりでいたのだが、マチェットを構えた途端にその「つもり」は跡形もなく崩壊した。
「星具降臨 [セクトス·ペルー]」
マチェットを高く掲げ、敵の視界を奪う。
そして、
「[ゼクセクト·ミリーオン]」
横に一降りする。
中に無数の星のような光が煌めく斬撃が放たれ、目の前の敵をあっさり全滅させた。
それを見た龍神さんは、
「ほぇ?」
と変な声を出しつつも、
「[ボルト·クラスト]」
複数の電撃を落として弓持ちの敵を倒していた。
「今のは何だ…?」
「わかりません。ただ、自然と浮かんできたんです…」
「浮かびすぎなぐらいだな。
てか、あの彫刻の仕掛けがわかったぞ!」
「え!?どうすればいいんですか?」
「ちょっと待ってな」
龍神さんは、今私が倒した敵の真っ二つになった死体を持ち上げて壁に向かって歩いていく。
そして上の彫刻と下の彫刻を見比べて、
「これか」
と言って、死体の中に手を突っ込んで血にまみれた臓器?をたっぷりと取り、それをグラスの彫刻と蛇の彫刻に塗りつけた。
彼は殺人鬼だから慣れているのかもしれないけど、私はこんなものを見せられるのは気持ちが悪い。
何より、ここからでも感じられる死臭と、腐った血の臭いがきつい。
でも、おかげで壁が開き先へ進めるようになった。
「血塗られた…ってこういう事だったんですね…」
「らしい。
あと、今は血の臭いとかがきついかもしれないが、そのうち慣れるだろうから心配するな」
「はい…」
慣れる…か。
こんなものに慣れてしまっていいのだろうか。
でも、私はいずれ再生者や、その手下のアンデッドと戦う事になる。
それには、血や死臭に耐性をつけておくのが大前提なのは間違いないだろう。