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五人目の皇魔女

町につくと、そのまま城へ連れていかれた。


町中を通る時、あちこちにある花壇が目についた。

それらは全て丁寧に整備され、冬でも咲く花が植えられていたのだ。


冬に咲く花自体は珍しくもないが、こうも町中に植えられているのは珍しい。

ここの皇魔女は、花を大切にしているのだろうか。



さて、城に到着すると、俺とアレイだけエントランスで待たされた。

場所が場所だけに寒い。

アレイは、カティーヤに作ってもらったカーディガンのおかげで寒くはなさそうだった。

それを見て、俺もなんか暖かい服が欲しいな、と思った。


やがて、一人の兵士がこちらへ来て、皇魔女陛下がお呼びだ、ついてこいと言ってきた。

とりあえず、謁見は出来るようだ。


城内にもあちこちに花壇があり、その全てに花が植えられていた。

それは、町中の花壇とはまた違った種類の花。

やはり、花に特別な思い入れがあるのか。


やがて兵士は一つの扉の前で立ち止まり、こちらを振り返って、

「この先に我が国の皇魔女陛下がおられる。くれぐれも粗相のないように」

と釘を刺してきた。


俺は何も反応しなかったが、アレイは頷いて見せた。


扉を開け、兵士は声を張り上げた。

「陛下。申し上げました客人です」


「ご苦労様。ひとまず下がりなさい」


兵士が下がると、皇魔女の姿がはっきり見えた。


それは薄緑の服一式を身に着けた、背の高い紫髪の魔女だった。

「…例の二人、ね?わざわざ来てくれてありがとう。

私がここナアトの皇魔女、シルト・ライナン。

さあ、来なさい」


皇魔女がそう言うと、何やらやわらかい追い風が吹いてきた。

まるで、早く来いと催促しているようにも感じられた。



「…」

皇魔女は、立ち上がってアレイを見つめた。


「あの…」


「そうか…あなたが、星羅こころの妹。そして、そっちは…」

奴は、こちらに目線を移してきた。


「殺人鬼…か。長い間見ていなかったけど、やはり今も存在するのね…」


「そりゃあな。絶滅なんかしないしな」


「…」

こちらの全てを見透かしてくるかのような、透き通った白い目で、俺をじっと見てきた。


「…何だ」


「あなたの目は…とても暗い。でも、真正の悪人の暗さじゃない。

あなたの目は、闇に堕ちた光の者の目…」


「…何が言いたい」


「…いや、いい。ひとまず、あなたが悪しき心を持った殺人鬼ではないことはわかった。

それで…私に何を言いに来たの?」


すると、アレイが言い出した。

「ジヌドへの侵略行為を、今すぐやめて頂きたいんです。あの町の人達は、最近この国で起きている事件とは一切関係ありません」


「…なぜそう言い切れるの?」


「見たからです」


「見た…?」


「はい。…申し遅れました、私はアレイ・スターリィと言います。異能として、過去を見る[追憶]という能力を持っています」


「…それで、あの町の者とこの国の一連の事件の因果関係を調べたと?」


「はい。そもそもここ数週間、この国にジヌドの人は来ていません。私が、保証します!」


皇魔女は黙り込み、しばし考えた。

そして、はっと思いついたように言った。

「…わかった。あなたの頼み、聞き届けましょう」


「では、速やかに侵攻をやめてくださるのですね?」


「ええ。あなた達の事は聞いてる。信じない訳にはいかないわ」


「ありがとうございます」


アレイは、頭を下げた。

「それから、私からも聞きたい事があるのだけど」


「…はい、なんでしょう?」


「あなた達…電の再生者を倒したというのは本当なの?」

なんで知ってるんだ。

まだあれから数日しか経ってないのに。


「ああ…でも、なんで知ってるんだ?」


「風の噂で聞いたの。…私は風の皇魔女、風を使えばどこのどんな情報でも集められる」

風にそんな使い方があったとは。


「それで、私達が電の再生者を…尚佗を倒した事も聞いていた、という事ですか?」


「スレフが喜んでたわ。これでまた、電の術奥義を使える…って」


「結局それかい。ま、後で伺ってみるか」


「それがいいと思う。術奥義は、扱えて損はないものだから」


「あの…関係ないんですが、この町はあちこちに花壇がありますよね。なんなら、お城の中にも。

それで思ったんですが、シルトさんは、花が好きなんですか?」


「ええ。私は、昔から花が好きなの。

季節ごとに違う花を植えてる。お客様や国民達の目の癒やしにもなるし」


皇魔女は、改めて…と仕切り直した。

「最近、この国の城下町で殺人者による事件が相次いでいるのは聞いているわね?」


「ああ。詳しくは知らないが…」


「事件を起こした者は、全て捕らえている。そして町への殺人者の侵入も規制しているのだけど…どういうわけか、町中に外部の殺人者が入ってきて騒ぎを起こすの」


「なんだそりゃ。…そりゃ、大変だな」


「幸か不幸か、まだ誰かが亡くなったりはしてない。でも、このままだといずれ犠牲が出るかもしれない。

そうなる前に、何か対策を取らないといけないのだけど…どうすればいいのか…」


ここで、俺は言った。

「あ、そうだ。それで思い出したんだが、あんた、国から殺人者そのものを締め出す事はしなかったらしいじゃんか?それは、どうしてなんだ?」


「この国は、殺人者にいてもらわないと困るから…」


「どういう事ですか?」


皇魔女は、アレイに一度目線を移し、そしてまた俺を見てきた。

「再生者流未歌(るみか)…奴が、この国を狙っているの」


「…何ですって!?」


「それ、本当なのか?」


「ええ。私、このところ毎日のように同じ夢を見るの。流未歌が、お前の国の全てを壊してやる、私は一時もお前達を忘れていない…なんて言って、私に手を伸ばしてくる夢を…」


「いや、そもそもあんた、流未歌と面識あるのか?」


「ない。でも、もしかしたら…と思って、城の図書館を調べたら、見つけたの…これを」

皇魔女は、古ぼけた分厚い本を出した。


「それは?」


「かつて、生の始祖達に協力した魔女…この国で最初の皇魔女となった、偉大な魔女が、生涯をかけて記した、最後の書物」


そして、皇魔女は魔法で本を空中に浮かべ、パラパラとめくっていき、あるページで止まった。


「ここに、私の探していたものが全て書かれていた」


俺達は、それを近くでよく見る。



そこには、謎の絵が書かれていた。

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