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黒界異人伝・生命の戦争  〜転生20年後の戦い〜  作者: 明鏡止水
三章・影の雷

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四人目の皇魔女

地下牢の過去を壁に映し出してもらい、それを数年置きに遡ってもらうこと数分。

ついに、「それ」を確認した。


「あった…これだ」

地下牢の突き当たりの壁に作られたトンネル。

それは2400年前に掘り抜かれ、その500年後には埋められた。

しかし埋められた、と言ってもあくまで入口が塞がれただけで、抜け道自体は健在のようだ。


「これなら行けるわね」


「はい…行きましょう」


一応、兵士が見てない事を確認してから、壁の突き当たりへ向かう。

そして、そこでアレイが能力を使う。

「古のモノよ、ここに蘇れ…」


そして壁が静かに崩れ落ち、その奥に隠された抜け道が姿を現す。


「よし…行こう」

小雷球で明かりを灯し、抜け道を進んでいく。

もちろん、抜け道の入口はアレイに塞いでもらった。


長い間使われていなかったせいか、カビ臭い上にネズミがうじゃうじゃいる。

「鬱陶しいですね…[凍てつく大地]」

アレイが術を使い、ネズミを全て凍らせた。


「助かるよ。ネズミは好きじゃないんでね」


色々冒険してきたが、ネズミとムカデは何度見ても慣れない。



出口の岩を動かし、抜け道を抜けた先は、小さな石造りの部屋だった。

部屋の中には、全部で6つの棺が置かれている。


「玄室…かしら。ずいぶん気味悪い所に繋いだもんねぇ」


「なんか、ゾッとしますね…」

アレイは、ふっとした顔で棺の一つに近づいた。


「なにしてるの…?」


「この棺から、魔力を感じます。何か、とても強い異人の―」


アレイは戸惑う事なく、棺の蓋を開いた。





その中にいたのは、赤い帽子にピンク色のスカート、白い靴下を履いた、オレンジ髪の魔女。

それを見て、俺たちは驚いた。


「えっ…!?これって…!」


「さっきの皇魔女…よね。どういうこと?」

なんと、俺たちを牢に押し込めた皇魔女が眠っていたのだ。


「棺に入ってるってことは、死んでる…のか?」


「いえ、この体から出されている魔力は生者のものです」


「そう…なら…」

朔矢は、あろうことかモーニングスターを取り出した。

因みにモーニングスターとは、棒や棒に繋いだ鎖の先端にトゲつきの鉄球をくっつけた武器だ。


「えっ!?ちょ、朔矢さん!」


「ま、待てよおい!」


「何よ?」


「そんな物騒なもので起こす奴があるか。せめて術で起こそうぜ」


「そうですよ…それにそんなもので叩いたら、普通に死なせてしまいかねません」


「そう?」


「そうに決まってます!」


「いや、でも、別に叩こうとしてる訳じゃないわ。トゲを擦り付けてやろうと思って…」


「いや、それもダメだろ!

…あのな、相手は皇魔女なんだぞ!怒らせでもしたら、俺ら今度こそやられるぞ!」


すると、朔矢はモノを下げて大人しくなった。


素直に俺が能力を使い、弱い電流を流すと、皇魔女はあっさり目を覚ました。


「はっ!…ここは?」


「よかった…目覚められましたか!」


「あ、あなた達は…?」


「私はアレイ、レークの水兵です。この人達は…」


「甘燗朔矢、そして冥月龍神、ね。言われるまでもない」


「あら、ご存知でしたか」


「当然でしょう。それよりなぜ、あなた達がここに?」


「訳あってお城を訪ねた所、あなたそっくりの存在に牢に入れられたんです。それで今、抜け道を使って牢を抜け出してきた所なんです」


「私そっくりの…?あっ!そうだった!」

皇魔女は、全てを思い出したようだった。


「何者かが私を襲い、メターモの極魔導書を奪って私に化けたのでした!」


「極魔導書?」

朔矢は知らないのか。


「私達魔女にのみ扱える、最高位の魔法が記された魔導書…それを何者かが奪い、私の姿を騙った!」


「そういうこと…でも、魔女にしか扱えないなら、なんでそいつは魔導書を奪って変身できたの?」


「それはわからない。でも、奴が私の姿に化け、私に昏睡魔法をかけてここに押し込めた事は覚えてる」


「昏睡魔法?でも、あんたには何の魔法もかかってなかったが」


「えっ…?どういうこと…?」


「こっちが聞きたいよ…」


すると、アレイが喋り出した。

「もしかしたら、長い時間が経って魔法が弱まっていたのかもしれません。

昏睡魔法は、元々長続きするものではありませんし」


皇魔女は素晴らしい!と言う時の教師のような顔をして、

「よくご存知ですね。その通り、昏睡魔法は永続的なものではありません。

しかし、いつ解けるかは全くわからない。

…そうだ、お尋ねしますが、今は何年何月ですか?」


「今日は、1245年12月23日です」


「12月…!?ということは、2か月も眠ってしまっていたんだわ!

フルスは…我が国は、どうなっているのです!?」


「あなたの偽物によって、酷い圧政と搾取が強いられています。既に何人もの人が、理不尽な理由で処刑されたでしょう。今日も、皇魔女に楯突いたという理由で処刑された人がいます」

それを聞いて、皇魔女は肩を落とし、うなだれた。


「ああ…なんてこと…!

奇襲を許した上、国を乗っ取られてしまうなんて…」


その肩に、朔矢が手を置いた。

「皇魔女さん。落ち込む前に、やることがあるんじゃない」


「…やること?」

その刹那、皇魔女ははっとした。

「そうだ…国を、民を取り戻さねば!あなた達、お力添えを願えますか!」


「もちろんよ」


「喜んで!」


「アレイに同じくだ!」


皇魔女は、肩を震わせた。

「ありがとう…ありがとう!!」




俺は顔を引き締め、手を上げた。

「さあ、そうと決まれば行動開始だ。

この国は…俺達が守って見せるんだ!!」


「「はい!!」」


こういう役、ちょっと憧れてたんだよな。






「それで?作戦は?」


「そうだな…」


「まずは、私の偽物の正体を暴かなければ。

どなたか、顕現魔法を扱える方はいませんか?」


「なら、俺がリベレーの魔導書を使えるぞ」


「あたしも、顕現魔法がかかった短剣を持ってるわ」


「私も顕現魔法は使えます」


「あら、これは失礼。では、全く問題ありませんね。

あとは、玉座に突撃するのみ!」


「…え?」


「それが一番シンプルな方法かと。そこで向こうの正体を暴き、私が本物の皇魔女だとみなに明かすのです!」


「…まあ、それでなんとかいけるだろう」


「民は私を信じてくれている。事情を知れば、偽りの皇魔女に味方するものなどいないはずです!」


「…そうね。よし、もうめんどいし凸りましょ」


「ああ!行くか!」


「はい!…あ、そうだ。皇魔女さん、失礼ですがお名前は…」


「はっ、これは失礼しました。

私はイクアル・アリテッド、火の皇魔女です」


「…わかりました、ありがとうございます。

まずは、城と国を取り戻しましょう!」



イクアル・アリテッド

魔法王国フルスの皇魔女で、火の属性と「錬磨」の異能を持つ。

自らの火と武器である扇を組み合わせて巧みに扱い、攻撃から防御、回復まで満遍なくこなす事で知られ、火術士最強との呼び声も高い。

外見は再生者楓姫に少し似ているが、当然ながら性格も種族も全く異なる。


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