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モブ王子、悪役令嬢に転生した少女をフォローする  作者: 豆もち。
モブ王子、悪役令嬢に出会う
9/15

3




「お嬢様ぁーっ!

聞いて参りました! 」

「そう。それでいつ頃に? 」

「今のところ予定はないそうです。

ただ、公式発表されてから始まる王室教育を前倒しするなら、お会い出来る可能性が高まります」



 なるほど。その手があったか。

でも今から勉強なんてしたくないわ。



「私から訪ねるのはダメかしら」

「まだ公表されておりませんので、お控えになった方が…」

「そうよね、ダメよね」

「はい。

ですが、お嬢様。アカデミーではイケナイのでしょうか? 」

「アカデミー? 」

「もし、あまり聞かれたくない内容であれば、致し方ありませんが、お会いするだけならアカデミーでいつでも会えるのでは? 」



 私はバカか。そりゃそうだ。

 もうすぐアカデミーに通うんじゃん。

同級生で、きっとクラスも一緒。 

 なぁ~んだー。そこで問い詰めれば良いだけかー!

 ナイスよ、エマ!



「すっかり忘れてたわ。

ありがとう、エマ」

「お役に立てて光栄です。お嬢様」




 楽しみだわ、アカデミー。

 何でも話せる友達が出来たら嬉しいな。




 その時、私は気づいていなかった。

自分が既に権力を振りかざしまくった悪役令嬢だという事を。

 つまりどういう事か。それは非常に単純明快だ。






「ごきげんよう、レティア様。

同じクラスになれて嬉しいですわぁ」

「レティア様、お父様が異国のお菓子を買って下さいましたの。

宜しければ、いかがですか? 」

「レティア様。この間のお茶会は、とても素晴らしかったですわ。

やはり殿下の婚約者に相応しいのは、レティア様以外におりませんわっ! 」




 友達作るどころか、入学初日に取り巻きに固められとる!

 他の生徒は視線を送っても、微笑むか視線を逸らすだけ。

決して話しかけてはくれない。


 マズイわ。この子達と一緒に居れば、私の悪役令嬢への道のりがショートカットされてしまう。

 出来れば真逆の、深窓の令嬢になりたい。

 地味な子を味方につけましょう。

とりあえず、1人で本を読んでいる彼女から…。



「あら、いったいどんな本を読んでますの? 」

「へっ?! あっヴォストラ家のっ。

とっとくに楽しいものではありませんー!! 」

「えっちょっと、まっ」



 制止も虚しく、逃げる様に走り去られたんですけど?!

 授業はこれからよ? 先生もうすぐ来るわよ!?

これじゃ、私が虐めたみたいじゃない!



「まあっ! なんて無礼な方なのかしら!

レティア様がお声をかけて差し上げたのに」

「本当ですわ! レティア様、あの者に何かご用事が? 」



 やめて、無礼とか大声で言わないでっ。

余計に遠巻きにされちゃうからっっ。うゔっ。



「違うのよ。私が急に話しかけてしまったから、驚かれたんだわ。

責めないであげて」

「なんてお優しいっ」

「さすがレティア様です」



ーーコソコソ

「彼女って、あんな人だったかしら? 」

「気まぐれじゃない? 」

「そろそろ殿下がいらっしゃるから、良い子ぶってるのよ」

「今日も堂々とされてますわね、さすが公女ですわ」

「王太子殿下との婚約の噂、本当かしら」

「彼女が筆頭候補なんだから、たぶんそうよ」



 耳が痛い。全部聞こえてるわよ、クラスメイトの皆さん。

 いっそヒロインの如く、聖母の様な振る舞いを心がけようかしら。

手始めに慈善事業でもしてみる?

 別に、人気取りの為とか罵られても構わない。だってその通りだから!

それに12の子供が出来る活動なんて、限られてるわ。

 いくら文句を言われたところで、貴方達に真似出来ますか?って事よ。

私なら、掃除も子供のお世話もへっちゃらよ!

 よし、家に帰ったらお父様にねだろう。



ーーザワッ



「おはよう、ヴォストラ嬢」



 げっ、王子。



「ごきげんよう、殿下」

「やっぱり同じクラスになったね」

「ええ、嬉しいですわ」

「これから、一緒に頑張ろう」

「はい。ご一緒に学べて感激です」



 ふっ。驚くほど口から出まかせがスラスラ出てくるわ。

偉いぞ、私!



「まあっ、殿下からお声をかけられましたわ」

「さすが公爵家」

「ご婚約の噂はまさか本当なのでは? 」



 だから全部聞こえてるんだって。

逆に王子の前でよくコソコソ話せるわね。



 教師が入ってくると、さっきまでの喧騒が嘘の様に静かになった。

 各々好きな席に座ったのだけど、どういう事だ?

何故、彼は私の隣に座っているの?

しかも隣に座っていた取り巻きに席を譲らせてまで。


 やはりバレてるのか!

 私がボロを出さないか、監視する気ね!

そうはいかないんだからっ。


 チラッと横を向けば、ニッコリ微笑まれた。

くそぅ、無駄に顔が良いんだからっ。








◇◆◇◆◇◆◇◆




「おう、アベルト。

何してんだ? 」

「ヴォルフ兄様。ん~、先生からの宿題も全部終わって暇だなぁって」

「なら俺と一緒に授業受けるか? 」

「ヴォルフ兄様と?

でも、そんな事したらアデリシア様に怒られないかな」



 中庭のブランコで遊んでいると、通りかかった第3王子のヴォルフ兄様が声をかけてくれた。

 お母様と違って、第2側室のアデリシア様は、僕を避けている。

まあ第1側室のマリアンヌ様より、良いけど。あの方は僕が嫌いだから。



「ちょっとぐらいバレないだろ。

どうだ? 今日は帝王学と経済学なんだが」

「僕、どっちも習ってないよ」

「お前にはまだ難しいだろうけど、聞いてみないと分からないだろ?

それにわざと、授業から外してるだろ」

「何の事?

僕は難しい勉強をしたくないから、受けてないだけだよ」

()()()()()にってか。

お前も健気だよな」



 11歳のヴォルフ兄様は、兄様に負けず劣らず頭がキレる。

 本人は担がれるのが嫌なのか、少しダラシないフリをしているみたいだけど。



「そんなんじゃないよ。僕は本当に勉強が嫌なだけ。

期待されるのも嫌だ」

「イイよな、アベルトは。何したって陛下に許されるんだから」

「…だと良いけど」



 ヴォルフ兄様は誰に対しても平等に接してくれる、珍しい王族の1人だ。

 嫌だと思う事はハッキリ言うし、僕の陰口に同意を求められても、事実と違ったら否定してくれる。

かと言って、味方でもないけどね。



「で、どうする」

「やめとくよ。そろそろ兄様も帰って来るし」

「ああ。今日からアカデミーだったな。

まるでカルロの忠犬だ」

「兄様に聞きたい事があるだけだよ」

「聞きたい事? 」

「うん。最近()()()()()が出来たんだ」

「へえ、ずいぶん楽しそうだな」

「えへへ。そうなんだ!

すごく面白い人を見つけたの、だから()()()()()()ね」

「はいはい、分かった。母上にもロランにも黙っといてやる」

「ありがとう、ヴォルフ兄様」

「おう、じゃあな」



 良い人なんだけどなー。

何で兄様は、ヴォルフ兄様を邪険にしてるんだろう。

…いや、違うな。ヴォルフ兄様だけっていうより、皆んなか。

 兄様って外面があんなに良いのに、排他的なんだよなー。ちょっと心配。





「アベルト、今帰ったよ」



 あ、兄様だ!



「おかえりなさいっ!

どうだった? ヴォストラ嬢はっ」

「うん。帰って早々、彼女の話なんだ。

兄様は少し悲しいよ」



 笑顔で出迎えると、癖の様に伸ばされた右手が頭を撫でる前に下された。

 あれ。いつもみたいに撫でないの?



「それで、どうだったの? 」

「…どうもないよ。取り巻きの令嬢達に囲まれてた。特に変わった事はないかな」

「えー、そうなの? 」



 てっきり何らかのアクションがあると思ったんだけどなー。



「ああ。気にし過ぎだよ」

「ちぇっ、つまんないの」

「こら、アベルト。そんな言葉、誰から習ったんだ。やめなさい」



 うう、兄様は僕にデレデレだけど、礼儀作法に厳しい。



「僕まだ8歳だよ。それにヴォルフ兄様はもっと口が悪いでしょ! 」

「普通の子供と私達は違う。王族は常に民の見本でないとならない。

アレの事は、比較するまでもない。

あんな素行の悪い奴に近付くな」



 真面目過ぎるよ、兄様。

そんなんじゃ友達出来ないよ?

まあ、僕も同年代の友達いないけど…ぐすっ。



 もう1回会えないかな。ヴォストラ嬢に。





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