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呪い

奥へ進み続けること数十分、私達は遺跡の建物の外へ来ていた。

下から見た時は雷雲に囲まれているように見えたけど、ここからは雷も雲も全く見えず、真っ黒い雲海が下に見えるだけになっている。


時折現れるアンデッドは、3人で交代交代に倒していく。

基本複数で現れるけど、一度に現れるのは多くても5体程度なので、一人で十分片付けられる。


それに、魔力の消費を考えると、みんなで交代しながら倒していったほうがいい。

私達の魔力は、使っても時間経過で自然回復するけど、さすがに連続で使えばすり減ってくるからだ。


「[大滝打ち]」

小ぶりのハンマーを持ったリビングモールを、樹さんが水の力を宿す技で仕留める。

聞いた話では、樹さんも吸血鬼狩りらしい。

失礼だけど、ちょっと驚いた。


「樹さんは、どこの組織の所属なんですか?」


「オレはナイトクロックってとこの所属だ。カオスホープより小さいけど、みんな強いよ」


ナイトクロックの名は聞いた事がある。

カオスホープの子組織にムーンライトという集団があるのだけど、そのムーンライトから離れた構成員が独自の集団として作った組織がナイトクロックだ。


"夜の時計"という名前の通り、闇属性や月術の使い手が多く、幹部は高位の術である"時空術"を扱う事も出来ると聞く。

「あれ、てことは、樹さん月術を使えるんですか?」


「ああ。星奥義も一応使えるぜ」


「どの星奥義を使えるんですか?『月華時計』とか、『影ガ為ノ世界(シャドーワールド)』とかありますよね?」


「オレは『影ガ為ノ世界(シャドーワールド)』と、『さよならの月明かり(エンドス・ライト)』を使えるよ」


影ガ為ノ世界(シャドーワールド)は瞬間的にその場を真っ暗にして、相手の視界を奪いつつ自身の行動を繰り返す影を複数体生成する術で、さよならの月明かり(エンドス・ライト)は月光で相手にダメージを与え、その分自分と仲間全員を回復するドレイン系の術。

前者は闇、後者は闇と光の力を持つ、強力な術だ。


「樹さん、本当に探求者なんですか?」

私は、思わずそう言ってしまった。

普通、星奥義は魔騎士や賢者などの上級種族が扱うもの。

それに対して、探求者は最下級の種族だ。


高度な棍の技を使っていたことといい、彼が低級の種族だとは思えない。

本当は、探求者の上位種である追求者か、あるいは更に上の冒険者なんじゃないだろうか。


だとしたら、彼がやけに童顔なのも納得がいくし。


「…残念ながら、そうなんだよ」

彼は、芯から残念そうに言った。


「オレはもう長い間探求者をやってきた。そしてこの通り、探求者には相応しくないくらいの強さを得た。

でも、未だに昇格できないんだ。…心を見つけれてないからな」


「心」とは、おそらく「探検家の心」のことだろう。


この世界の異人は、私達のような一部の種族を除き、特定の条件を満たすと上位の種族に昇格できるけど、その条件は特定の年月を生きる事だったり、特定のアイテムを使う事だったりと色々だ。


そして、探求者は探検家の心というアイテムを使う事で昇格できる。

このアイテムは世界のあちこちに散らばっており、まずはこれを見つけなければならない。

冒険の果てに心を見つける、いわばテストのようなもので、これをクリアした時、探求者は昇格できる。


昇格した先は、追求者という種族だ。

探求者よりも寿命が伸び、冒険や研究にますます没頭できるようになる。


そして、そこから数百年の年月を生き、さらに「冒険家の心」というアイテムを使うと、最上位種族である冒険者になる事が出来る。


冒険者は別名「永遠(わらべ)の種族」とも言われており、数千年の時間を生きても、子供の時とほとんど変わらない顔と心を持ち続けると言われている。

でも、その強さと知識、そして頭の回転は、紛れもなく最上位の異人のそれだ。


「どうして、心を見つけられないんですか?」


「それがわからないんだ。もう長いこと探してる、でも、どうも見つけられなくてな…」

探求者は、追求者になってから数百年生きて、初めて冒険者となる資格を得られる。

そして、探求者は10年の年月を生きれば、あとは心さえ見つけられれば、昇格が可能。


つまり、樹さんはもう昇格の資格があるにも関わらず、アイテムを見つけられないために昇格が出来ていない状態なのだ。


「俺も一緒に探したりしたんだが…なぜだか見つからなくてな。まあ、運が悪いだけだと思いたいが…」


その言い方だと、彼も薄々違和感を感じてはいるのだろう。

でも、二人共根本的な理由にはたどり着けていないようだ。

なので、私が助けてあげることにする。


「樹さん。あなたが昇格できないのには、理由があります」


「…なんだ、それは?」


「あなたは、アンデッドに呪いをかけられています。

そのせいで、探検家の心を見つけられないんです」


「…え!?」


「なんでそんなのわかるんだ?」


「あら、龍神さん言ってましたよね?私は生まれながらの吸血鬼狩りなんですよ。アンデッドに呪いをかけられた人くらい、すぐにわかります」


「いや、吸血鬼狩りでも普通はわかんないぞ…」


「…とにかく。樹さんが昇格できないのは、決して努力が足りないからとか、運が悪いからではありません。

呪いをかけたアンデッドを見つけ出して倒せば、昇格もできるようになるでしょう」


「本当か!」


「ええ。ただ、そのアンデッドはここにはいません。

尚佗を倒してから、ゆっくり探しましょう」


「そうだな…わかった。それには、君が同行してくれると助かるな」


「もちろんです。ね、龍神さん?」


「よくわからんが…まあ、いいだろう」


「ですって。さあ、まずは尚佗の所へ行きましょう」




それから程なくして、私達は「そこ」へ着いた。


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