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ゾンビの群れ

ナアトまでは2日ほどらしい。

こんな、数百人の部隊の中に混ざって歩くのは、いつぶりだろうか。


この部隊の隊員は全部で300人おり、その殆どは普通の術士や魔法使いで、指揮官として魔道士と賢者が3人ずつ、部隊長として魔王が一人、らしい。


術士は賢者に、魔法使いは魔道士に従い、賢者と魔道士は魔王に従うそうだ。

自身の上位種族に従うといったところか。


それで言えば、賢者の上に大賢者を入れてもよかったような気もするが…

でも、よく考えるとやめたほうがいいのかもしれない。

「船頭多くして船山に登る」ってやつだ。



夕暮れの荒野を歩きながら、指揮官達と少しばかり話す。

ちなみに今は、男の魔道士と話している。

「ナアトのほうで、結局何があったんだ?」


「殺人者が、町中で喧嘩騒ぎを起こしたり、麻薬を売買したりしているのだ。

一時、国から全ての殺人者を追放しようかとも考えたが、陛下がそれを良しとしなかった」


「へえ?そりゃまた、なんでだ?」


「わからん。だが、とにかく陛下は、問題を起こした殺人者だけを捕らえると仰られた。その一方で、これ以上殺人者が国に入ってこないよう、各種の対策を取るとも言っておられた」


「それで、ジヌドを…ってわけか。ったく、いい迷惑だ。話も確認もまともにしないで…」


「やむを得まい。殺人者とは、まともに交渉出来んからな」


それ自体が、とんだ偏見なのだが。

現に、こうして今も俺と普通に喋っている訳で。


「それは違うね。殺人者だって、話すときは話すさ」


「お前のような高位の殺人者はそうかもしれない。だが、一介の殺人者…ことに狂信者や反社会人などは、まともに部外者の話を聞かんだろう」


「それは…まあ…な」

そう言われると、なんとも言えない。

狂信者は自分の中の考えしか信じないし、反社会人は根っからのひねくれ者だ。


「だが、お前のように聞き分けのいい者がいるのもまた事実のようだ。ここは一つ、皇魔女陛下に…」


その時、偵察の兵士が声を張り上げた。


「伝令!10時の方角に多数のアンデッド!」


それを聞いて、みんなが一斉にそっちを見る。

もちろん俺もだ。


それは、数百体はいるであろうゾンビの大群だった。

のろのろと走りながら、こちらへ向かってきている。


「…総員戦闘用意!ゾンビどもを迎え撃つぞ!」


総大将たる魔王の声で、皆が構えた。

だが、このままでは勝ち目は薄い。


この兵士達はみんな術系である上に、吸血鬼狩りの力を感じない。

一応光使いがいるようだが、せいぜい数十人程度だろう。

それでは、あの大群を捌き切るのは難しい。


何より、ゾンビは意外と耐久力と攻撃力が高い。

しかも、やられた奴はその場でゾンビになるため、最終的には数の暴力に蹂躙されることになる。

奴らが、吸血鬼狩りでない者にとって十分すぎるほどの脅威となる理由がここにある。


「龍神さん…!」

アレイも、不利である事に気付いたのだろうか。


「兵士達だけだとキツい。俺たちが行くぞ!」


とは言え、真っ向からやり合う訳にはいかないので、指揮官達に話をつける。


「あんた達!頼みがある!ありったけの風使いに竜巻の術を使わせて、時間を稼いでくれ!

それと、光使いは攻撃を頼む!」


「…殺人鬼を信じろというか!」


「奴らは光か吸血鬼狩りじゃないと殺せない!犠牲を出したくなきゃ、従ってくれ!」


「…しかし!」

すると、魔王が口を開いた。


「彼を信じよう。熟練の吸血鬼狩りの言う事だ、信じてみてもよかろう」


「…っ」

文句を言った賢者は、納得したようだった。




奴らはもうあと数十メートル先まで迫ってきた。

と、奴らの前に複数の竜巻が現れて奴らを吹き飛ばした。

「おっ…!やってくれたな!」


さらに、光使い達が一斉に術を放ち、竜巻越しにゾンビ達を攻撃してくれていた。


「そちらの言葉に従ったのだ、お前達にも仕事をしてもらうぞ!」


「言われるまでもない。さあ、アレイ!」


「はい!」


俺たちは、荒れ狂う竜巻に向かって走り、その中に飛び込む。




強烈な竜巻を利用して適当な高さまで飛び上がったら、弓を構える。

アレイには…もはや、説明するまでもないか。


「弓技 [コスモウェーブ]」

放った矢から衝撃波を起こし、複数の敵を攻撃する。

威力もさることながら、攻撃範囲が徐々に広がっていくのが便利で、結構使う技だ。


アレイはと言うと、シンプルに無数の魔力を込めた矢を放っていた。

まあ、倒せればいいので何も言う必要はないが。


俺たちはなるべく後列の敵を狙う。

打ち漏らして前列まで来た奴らは光使い達が倒してくれるし、やられなかった奴も竜巻でふっ飛ばされ、後ろに戻される。

これを続ければ、全滅させられるはずだ。


心配なのは一つ…術士達の魔力が切れなければいいが。

特に風使いの魔力が切れられると、竜巻の維持ができなくなり、防御に穴が空いてしまう。

そうなると、面倒な事になる。


そのためにも、さっさと決着をつけねばならん。


弦を引き絞り、強烈な技を放つ。

「奥義 [スナイパーストーム]」




これがトドメとなり、ゾンビは殆ど全滅した。

残るはあと数体だ。


アレイの技で、3体が倒れた。

そこへ…


「[シャイニング]」

高位の光魔法が飛んできて、残りのゾンビも倒れた。


「あっ…!」


「ナイスだ」


閃光矢を空高く放ち、終わった事を向こうに知らせる。

すると、竜巻はすぐに消えた。


「よし…!」




兵士達の方に戻り、戦況を確認したが、やられた奴はいなかった。


「損害は0だ…よくやってくれた」


「みんな無事だったんですね。よかったです」


「あんた達のおかげだ、ありがとうな」

魔道士に礼を言われた。


「いや、そっちこそよく耐えてくれた。誰か、魔力が切れて壁が崩れたら、台無しになってる所だった。

さすがは魔法都市の軍隊だな」


「風は我らの得意属性だからな。それより、アレイ…だったな、君が吸血鬼狩りだとは思わなかった」


「私は、正規の吸血鬼狩りではないですけどね」


「どういう事だ?」


「私は正式に吸血鬼狩りに入ってる訳ではないんですが、アンデッドを普通に倒す事が出来るんです」


「そんな事があるのか…まあいい。とにかく、今日はもう休もう。龍神、見張りを頼めるか?」


「ああ。…てか、もう夜か」



テントを宿営し、休む事になった。

俺を含め、複数人の兵士が交代で夜の見張りをしたが、もう敵が現れることはなかった。

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