表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒界異人伝・生命の戦争  〜転生20年後の戦い〜  作者: 明鏡止水
四章・悪の風

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

204/322

電の術奥義

とりあえずロザミにも事の経緯を話し、知恵を借りることにした。


…のだが、その前にロザミに呼び止められた。

「あなた達に来客が来ています」


一瞬、まさかまた樹じゃないだろうな…と思ったのだが、そんな心配は無用だった。


城の客室で待ち構えていたのは、スレフだった。

「おっ、あんたは」


「久しぶりだな、お二人さんよ」


「スレフさん。今回は、どうされました?」

すると、スレフは縮み上がって言った。

「決まってるだろ…?お前ら二人に、私の術奥義を伝授しに来たのさ!」


「術奥義…?」


「そうだ。お前ら二人が尚佗を倒してくれたお陰で、私も術奥義が使えるようになったんだ。

その謝礼として、私の術奥義をお前らに伝授しようと思ってな!」

なんか、ちょっとテンション高いような気がするのは気のせいだろうか。


「え…?そのためにわざわざマトルアまで来たんですか?」


「ああ!シルトから、お前ら二人がマトルア近辺にいるって聞いてな、ここにいれば多分会えるだろうなって思って来てみたら、見事に会えた…って訳さ!」


シルトから…ねえ。

あの皇魔女、情報を集めるだけじゃなく広めるのもお手の物なんだな。


「それで、今から教えてくれるのか?」


「もちろんだ」


スレフは両手を広げ、全身から魔力を滾らせた。


「長い間、使いたくても使えなかった私の術奥義…

それは、空でも海でも切り裂く雷の術だ」


「海を、切り裂く…?」

アレイは少し引いているように見える。

まあ、それはそうか。

彼女は海人だ。海を切り裂く、とか言われると、その威力がよくわかるのだろう。


「そうだ…あらゆるものを焼き焦がし、切り裂く、雷の嵐を巻き起こす。それが、私の術奥義だ」


「…一つ、見せてもらえないか?」


「もちろんだ」

スレフは周囲に影響が出ないように結界を張り、魔力をさらに溢れさせた。



「よーく見ておけよ…これが電の術奥義、電術の頂点だ。

雷法 [万儡・ボルトストーム]」


空中に小さな稲妻が走ったかと思うと、たちまち轟音と共に無数の稲妻が現れ、竜巻のように渦巻いた。


「おお…」


「すごい…!」


「だろ。龍神、今の術に見覚えはないか?」

唐突にそう言われた。

「見覚え…まあ、強いて言えばサンダーサイクロンに似てるな」

サンダーサイクロンとは高位の電術の一つ。

渦巻く雷を召喚して敵を攻撃する術で、威力が高く、反射効果を無視できる上、弓も届かないくらい遠くの敵を攻撃することもできるが、その分消費が重い。

俺も使えるが、今までそんな遠距離攻撃の必要がなかったので使ってこなかった。


「そうだ。これは、あれを元にして作られた術なんだ」


「…あっ、なるほどな。てことは、俺にも扱えるのか?」


「使えるさ。私が今こうして伝授しているんだからな。

…こいつの使い方は、基本的にはあれみたいな遠距離魔法と同じだ。

魔力を全身から溢れさせ、指定したポイントに稲妻として顕現させる。最初は小さく、あとは全力で、魔力を解き放つんだ」


俺は、言われた通り全身に魔力を溢れさせる。

そして壁の一点に狙いを定め、魔力を少しだけ、稲妻として顕現させる。

小さな雷光が光った…と思ったら、その直後に魔力を一気に流す。


凄まじい音と共に、文字通り嵐のような雷が渦巻いた。


「雷法 [万儡・ボルトストーム]」

銘を詠唱すると、アレイが歓声をあげた。

「龍神さん…!すごいです!」


「…ま、不思議はないな。俺は電に適性があるから」


術を扱う者には誰しもが「適性」というものがある。

適性のある属性の術だと適性無しの場合よりも習得しやすくなる。

位の高い術は一定以上の魔力がないと習得できないが、適性がある場合はそのハードルも低くなる。


さらに、適性がある属性の術を唱える場合、使用する魔力が通常より少なくて済む。

故に、術への適性は術自体の強さと同じ位重要視される。


皇魔女の扱う術奥義となると、適性があっても、更にその上で魔力も相当に高くなければならないだろう。

俺は長い間術を使い続けてきたから、魔力は司祭並みにはある。

アレイは、どうだろうか。

まあ、今までにも皇魔女の術奥義をたやすく習得してたから、相当にはあるんだろうが。


「次は、アレイだな。魔力を全身から溢れさせる…できるか?」


「やってみます」

アレイは目を閉じる。

そして、全身から水色のオーラを醸し出す。


「おっ、出来てるじゃないか。じゃ、後はどこかに狙いを定めろ」


アレイは目を開け、ある一点をじっと見た。

「定めたか?」


「はい」


「あとは、そこに一筋だけ稲妻を走らせるんだ…ごくわずかにだけ、魔力を伝わらせるイメージでな。一筋の稲妻が走ったら、あとは全開で魔力を飛ばせ。

上手くいけば、私や龍神がやったのと同じような轟音が響く」


アレイは目を見開き、手をかざした。


壁沿いの空中に、小さな稲妻が走る。

そしてその直後、太い雷光が迸る。


「雷法 [万儡・ボルトストーム]」

アレイが術を唱えると、みるみるうちに稲妻が増え、轟音を響かせながら雷撃の嵐が吹き荒れた。


「…やった!」


「さすがだな。一回で習得するとは」


「完璧だ。やっぱり君は、生の始祖の末裔だぜ」


「ありがとうございます」

アレイは、俺達に感謝の礼をした。



そして顔を上げ、すぐに言った。

「ところでスレフさん…一つ、私達と手合わせを願えませんか?」


「どうした、急に」


「私…尚佗と戦って思ったんです。私には、まだ電属性の使い手への恐怖心がある。

それを、克服したいんです」


「君は海人だぞ?電属性の相手に恐れを抱くのは、自然なことだ。

それを無理に克服する必要は無いんだぜ?龍神もいるんだしな」


「いえ、私はどうしても、電使いへの恐怖心を捨てたいんです!」

アレイの気迫には、俺もスレフも驚いた。

「そ、それはまた、どうして…」


「私は吸血鬼狩りになりたいんです。なのに、恐怖心なんて持ってたら話になりません。それに私は…何となく、また尚佗と戦うことになりそうな気がするんです。その時にあいつを恐れたら、絶対に勝てないと思うんです!だから…だから!」


アレイのその目を見て、スレフは真剣な顔つきになった。


「…その目は、本気の奴のものだな。

わかった。私が、お前ら二人の相手をしよう」


面白い、続きが読みたい、などと思って下さった方は、星の評価やブックマーク登録をして頂けると作者のモチベーションも上がって更新頻度を維持しやすくなりますので、ぜひよろしくお願いします。

またコメントやいいねもお待ちしています。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ