表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒界異人伝・生命の戦争  〜転生20年後の戦い〜  作者: 明鏡止水
五章・毒の水

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

283/322

ミュウマの話

その日のうちに、エーリングが件の海賊に関する調べをつけてきた。しかも、現在の大まかな居場所まで突き止めてきた。

後者はレークの水兵たちに手伝ってもらったんだろうが…なんというか、仕事が早いというか。


問題の船は一隻で、基本的に特に変わったところはない大型の帆船。そして、どういうわけか霧がかかっている時か、夜の間にだけ現れるのだという。

あいにくこの海域にしばらく霧は出そうにないとのこと…だが、どうせあと数時間で日没だし問題ないだろう。





問題の船は沖合いの方に出るらしい。

夜の8時ぴったりに、その場所へと向かうことになった…ウェニーとエーリングを含めた4人で。

油断しているわけではないが、相手は元々人間か、それに準ずる異人だ。上位種族3人に水兵1人で行くのだから、そんなに問題はないような気がする。



その前に、ちょっと昼寝する。

なんだか知らないが、無性に眠くなったのだ。

それで眠ったら、なぜかニームの水兵の長キャルシィが現れた。


「久しぶりね」


「ああ、あんたは。…もしかして、全部あんたの仕業か?」


「どうしても伝えたいことがあったからね」


「何だ」


「再生者ラディアのことは知ってるわね?」


「無論だ。今は、奴を倒すのが最終目標だならな」


「彼女に3人の部下がいたことも覚えてる?」


「そういやそんな話もあったな。えっと…アルナーデとロゥシィ、あと…」


「ミュウマ、ね。そのミュウマなんだけど、あなた達に近づいているの」


「なに…向こうから来てくれるってのか?」


「いえ、むしろあなた達の方から行くのよ。これからあなた達が辿る運命。その中で出会う相手の中に、ミュウマがいる」


「これから…ってことは、まさか海賊船に?」

キャルシィは一度言葉を切った。

「…気をつけてね。ミュウマは[骸繰(むくろたぐり)]の異能を持ってる。彼女がいる限り、操られた骸たちは倒れない。そして、彼女を倒すには普通の方法はあまり効果がない。夜明けまで待つか、あるいは…」



そこから先、何と言っていたかは覚えていない。

ただ、気づいた時には目覚めていた。





一応、アレイにそのことを伝えた。

「龍神さんの夢にもキャルシィさんが現れたんですね。私の夢にも、出てきました」


「何か言ってたのか?」


「はい。ミュウマについて、詳しく説明してくれました…」



そうして、アレイはミュウマについて語りだした。

と言っても、彼女の話はキャルシィから聞いたものそのままなのだろうが。



「ミュウマは[骸繰]の異能を持ち、水と闇の術を扱う死海人です。その昔、ラディアの下僕として現れ、アンデッドを蘇らせる存在として猛威を振るいました」


「アンデッドを蘇らせる?というと、どういうことだ?」


「ミュウマは例え倒されたアンデッドであっても、回復させて蘇らせることができるんです。だから彼女がいる限り、周囲のアンデッドを倒しても意味がありません」

そういうことか。地味に…というか普通に厄介な能力持ちだ。

「ミュウマはアンデッドを蘇らせる存在であると同時に、新たなアンデッドを補充する役割も持っていました。だから数多くの海人を殺し、死海人と呼ばれるアンデッドを数多く増やした。そして、生きた海人から恐れられるようになったんです」


「当時からアンデッドに立ち向かう海人は少なからずいたと聞くが…復活持ちがいるんじゃキツかっただろうな」


「ええ。ラディアが封じられる前の頃は、アンデッドを倒せる海人自体が少なかったのもあって、海人だけでは本当に対処のしようがなかったんです。今でも、多くの海人の間に彼女らの恐怖を伝える言い伝えや伝説が残っていますし、幼かったキャルシィさんやユキさんもその脅威をよく聞かされたそうです」


「そうか…そういやあの2人は水兵の長だから、えらく長生きなんだったな」


「ラディアが、基本熱帯から温帯にかけての海で活動していたにも関わらず大半の海人から恐れられたのは、ミュウマを始めとした部下たちの活動がきっちりしており、その範囲も広かったのが一因なんです」

つまり、奴自身はそうでなくとも、奴の部下は冷たい海や寒い海にも手を伸ばしていたということか。

そうなれば、もし途中で止められなければ、本当に全ての海を支配できていたかもしれない。


「さらに、被害はそれだけではありませんでした。ミュウマは元々水守人だったんですが、これが原因で水守人は同じ海人はもちろん、陸人からも白い目で見られたんです。彼らは、陸人は元より同じ海人に会っても、挨拶もしてもらえないどころか、食べるものも何ももらえず、辛い思いをしました。唯一彼らを敬遠せず、助けたのは私の同族…すなわち水兵でした」

アレイは、少しばかり誇らしそうにした。まあ、それはそうだろうが。


「キャルシィさんは、幼い時にレークに来たことがあるそうなんですが、ある時神殿で当時の長…つまりユキさんのお母さんに助けを求め、それを承諾してもらって泣いている水守人を見たことがあったそうです。その後も、レークのみならず各地の水兵は水守人を助け続けました。だから、水守人は今でも水兵と仲良くしてくれるんです」


「いい話だ。状況が状況だから、陸の連中にはいい顔をされなかっただろうに」


「水兵からすれば、同族を…祖先種を助けているだけという認識でしたからね。…私はその時代にいたわけじゃないですが、同じ立場だったらそうしたと思います」


「仮に君が人間のままだったとしても、そうあるべきだな」

敵と同族、あるいは同類だからといって迫害していいわけはないし、許されるわけもない。


「それと、キャルシィさんからちらっと聞いたんですが…ミュウマは、ウェニーさんが使う3人の霊の1人と深い関係があるそうです」


「ありゃ、そうなのか?」


「はい。ウェニーさん…というかアイゼスの皇魔女が使う『三水霊の石』に封じられた霊の中にリームレットという水守人の霊がいるんですが、ミュウマは彼と何やら関係があるとか。詳しいことはキャルシィさんも知らないそうですが、とにかく何か関わりがあることは間違いないんだそうです」


「へえ…意外だな。となれば、直接聞いてみたほうが良さそうだな」

そう言えば、ラディアの部下であるという死海人も、ウェニーが使う水霊も3人だ。

ということは、もしかして…?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ