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黒界異人伝・生命の戦争  〜転生20年後の戦い〜  作者: 明鏡止水
三章・影の雷

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援助

彼はとても喜んだ。

「おお…!本当に通じた!」


「水兵とスペイン語で話すのは初めてなんですか?」


「メテラル語でしか話したことがないんだよ。オレは普段は英語とかメテラル語とかなんだけどな」

英語か。

私は少ししかわからない。

この世界では、種族ごとに使う言葉が違うので、昔は異種族との交渉が難しかった。

その意味では、メテラル語という共通の言語が生み出されたのは画期的な事だと思う。


「あ、スペイン語ねえ…」

龍神さんがボソッと言った。


「とか、ってことは複数の言語を話せるんですか?」


「ああ。日本語、メテラル語、英語、フランス語…あと、最近はスペイン語も少しだけ行けるようになった。

それで、まあ…一回水兵と話してみたくてな」


「なぜ水兵にこだわるんですか?他の海人にも、スペイン語を話す種族はいますけど」


「それは…まあ、何だ。水兵が好きだからな」


「あら…それはありがとうございます。

ちなみにですが、どのような所が好きなんですか?」


「色々だな。服のデザインもいいし、みんな若くてかわいい子ばっかりだし…」


見事に多くの人が上げる所ばかりだ。

本当は泳ぎが海人の中でも上手い方だから、とか、海人なのに陸にいられるから、とか言ってほしいのだけど…

まあ、彼も陸人だし、仕方ない。


「それには同意だな。水兵の服は俺も好きだ」

なんだ、龍神さんも私達の制服が好きなのか。


「だよなあ。それに水兵ってミニスカだから、そこもまたいいんだよなあ…オレ、足好きだからさぁ…」

なるほど、つまり…




この人とは、仲良くなれそうだ。


過去を見た限り、これまで何度も龍神さんと冒険してきた人みたいだし、頭も切れる人のようだ。

これなら、誘うとか関係なく、一緒に旅をする価値があると思う。


探求者は古くから私達と関係があった種族だし、落とすのは難しくないと聞くけど…私は、すぐにはそんな事はしない。

しばらくは、本質を探ろう。




「ところで龍神、旅の資金は大丈夫なのか?」


「ああ…それか。まあ、大丈夫だよ」

そう言えば、今までお金の事をあまり気にしてなかった。


「本当かよ…?だって、お前あれなんだろ?サリス司祭から、人を殺すなって言われてるんだろ?」

そう言えばそうだった。

てか、その話どこで聞いたんだろう。


「まあ…異形狩りすりゃ大丈夫さ」


「いや、まあそれはそうだろうけどよ…この子にあまり迷惑かけるわけにいかないんだし、ちゃんと考えろよ?お前金遣い荒い所あるし、バイトすらしようとしないんだからさ…」


「大丈夫だって。まあ、確かにメインの稼ぎ方ができなくなったのは痛いけどな…」


メインの稼ぎ方…って。

過去を見た限り、彼は仕事は全くせず、ゆく先々で人を殺しては、その持ち物を盗んで生活してきたようだけど…

人を殺して物を盗むのは、稼ぐと言えるのだろうか。


殺人者である彼からすればそうなのかもしれない。

でも、私からするととても稼いでるとは言えないばかりか、自身の罪を上塗りし、リスクを引き上げるだけのように思える。

第一、人を殺す時点で罪深いのに、その上で強盗までして、しかもそれで生計を立てるなんて…ちょっと、常識的には考えられない。


そんな事をするくらいなら、普通に働いた方が余程マシだと思う。

というか、龍神さんはなんで働こうとしないのだろう。


「あ、あの…」


「どうした?」


「野暮な事をお聞きしますが、龍神さんはなぜ仕事をしようとしないんですか?」


聞かないほうがいいような気もしたけど、聞かずにはいられなかった。

彼なら、城の兵士や町の戦闘の教官に十分なれる。

なのに、働く事をしないのはなぜなのか。


「ありゃ、聞いてないのか?」

樹さんが、呆れた顔で言った。

「ええ…」


「マジか。龍神、黙ってるのはフェアじゃないぜ?」


「そうだな…悪かった」

そして、龍神さんはため息をついて話しだした。


「アレイ。俺は、ある種の特性持ちだって事は、前に言ったよな?」


「はい」

確かに、幽霊船から脱出した時に聞いた記憶がある。

 

「俺が働かないのはそれが元…いや、根本的理由なんだ」


「えっ…?」


「君には想像できんかもしれんが、俺は昔から何をやってもダメだった。だから、仕事をしたくなかった。

一応人並みの学校を出て就職したんだが、人付き合いが苦手だし、細かい事にこだわって、ミスがやたら多くてな…。

好きな事もほとんどなくて、興味がないことには全然集中できないし、人とも上手く話せない。

…まあ、色々あって、社会に適合出来なかったんだ。そもそも、子供の時から人を殺したい気持ちがあった訳だしな。

そんな訳で、俺は社会にいてはいけない存在だと自覚した。だから、働く事をやめたんだ」


何をやってもダメ…か。

確かにそんな事が続いたら、何だって嫌になるだろう。


でも、だからと言って罪を犯すのは違うと思う。

まあ、私には彼の気持ちはわからないし、彼の生き様にとやかく言う権利もないけど。


何にしても、彼の闇は思ったより深いようだ。


「…ま、そういうことだ。わかってやってくれ」

樹さんに、そう言われた。


「大丈夫です。私と彼は別の種族ですし、価値観や経験も違うでしょうから」


「そう言ってくれるとありがたいな。こいつはまあ…独特な奴だけど、悪い奴じゃないからさ」

樹さんにそうつつかれると、龍神さんはふん、と鼻で笑った。


「お金に関しては、まあ何とか上手くやって行きましょう。私も協力しますから」


「…申し訳ないな」


すると、樹さんが思わぬ発言をした。

「…仕方ないな」


「ん…?」


「資金はオレが援助してやるよ」


私は、この言葉に驚いた。

「…本当ですか!?」


「ああ。龍神とは長い仲だし、それに…アレイだっけ?君と共倒れになられても困るしな」


「そりゃ助かる。いくらくらい出してくれるんだ?」


「んー、そうだな。今回はどこまで行く気なんだ?」


「再生者を全員倒すまで、だな」


「なら結構必要だな。…よし、2000万出そう」

容易く言ってくれたけど、桁がとんでもない。


「そんなに…いいんですか?」


「もちろんだ。そのくらいならお安い御用だからな」


あ然とする私に、龍神さんがニヤニヤしながら言った。

「樹はな、こう見えてもセントルの考古学会の重鎮なんだぜ?金なら、いくらでもある。今までも、ちょくちょく助けてもらってきたんだ」


「で、でも、それだけの金額を返すのは…」


2000万は、言うまでもなく大金だ。

それだけの額を稼ぐには、私が全力で働いても、3年はかかるだろう。

「返せなんて言わないよ。昔からの仲間と水兵相手だ、そのくらいしてやるさ。それに、オレはむしろ金がだぶついて困ってるくらいだからな」

樹さんって、大富豪だったのね。

失礼だけど、意外だった。





と、部屋の入り口のドアが開き、声が聞こえてきた。

「そろそろいらして下さい」


声はアリス三世のものだったけど、彼女自身はドアの向こうにいなかった。

どうやら、音声伝達の魔法を使ったようだ。


私達がアリス三世の前に赴くと、彼女は喋りだした。


「町に曲者が近づいているようです。私も行きますので、お相手をお願いします」


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