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黒界異人伝・生命の戦争  〜転生20年後の戦い〜  作者: 明鏡止水
二章・死の炎

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燐火の魔女

最初にアレイが矢を放った。

楓姫はそれを手で止めた…

と思いきや、矢は空中で縦に増殖し、数本が首や頭に命中した。


それらのほとんどは、刺さって間もなく燃えて消えてしまった。

しかし、ダメージは入っているはずだ。


「…弓、ですか。矢を受けたのは久しぶりです」


楓姫は、杖をアレイに向けた。

「炎法 [フェニックスレート]」

杖の先端から炎が吹き出した。

「[フリーズウォール]!」

アレイは冷気の壁を張って防いだ。

だが、これはちょっと悪手だ。


「冷気…ですか。これは都合がいい」

あっさりと彼女の属性を悟られてしまう。

まあまったく勝ち目がない訳では無いが…

それでも、きつい戦いになるのは間違いない。


「早とちりしないで!私が操る氷は、どんな火でも溶かせないわ!」


「どうでしょうねえ。冷気が熱に弱いのは自然の摂理かと思いますが…あなたにそれを覆す事が出来ますか?」


「…やって見せる!そして、あなたを倒してみせる!」


「左様ですか。では、やってみなさい。炎法 [ヒートブレーク]」


「氷法 [アイスブロック]!」

熱波の波動を氷の塊で防ぐアレイ。

しかし、分が悪い事は誰の目にも明らかだ。


「まずいわ…!」

キャルシィが術を使おうとしたが、無数の鬼火にまとわりつかれて動きを封じられた。


「手出しは無用です。私の目的は…」

ここでリヒセロが風の刃を飛ばし、その腕を斬りつける。

楓姫は斬られた所を見、そしてリヒセロを睨みつけた。

リヒセロの周りを小さな炎が回りだし、リヒセロは炎の渦に閉じ込められた。


「っっ…!!!」


「…私の目的は、あくまでも星羅の妹。あなた方のお相手は、後からいくらでもして差し上げます」

そして、奴はアレイ…ではなく、こちらに手を伸ばしてきた。

「彼女の守り手はもう不要です。

これからは、私達が彼女を守るのですから」

手を避けつつ喋る。

「なに…?」


「私達は、彼女に危害を加えるつもりはない。同胞の妹を、傷つける訳にはいきませんからね」


「傷つけないなら、どうするつもりだ?」

奴は少し考えて、口を開いた。

「そうですね…彼女をここまで連れてきてくれた謝礼として、少しだけ教えてやりましょう。

要するに、彼女には姉と行動を共にしてもらうのですよ」


「そうして、どうするんだ?」


「この大陸の北の果て…世界の分け目に行ってもらうのです。そして、分けられた世界を、一つに繋げてもらうのですよ」

分けられた世界、というのが何かはわからない。

だが、俺はアレイを守るのが役目。

奴が何と言おうと、答えは一つだ。


「そうか。なら、やっぱりアレイは渡せないな」


「そうですか。まあ結構です。始めから素直に渡してくれるとは思っていませんでしたので」

そして、楓姫は右手に炎を浮かべる。


「星羅の妹のついでに、あなたの魂も頂いていきましょう。炎法 [カーズフレイム]」

手をかざして飛ばしてきた炎の先端には、怪しげに笑う人の顔のような模様があった。


「雷法 [エルクボルト]」

電撃を打ち出し、炎を一旦受け止めてかき消した。


「炎法 [ファイアーシンボル]」

奴は、炎をでかい盾の形に整えて浮かべた。

一体何をするつもりだ、と思ったが、すぐにそれは消えた。

一見無駄な行動のように見えるが、今のは恐らく補助系の術だろう。

推測でしかないが、盾の形だった事からすると守りの補助か。


ためしに一つ、技を入れてみる。

「[モータルヴォイド]」


魂を斬ってダメージを与える技。

再生者にも効果があるはずだが、奴はさしたる反応を見せなかった。


(やはり防御を固めたか…)

と、奴は杖に手をかけて言った。


「殺人者ならば、わかりますよね?

欲しくとも手に入らないものがあれば、どうするか」


「ああ…。どんな手を使ってでも手に入れる。それが例え、誰かを傷つける事であろうとも」


「そうですね。という訳で、私もそうして彼女の身柄をもらい受けます。杖技 [スペルデューク]」

また強化の技だ。しかも、今度は攻撃系の。

これは面倒になるかもしれない。なるべくさっさと切り上げよう。


「やってみな」

ビームゲートを撃つと、アレイが矢を射って援護してくれた。


矢は躱されたが、電撃は当たった。

奴は少し痺れながらも、すぐ体勢を立て直してこちらを見つめてくる。


…と思ったら、凄まじい速さで斬りかかってきた。

「[影居抜き]」


聞き覚えのある技名に驚いたので、とっさに攻撃を受け止めつつ、改めて奴の武器を見る。

一見普通の杖だが、これは俗に言う「仕込み杖」。

片刃の剣を、自然な柄の鞘と持ち手で偽装した武器。

つまり、杖というよりは刀に近い。


「[白刃斬り]」

さっきは杖の技を使っていたが、今は刀の技を使っている。

ということは、一つの武器で二種類の武器種の技を使えるのか。


「[斬り裂きクラウン]」

しかも、結構強い技ばかりだ。

やはり、それなりの手慣れであるのだろう。


しかし、そんな事は関係ない。

そして、あまり長く流し続けるのも時間の無駄なので、反撃に転じる。


「[水月斬り]」

蒼い月をイメージして斬る技。

名前に水と入っているが、水ではなく闇属性。


「炎法 [ファイアガード]」

ガードされるのは先刻ご承知だ。

素早く別の技を見舞う。


「[斬瓜破(きりうりわり)乱刀]」

高速で刀を振るい、火の壁をかき消しつつ攻撃する。


「…熱っ!」

そうだ、こいつは火をまとってるんだった。


「馬鹿ですねえ。先程見たはずなのに」

楓姫は嘲笑しつつ、炎を吹き出してきた。

受け流しの構えを取ったが、中途半端なものであったために途中で崩れてしまった。


「ぐあっ!」

胸と顎のあたりに炎を喰らう。

それは火傷どころか、余裕で焼き焦がされそうなほど熱いものだった。


「龍神さん!…[スターアロー]!」

アレイがカウンターで入れた技は、もちろん炎で焼き払われ…ず、見事楓姫の胸を撃ち抜いた。


奴も驚いたような顔をして、胸を押さえた。

「っ…」


「き…効いた…の…?」

弱々しい声を聞いて思い出したが、キャルシィとリヒセロが火に縛られているんだった。

あの二人を早いとこ助けてやらないと。

すっかり忘れていたが、この戦いは、キャルシィがいないと話にならないのだ。


「ふ…うふふふ…」

楓姫は、薄気味悪い笑いをし始めた。


「この力…!やはり、あなたは彼女の血を継ぐ者!

そして、いずれ私達の同胞となる者!」

奴は、変にニヤニヤしながらアレイに杖…もとい刀を向けた。


「あなたになら、私の実の力を見せる価値がありそうです!」


そして、その刀身に強烈な赤い炎が集まっていく。


「この刃の炎撃、受け止めてみなさい!奥義 [大火竜殺刀]!」






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