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黒界異人伝・生命の戦争  〜転生20年後の戦い〜  作者: 明鏡止水
二章・死の炎

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海姫

アーチの奥には緩やかな斜面…

谷があった。

「こっちです」


アレイに手を引かれ、谷を降りてゆく。



谷を降りる途中、至る所で岩肌にぽっかり空いた穴やドーム状になったサンゴを見かけた。

おそらく、あの1つ1つに海姫達が住んでいるのだろう。


と、のんびり海底見学してるうちに、アレイが動きを止めた。

「着きましたよ…

ここが、海姫の集落です」


そこは、デカい貝殻を利用した建物らしきものや、サンゴ礁を改造して作ったらしい広場?などが点在する場所だった。

そのあちこちで、魚や海姫が泳いでいるのが見られる。

まさしく海の異人の都市、って感じだ。

「どうかしました?」


「いや、結構しっかりした集落だな…って思ってな」


「あら、海人はみんな、立派な集落を作るものですよ?」


「そうなのか?」


「海人は、あくまでも海に住んでいるというだけで立派な異人の仲間ですからね。陸の異人と同様に、独自の思考と美学に基づいた集落があって当然でしょう?」


「…まあ、それはそうか。

で、さっきの奴はどこにいったんだ?」


「おそらく、王宮へ行ったのかと」


「王宮なんてあるのか」


「見えますよね?あの、一番大きな建物ですよ」


アレイが指差す先に、立派な城があった。

基本は白地の岩で作られ、細部のデザインや装飾に珊瑚や貝殻が使われている。

どことなくワ○ピースに出てきた某海底の城に似てるような気がする。


城門の兵士達はアレイの姿を見て敬礼し、俺の姿を見て驚いていた。

そして、アレイが門を開けるよう頼むとあっさり開けてくれた。


城に入るなり、アレイは迷う事なく奥へ進んでいく。

ここの城主と親しいのだろうか。

そして…




「何者です?…おや、あなたは」

数人の兵士に守られながら、城主がやってきた。


「お久しぶりです、ヨレム女王陛下。

入口アーチの前で兵士に置き去りにされてしまったので、勝手ながら独断で参りました」


「お久しぶりですね、アレイさん。

そう言う事でしたか。それは失礼いたしました。

ところで、そちらの方は陸の異人ですね?」


「はい。彼は、今私と旅をしている陸の異人です。

名は冥月龍神といいます。種族は…」


「言わなくともわかります。殺人鬼、ですね?」

女王はきっぱりと言った。


「はい…。ですが、彼に悪意はありません。彼は、これまで何度も私を助けてくれました。ここの人々にも、手は出さないでしょう。私が保証します」


「そうですか。アレイさんがそうおっしゃるのなら、信じる他ありませんね」

女王さんは俺の方に近づいてきて、顔をまじまじと見てきた。


「…いかがされたので?」


「大した事ではありません。ただ、わたくしは生きた殺人鬼を見るのは数百年ぶりですゆえ…」


「俺も生きた海人を見るのは初めてですよ、っと」

この世界の海には、海人と呼ばれる異人の一派が存在する。そしてその一部の種族は、人間界で言う所のイルカのように、船に並んで泳ぐ事がある―

ずっと昔、どっかの酒場でそんな話を聞いた。


それからこれもずっと昔の話だが、博物館で海人の標本を見たことがある。

なので海人という異人の存在自体は知っていたが、見たことはなかった。


「それはおかしいですね。水兵も海人なのですが」


「あっ…それはそうだ。失礼」

そうですよ、私も立派な海人ですよ…とアレイがむくれた。


「それで、あなたはここに何の用があって来たのです?」


「ひとつ、情報を貰いたくて来た。

俺達はちょっと訳があって、ディープライン号という船を探している。で、ここの海姫達なら、その船を呼び出すのに必要なモノの事を知ってるって聞いたんだが?」


「ええ、知っておりますとも」


「なら、教えてくれないか?」

ダメ元で聞いてみた。


「いいですよ。せっかく来て下さったのですし」


いや、いいんかい。


「え、いいのか?」


「ええ。かの船を探しているということは、大方八大再生者楓姫を打ち倒すのが目的なのでしょうから」

なぜそこまでわかるんだこいつは…。


「それは…確かにそうだ。

けど、なんでそんなのがわかる?」


「あの船は、生の始祖に敗れた楓姫が今際の際に残した呪いの産物…。

あの船を探すこと、それすなわち楓姫の呪いに近づくこと。冒険者や人間ならともかく、殺人鬼が…それも海人を正当な方法で味方につけた者が、自らそのような事をするからには、相応の理由と覚悟があるのでしょう。

そして、そのような(こころざし)を持つ者を見た以上、我々にも協力する義務があります」


「そうか…てか、楓姫の呪い、って何だ?」


「楓姫は生の始祖に倒された。そして彼女は、生の始祖を強く恨みました。

そしてあの船を作り出し、生の始祖に協力した者に呪いをかけて船に縛り付け、永遠に彷徨う亡霊のような存在にしたのです」


「自分を倒した腹いせに…ってわけか」

逆恨み以外の何物でもないが、まあいかにも悪役って感じの所業だな。

しかし、そうなると面倒だ。

幽霊船が、それそのものが楓姫の呪いの塊という事は、おそらく船に乗っている奴らは呪霊。


呪霊とは、どこぞの漫画に出てきたアレ…ではなく、邪悪な者の呪いで生み出された強力なアンデッドで、霊騎士や陰陽師でもなければ殺す事はできない。

奴らを倒すには奴らに呪いをかけた張本人を殺すか、これは全部に効く方法ではないが、生前呪霊自身にとって最も大切な存在だった者の記憶を思い出させて成仏させねばならない。

要は、倒すにしてもえらく時間と手間がかかる厄介な存在なのだ。


「となると、なかなか辛い戦いになりそうですね…」

アレイがそう言った。


「そうだな、だがそんなのは承知の上だ。

今の目的は、あくまでも楓姫を倒すことだ…」

と、ここで肝心な事を知らない事に気づいた。


「結局、幽霊船には何の秘密が眠っているんだ?

そりゃあ楓姫に関する事ではあるんだろうが…」


すると、女王は急に表情が暗くなった。

「…申し訳ありませんが、それはわたくしの口からお話する事はできません。

知りたいのなら、ご自身の目で見てくるとよいでしょう」


そして、女王はようやくモノの話をしてくれた。


「ここより北の海底に、一隻の沈没船があります。

その中に眠る、白く丸い小さな石。

それこそが、カランの涙石。ディープライン号に乗船するための、片道切符です…」


「涙石…ねぇ」


「涙石…ですか。きっと、さぞや悲しい事があったのでしょうね」

俺は涙石なるものを知らなかったが、アレイは知っているのだろうか。


「その石を手に入れれば、幽霊船に乗れるんだな?」


「ええ。しかし、すぐに来る訳ではありませんよ。

あの船は、夜明けあるいは夕暮れにしか現れません。

ですので、石を手に入れたら一度ここへ戻ってくるとよいでしょう。…部屋をご用意しておきますので」


「ありがとうございます。北の海底ですね?」


「はい。どうか、お気をつけて」


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