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黒界異人伝・生命の戦争  〜転生20年後の戦い〜  作者: 明鏡止水
二章・死の炎

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休息

程なくしてニームに到着した。

ミクたちとはこれでお別れか、と思ったのだが、4人は陸に上がりたいと言う。

「え、上がれるのか?」


「ええ。私達は元々短い時間なら陸に上がれるし、水兵さんの力を借りれば、普通に陸に滞在できるのよ」


「そうなのか」

ここで初めて気づいたのだが、陸に上がってきた水守人達の体は、ほとんど人間と大差なかった。

何なら、服まで着ている。

これなら、水兵に近い種族だというのも納得だ。

「そうですよ。だからこそ…えいっ!」

アレイがミクに手をかざすと、ミクの体は淡い水色の球体に包まれた。


「私達水兵と水守人は、こうして定期的に交流したり、互いのエリアを訪れたりしているんです。水兵から見ても、水守人は色々と手助けをしてくれる存在ですから」


「どんな手助けをしてるんだ?」


これに関しては、青い髪をした男の水守人が答えてくれた。

「オレ達は、水兵さんの漁の手伝いをしたり、船とか港の改修を手伝ったりしてるんだ。

いくら水兵さんでも、ものを持って何回も水に出入りするのは疲れるからな」


なるほど、納得のいく話だ。


「そういう事。だから、彼らと私達は切っても切れない関係なの。

さあ、みんな。神殿に行くわよ」

キャルシィに連れられて、俺達は神殿へ向かう。





神殿の入口には、前と同じ二人がいた。

奴らは水守人達の姿を見て、目を見開いた。


「あら、久しぶり」


「お、ルラちゃんとミナウちゃんじゃんか。久しぶりだな」

この二人、そういう名前だったのか。


「クプト?久しぶりね。

…長、おかえりなさいませ。妹様がお待ちです」


「わかってる。リヒセロはどこにいるの?」


「玉座におられるかと」


「わかった。行くわよみんな」




そして玉座の間に到着した。

「…お姉様、おはようございます」

リヒセロは、姉よろしく玉座に座っていた。


「おはよう。早速だけど、いろんな人を連れてきたわ」


「例のお二人と…あら、これはカトーロの皆さん。おはようございます。お久しぶりです」


「カトーロ、ってなんだ?」


「彼らの書き名…要は、名字のようなものです。

水守人は基本的に家族だけで生活するので、グループ…つまり家族の名称には、それぞれ固有の書き名を使うんです」


「へえ。とすると…」

水守人達の方を見る。


「あんたらはカトーロの一族、って訳か?」


「そうだ。オレは長男のクプト。で、こっちが弟のジカロだ」


「私はカノウって言うの。この子は妹のミクよ」


「へえ…親はいないのか?」


「ああ。父さんも母さんも、復活の儀の時に死んじまってな。25年間、ずっとオレとカノウで妹達を支えてきたんだ」


家族を支えて生きる男達…って訳か。

逞しく美しい話だな、全く。


「それでお姉様、その…お母様は…」


「ええ…でも、仕方ないのよ…」

いや、見てたんかい。


「え、妹様は全部見てらしたんですか?」


「はい…夢でお姉様に全て見せてもらいました。

ようやくお母様の顔を見られたと思ったのですが…」

リヒセロは、悲しげな顔をした。

「…そうか。それは…まあ…残念だったな」


「いいのです。昔から、母は既に死んだものと思えと、お姉様に言われておりましたから」

するとキャルシィは、少しだけ明るい顔になった。

「そうよリヒセロ…見たでしょ?母さんは、もう私達の母ではなくなっていた。どの道私達の母は、とうの昔に死んでいたのよ。だから、気にする事はないわ」


「…はい、お姉様」

リヒセロはそうは言ったが、やはりその表情は晴れなかった。


「それよりリヒセロ、頼んでた仕事は終わった?」


「はい、バッチリと」


「あら、ずいぶんと早いわね」


「当然です。お姉様の頼みですし、それに…あのようなものを見せられたら、急ぐものかと」


なるほど、一旦戻ってきた時にリヒセロがいなかったのは、別の所で仕事をさせていたからか。

「なあ、一体何をリヒセロにやらせてたんだ?」


「楓姫の根城を調べてもらってたのよ。結局どこにいるのか謎だったからね」


「!本当か!」


「楓姫は、一体どこにいるんですか!?」


「そこはリヒセロに聞いてくれる?」


「わかりました。リヒセロさん、楓姫の居場所はどこなんですか?」


「マトルアの西に、魂の魔法館と呼ばれる建物があるのですが、そこが奴の拠点であるようです」


「え、マトルアの西?」


「マトルアから、どのくらいの距離なんだ?」


「5キロ程ですね。殺伐とした荒野の中に、一軒だけある建物のようですので、判別は容易かと」


「5キロ…だったら、すぐに行けますね。龍神さん、今日はまずもう寝て、明日乗り込みましょう」


そう言えば、昨日は全く寝ていないんだった。

「そうだな。よし、食べるものは食べて後は寝よう」


「そうね。てか、言われてみればすごい眠くなってきたわ…」

キャルシィはあくびをした。

それを見て、ラニイもあくびをした。


「ふふっ…お姉様。しかし、かくいう私も少々寝不足なので、今日は少しばかり昼寝をさせていただきたいですね。

水守人の皆さんは、ご自由に町を見回って頂いて結構です。夕方には、一旦神殿に戻ってきて下さい」


「はいよ!よしお前ら、行くぞ!」


「あっ、待ってよ兄さん!」


水守人達は、はしゃぎながら外へ消えていった。


「いい家族だな」


「そうね。さあ、食事にしましょう。長、すぐにお作りします」


「いえ、まずは寝ましょう。食事はその後でもいいわ」


「…わかりました。では、おやすみなさい」


「ええ、おやすみ。…夜じゃないけどね」


「ふふっ。では、お先に失礼しますね」


「あ、待って下さいラニイ!」


「…妹様?何でしょう?」


「ティーサさんが、あなたを心配していましたよ。

寝る前に、彼女に一言かけてあげて下さい」


「わかりました。ありがとうございます」

ラニイはそう言って、自分の部屋に戻っていった。



「さて、俺達も寝るか」


「そうですね。あ、私達は前と同じ部屋を使っていいんですよね?」


「ええ。しっかり休んでちょうだい」





そして、前と同じ部屋のベッドに潜った。

アレイはさっきまであんなに元気だったが、ベッドに入るとあっという間に寝てしまった。

俺は…相変わらず寝付きが悪かったが、それでも普段と比べれば圧倒的に早く寝付けた。

体が寝たがっていたのだろうか。




そして、夜が明けた…!


世界観・水神殿

水兵の町に存在する巨大な施設。外見が神殿のようであることからその名がついているが、祭祀施設ではなく町の水兵の長の住居として使われている。

その大きさもさながら、町を見渡せる所に築かれている事が多く、丘陵や台地にポツンと存在しているためとても目立つ。

内部は非常に広大でたくさんの部屋があり、長の客人はここに呼ばれる。

その性質上、実質的には水兵長の城であるとも言える。


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