表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
179/321

電の邪教徒

アリス三世に案内されるがままについていくと、

そこは町の北口だった。


うす暗い中に見えたのは、何かの異人の集団。

黒っぽい布?をまとっているようだけど、まだ遠くてよくわからない。


でも、龍神さんはわかったようで、「ちっ…」と舌打ちをしていた。


一体何者だろう?と思っていると…

「あっ…!」

それは近づいてきて、私にも彼らの正体がわかった。


黒いローブの、不気味な雰囲気の三人の異人。

もはや、言うまでもない。

祈祷師の集団だ。


それらは、私達の前で止まった。

「何者だ?」


「ジェイル教団の者…と言えばわかるか?」


これは、私とアリス三世だけがわかった。

ジェイル教団は、昔からある再生者を崇める邪教。

死の始祖と共に再生者が封じられた後、鳴りをひそめたと思っていたのだけど…

またもや活動を始めたようだ。


「知らないな。何の教団だ?」


「我々は再生者を崇める教団…もうわかるな?」


「ああ…」

龍神さん達は、武器を構えた。


「つまり、お前らは俺達の敵ってことか」


「そういう認識でよい。我らが信仰するのは、この世界で最も強く、畏れるべき存在。

そして、我らはかの方々の目的の完遂のために動く存在。

主の命とあらば、如何なることでもする…」


その言葉に、アリス三世が反応した。

「何をするつもりです?」


「簡単な事よ…」

そう言って、リーダーらしき男は剣を抜き出した。


「…私を始末するつもりですか?」


「そうだ。貴様はかつて、生の始祖らに護りを与えた存在。それによって、奴らは我らの主に仇を成した。

我らが主は、貴様の存在を疎ましく思っておられる。故に、我らは貴様を始末しに来たのだ」


「生憎だが、オレ達がいる限りそんな事はさせないぜ」


樹さんがそう言うと、リーダーはふん…とつぶやいて言った。

「お前に用はない。我々が用があるのは、他の三人だ」


「へえ…?」


「我らの役目は、あくまでも主の命に従うことだ。

そして我らが主は、その三人を狙っておられる。

故に、お前に用はないのだ」


「三人?アリス三世の他に、龍神たちに何の用があるってんだ?」


「…いや、正確にはその水兵の娘が目的だ。

その娘は、再生者星羅こころ様の妹。そして、我らの主…再生者儡乃尚佗様は、その娘を欲しておられる」


彼らは尚佗を崇めているようだ。

まあ正確には、奴らは再生者というよりは死の始祖を崇拝の対象としているのだけど。


「なんでアレイが必要なんだ?」


「それをお前に語る必要はない。お前はここで死ぬのだからな」

そして、残りの二人も鎌と弓を出した。


「そうかそうか…」

樹さんは術を使い、自身の水の力を高めた。

詠唱をしないあたり、彼は熟練の術士のようだ。


「我々と戦おうというのか?」

鎌持ちが呆れたように言うので、私が返した。

「逆にみすみす捕まるとお思いで?」


「そうだな…いや、これは愚問であったか。

しかし残念だ…お前を傷つけたくはないのだがな」


「我らは尚佗様のお力を授かりし者…水兵など一撃で黒焦げにしてくれよう」


弓持ちがそこまで言った時、突如どこからともなく声が聞こえてきた。


『待て』


その声を聞いた祈祷師達は、途端に耳に手を当てて(かしこ)まった。

「はい、何でしょうか…」


『忘れたのではないだろうな…その娘は、傷つけてはならん』

落ち着いているけど、どこか恐ろしさを感じる声だった。

そして、どうやらこの声と祈祷師達の会話は龍神さん達には聞こえていないようだ。

私と祈祷師達にしか聞こえない声。

その主は、おそらく…。


「し、しかしながら、殺人鬼と探求者、そして黒い吸血鬼(ノワール・ヴァンプ)までもおります故、多少の争いはやむを得ぬかと…」


『殺人鬼?どんな奴だ?』


「黒髪に黒い眼をした、刀持ちの男にございます。どうも、例の娘を守っているようでして…」


『そうか…ならば、予定変更だ』


「それはつまり、こやつらを殺してもよいと…?」


『いや、娘とその殺人鬼は何があっても殺すな。

残りの探求者と黒い吸血鬼は、貴様に任せる。

それと、せっかくだ。貴様らが出る前に、例の奴らを使って挨拶をしてやれ』


すると、リーダー格の男はにやりと笑った。

「あれを使えと仰いますか…なるほど。

さすがは、偉大な皇帝陛下。我々には考えもつかぬ事をお考えになられますな」


『ふん…駄弁はいい。知っておろう、私は無駄に持ち上げられるのは嫌いだ』


「はっ…これは失礼致しました。

それでは、奴らにあれを使ってよいと仰るのですね?」


『ああ。娘と殺人鬼さえ生かしておけば、言う事はない。貴様と貴様の部下どもには、少しばかり期待している。くれぐれも、私を落胆させんようにな』


「もちろんでございます。全ては、偉大なる死の始祖のために…」


『うむ。全ては、あの方の復活のため…』



そして、祈祷師達は通信を切った。


「哀れな異人達よ。我々は主の命により、貴様らに一つ、ちょっとした挨拶をする」


「挨拶、だと?」


「そうだ。我々が貴様らと戦うのは、それが終わってからだ」


そして、リーダー格の男が杖を取り出し、術を唱えた。


「死霊霊術 [死者の(ネクロマンス)行進(・パレード)]」


それに続いて、鎌持ちが術を使う。

「召喚・死せる偽りの水兵」


すると、地面から白水兵が現れた。

ただし、体が腐ったアンデッドの。


さらに、

「闇法 [アンデッド・イリュージョン]」

弓持ちの術で、白水兵のアンデッドは数十体に分身した。 


「なっ…!」

それらは銘々が異なる武器を持ち、相応の防具を着込んだ、さながら兵士のような姿をしていた。


「どうだ?…殺人鬼よ、こやつらはお前の同族であろう?」


「かつてはそうだったのかもしれんな…だが、今はもう違う!

誰であろうと、ぶちのめすだけだ!」


「そうかそうか…さすがは殺人鬼と言った所だな」

そして、奴は私達を見てきた。


「こやつらを全て倒してみるがいい。それができたら、我らが貴様らの相手をしてやる。

まあ、楽勝であろう?…特に、水兵の娘よ」


私は、奴に向かって叫んだ。

「ええ!こんな奴ら、私達みんなで倒してやるわ!

そして、あんた達も倒してやるんだから!」


「ふふ…威勢はいいな。

では、やって見せよ!」


そして、祈祷師達は消えた。


面白い、続きが読みたい、などと思って下さった方は、星の評価やブックマーク登録をして頂けると作者のモチベーションも上がって更新頻度を維持しやすくなりますので、ぜひよろしくお願いします。

またコメントやいいねもお待ちしています。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ