表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒界異人伝・生命の戦争  〜転生20年後の戦い〜  作者: 明鏡止水
三章・影の雷

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

131/322

大教義

白水兵の集落を出て、東へ向かうこと2日。

私達は、サリィという町へやってきていた。


別に深い意味はない。

ただ、たまたま通りかかっただけだ。


この町は修道士の町らしく、人間と修道士が共存している。

そして、修道士達は教会や役所で人間達の手助けをしながら生活している。


修道士が普通に町に出てるなんて…と思ったのだけど、どうやらこの町自体が修道院ということらしい。

こういう発想は、なかなか面白くていいと思う。


「修道士か…あまり好きじゃないな」

マリルの気持ちは最もだろう。

修道士は、人間を守る事を是とする種族。

人間を脅かす殺人者を見れば、有無を言わさず排除しようとするもの。

現に、町に入って最初に会った修道士に攻撃されそうになった。

私が、彼らに悪意がない事を説明したら納得してくれたけど…あまり良くは思われていないだろう。


「嫌な連中だな…僕らを偏見の目で見てきて」


「仕方ないわよ。彼らは彼らの正義に従っているだけなんですもの」


「行きすぎた正義は、下手な悪よりタチ悪いけどな」

龍神さんの言葉に、妙な重さを感じた。




「おはようございます」

道行く男性に声をかけられた。


「おはようございます。あなたは?」


「私はここの修道士です。あなた方は、観光に参られたお客様ですか?」


「いえ、私達は旅をしていて、たまたま、この町に来ただけです」


「そうですか。しかし、幸運でしたね」


「どういうことですか?」


「今日は、月に一度の大教義の日…他の国の司祭様がいらっしゃり、教義を話したり、町の情勢に関する助言をしたりされる日なのです。

部外者にとっても、傍聴する意義は大いにあるかと思いますので、是非ご参加ください」


大教義…か。聞いた事はある。

折角だし、参加してみるか。


覗いてみたいと言ったら、龍神さんたちも嫌だとは言わなかったので、町で一番大きい大教会へ向かった。







教会の中に並んだ無数の椅子。

そのほとんどに、人が座っていた。

修道士系の異人だけでなく、人間や魔法使いもいる。

数は…おそらく、合計で300人はいるだろう。


もうまもなく教義が始まる。

入口付近の席に座り、壇上に注目する。

そして…




奥の壁にかけられた時計が9時を差すと同時に壇上に現れたのは、一人の男性。

それは、他の修道士とは違う、金の装飾が施されたローブを纏っていた。


「皆様、おはようございます。

これより、大教義会をとり行います。

今回の講師は、ノグレ国の大司祭サリス様です。

サリス様、どうぞ」


彼が壇の中央から退く。

そして、壇の奥のカーテンが開いた。


現れたのは、一人の女性。

青と紫の材質で、特殊な紋章が刻まれた白い帽子。

腰や襟首のあたりに青い帯が巻かれた白いローブ。

そして、特殊な紋章が刻まれ、先端に魔法石が取り付けられた杖。

整った金色の髪と瞳に、美しい顔立ちの女性。

彼女は間違いなく、高位の司祭だ。


司祭は、壇上に立つと一礼した。

「皆様、おはようございます。お初にお目にかかる方がいらっしゃるので申し上げますが、わたしはノグレの大司祭サリス…洗礼名を壬華羅(みから)と申します。

今回もまた、ここサリィの町で教義をさせていただけるという事で、大変光栄に思っております」


そして彼女は教義を始めた。

でも、正直私にとっては話の内容はさほど大切な事ではなかった。

この町の情勢がどうのとかなんとか言われても、ピンとこないし関係ない。

龍神さん達は全く聴く気がないのか、開始早々居眠りをしていた。

私は起きていたけど、話はほとんど流していた。

本物の司祭を目の当たりに出来た事の感動の方に目が行っていたのだ。


修道士は、人間が術士を経て昇格した種族。

そして、その修道士系の最上位種族が司祭。

極限まで道を修めた人間が最後にたどり着く境地であり、莫大な光の力を持ち、全ての異人と人間を浄化し、導き、救うと言われる。

もちろん、それはあくまで肩書き…というか単なる謂れだ。

でも、私にはそれが強ち嘘だとは思えない。


そう言えば、シエラには二人の仲間がいたんだっけ。

凛央(りお)と苺。どちらも司祭だったはずだ。

彼女らも、元はここのような町で育ったのだろうか。


―まあ、凛央はともかく、苺は元々人間でも修道士でもなかったのだが。




教義が終わり、大教会を出る。

そして、教会の裏の門から町を出ようとしたその時…


「お待ち下さい」

後ろから声をかけられた。


「はい…って、え?」

なんと、声をかけてきたのはサリスさんだった。


「…あ、あんたは」


「あなた方の事、見ていましたよ。傍聴席に座っておいて、寝ているとは腹立たしい限りです」


「…それは、その…まあ、なんだ…」


「言い訳は無用です!何のために来たのですか!」

まずいかも。

サリスさん、普通に怒ってる。


「あ、いや…えーと…」

マリルが困惑している。


「私は、話を聞いて下さる方に教義に参加して欲しいのです!聞く気がないなら、来ないで下さい!

貴重な席を埋めておいて、寝てるなんてどういうつもりですか!」

話を聞いてなかったのは私もだけど…これ以上彼女を怒らせるとまずいので、私が弁明する。


「ごめんなさい、彼らは悪くないんです。

私が、無理を言って参加しただけですから」


「あなたは…」

サリスさんは、私をじっと見てきた。


「わ、私はアレイと言います。水兵です…」


「それは見てわかります。それより、あなたの纏う魔力が気になるのです」


「…と、言いますと?」


「あなたの体に、邪悪な魔力が纏わりついています。

ですが、それは恐らくあなた自身の心や行いに由来するものではない。

つい最近まで、あなたの近くには、何か強大な力を持つ邪悪な存在がいたはず。一体何があったのですか?」


「え、えーと…」

素直に説明した方がいいのはわかる。

でも、何と言うか…気持ち的に、言いたくない。


「彼女は再生者の妹だ。星羅こころの…」

龍神さんが言いかけたけど、サリスさんに睨まれると口をつぐんだ。

彼でも、司祭は怖いのだろうか。


「おや、よく見ればどこかで見覚えのある顔ですね。あなたはひょっとして…」

サリスさんは、龍神さんの正体に気づいたようだ。


「そ、そうだ。でもここでそれを言うのだけはやめてくれ。俺は、今は何もしてないからな」


「賢明な判断です。そして、あなたは白水兵ですね?」


「う、うん。でも勘違いしないでくれ、僕は誰かをやったりなんかしてないよ」

マリルも焦っている。

まあ当然だろう。司祭は、その気になれば殺人者など簡単に始末できる。


「そうなのですか?」


「な、なんでアレイに聞くんだよ」


「あなた方の言葉は、信用できるか怪しいので」


「酷くない!?いや、わかってはいたことだけどさ…」


「教義で寝ているような者の言葉を信用できるとでも?それに、わかっているなら、そんな事を言う必要はないでしょう?」


「…っ」


「アレイさん。彼らが人を殺めていないというのは事実ですか?」


「そ、そうですね…少なくとも、私が同行してからは…あ、でも山賊くらいは…」


「山賊…ですか。まあいいとしましょう。

それより、あなたが星羅こころの妹だというのは本当なのですか?」


「はい…」

すると、サリスさんは目を見開いた。


「では、あなたがシエラ様の末裔…!

はあ…こんな所でお会いできるなんて…!」


「シエラ…って、私の祖先をご存知なのですか?」


「勿論です。私達の間でも、シエラ様は今に至るまで語り継がれる偉大なお方。大賢者の娘である苺様と、早熟の天才であられた凛央様と共に、再生者を倒して不死者を封印された、最強にして最高の陰陽師。

あの方の子孫が再生者になったと聞いた時は、皆が悲嘆に暮れました。しかし、その妹は無事であると聞き、私達は希望を持ち続けておりました。

生きててくださってよかった。そして、ご無事にお戻り下さりありがとうございます」


高位の司祭に、頭を下げられてしまった。


そして、彼女はこうも言った。

「そうだ、こちらをお持ち下さい」


渡されたのは、白い篭手のような装備だった。



陰の手

・・・力を・・・、・・・は・・・。

されど・・・。・・・の強さ・・・、

如何・・・であろうか。

・すれ・・・、最強・・・、汝の・・・・・・。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ