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クルイアの遺跡へ

翌朝、起きた時には雪は止んでいた。

不思議なことに、やはり積もってはいない。

私達は速やかに食事をすませ、テントをたたんで出発の準備を整えた。


今日は、一段と寒い。

特に、ここは標高が高いから、尚更だ。


龍神さん達も、昨日より寒いと言っていた。

さすがにこの寒さの中を進むのはきついので、「芯核熱」の術を使ってみんなの体を温める。

樹さんが「こんなのあるなら初めから使ってくれよ」と苦笑いしていたけど、その通りだと思った。

なぜ最初から使わなかったのか、自分でも疑問だ。





険しい岩山を登る事2時間、私達はようやく頂上に到着した。

振り返ると、きれいな雲海が広がる…と言いたい所だけど、雲が真っ黒で全くきれいに見えない。

時折その雲の間から見える雷光と、轟く雷鳴ばかりが気になる。


「雷が落ちてこなかったのが奇跡だな」


その通りだ。

龍神さんは大丈夫かもしれないけど、私や樹さんが落雷なんか受けたらひとたまりもない。

しかも、ここまでにも何度も雷の音を聞いた。

本当に、よかった。


「んで、尚佗の居城はどこだ?」


「あれじゃないか?」

龍神さんは、頭の上を指さした。


そこには、巨大な白い平たい岩のようなもの…に乗った、廃都市があった。

「おお…あれが…」


「あれが古クルイア帝国…かつて栄華を極めた、探求者の帝国の跡地です。

今は、尚佗が蘇らせた死者の巣窟となっています」


龍神さんは、不思議そうな目でそれを見た。


「結構高い所に浮いてるな。どうやって行こうか」


「普通に飛んで行きましょう」


「え?」

樹さんが疑問を感じるのも無理はない。

なぜなら、遺跡のまわりには常に雷光が光っているからだ。


「雷神の護りもあるんですし、大丈夫ですよ」


「本当に、大丈夫か…?」


「ええ、大丈夫ですよ。行きましょう」


魔力で体を包み、ふわりと浮き上がる。

しばらく私が浮遊しても雷が落ちてこないのを見て、龍神さんも大丈夫だと判断したのか、浮かび上がった。


「…大丈夫そうだな。よし、行こう」


樹さんも、恐る恐る浮かび上がる。

そして、私達は遺跡に向かって飛んだ。





遺跡はあちこちの建物や床が崩れていたり、植物が生い茂っていたりして、なかなか乗り込めそうな所が見つからなかったけど、しばらくまわりを飛び回ったら良さげな所が見つかった。

「ここからいけそうだ」


遺跡の中は山と違って暖かく、空気も地上と同じくらいあった。

「地上みたいな環境だな」


「地上よりあったかいけどな」


歩きながらあたりを見て回る。

今は実質的に死者の国になっている所だけど、こうして見て回ると、なんだかロマンを感じる。


「なんか、ロマンがありますね…」


「お、わかるか?この気持ち!」


「ええ。太古の時代の息吹が、今もあるような気がします」


「そうなんだよ…それが遺跡の良さなんだ。わかって貰えて嬉しいぜ!」

ちょっとはしゃぐ樹さんとは対照的に、龍神さんは真剣な顔つきをしていた。


「どうした?」


「いや、なんでもない…」


その時、行く手にアンデッドの一隊が躍り出た。


「おっと、出やがったな!」

それらは「リビングモール」と「スパルトイ」というアンデッドだった。


リビングモールはゾンビの亜種で、ゾンビとの違いは、斧や槍などの近接武器を持っており、ゾンビよりは戦闘能力が高いこと。

スパルトイはエスケルの上位種で、エスケルより戦闘能力と耐久力が高い。


「さっさと片付けるぞ」

龍神さんはスパルトイの群れの中に向かっていき、

「刀技 [影居抜き]」

一振りで4体を切り倒した。


私も負けてはいない。

「剣技 [分身斬り]」

瞬間的に5人に分身し、5体のリビングモールを斬る。

幸い、リビングモールは反応が遅く、知能や耐久力も「ゾンビよりは高い」という程度のアンデッドなので、一撃で倒すこと自体はさして難しくない。


その間に、龍神さんはさっきの技で仕留めそこねた一体から攻撃を受けたけどそれを躱してカウンターを決め、粉砕した。


「おお…!」

それらを見て、樹さんは驚嘆していた。


「アレイ、君って吸血鬼狩りだったのか!」


「正式に入団してる訳ではないですけど、吸血鬼狩りとほぼ同じ事ができます。

龍神さんも認めてくれてます」


「え、そうなのか?」


「言ってなかったっけか?アレイは元々、アンデッド戦は未経験だったんだが、普通にゾンビを倒せた。

おそらくは、生まれながらに吸血鬼狩りの才があるんだよ」


「そんなヤツが…っと、また来たぞ!」


今度は、3体のスパルトイだった。

みな、剣と盾を持っている。


「ちょっとばかり分が悪いな。樹、一つ、魅せてくれないか?」


「…いいぜ、やってやるよ」


樹さんは私達の前に出た。

そして棍を構え、スパルトイに向かって突っ走っていく。

奴らの中に飛び込み、

「棍技 [餓狼無双]」

棍を高速で振るい、あっという間にスパルトイを全て片付けた。


「すごい…!」


「ふっ、どうだ?オレに惚れたか?」

カッコつける樹さんに、龍神さんがため息まじりに言った。

「行くぞ」



しばらく進むと、大きな岩が道を塞いでいた。

それは、泥やほこりでひどく汚れていた。


「下がれ。オレのほうがやりやすい」

樹さんは棍を振りかぶり、技を放った。


「棍技 [羅刹撃]」

でも、岩は割れなかった。


「…ありゃ。頑丈な岩だな」


「ちょっと待ってください」

よく見ると、この岩は水色をしている。

ということは、恐らく…


「氷法 [ブリザードレイ]」

私が術を放つと、あっさり破壊できた。


「え?…あ、もしかして属性岩か?」


「そうです。汚れてたのでわかりづらかったですが、よく見たらわかったんです」


「なんでまた、氷の属性岩が…?」


その理由は、正直薄々わかる。

尚佗は、たぶん…



「まず進もう。早いとこ尚佗の所へ行こう!」

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