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モブ王子、悪役令嬢に転生した少女をフォローする  作者: 豆もち。
モブ王子、悪役令嬢に出会う
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3



◇◆◇◆◇◆◇◆



 目覚めてから数日、とにかく使用人達との距離を縮める事に専念した。

 はじめは、ビビられまくったし、すごい疑われたけど、何人かは笑顔を見せてくれる様になった。

まぁ、それでもビクビクしてるんだけどね。


 大人にこんなに怖がられる12歳児って…アンタ何したのよ、レティア。


 施されるのが当然、褒め称えられるのが当然ーーな、レティアが急にしおらしくなり、お礼まで言う様になったせいか、重病説や記憶喪失、悪魔つきまで使用人達の間で噂になったらしい。

 公爵と夫人(もとい)、お父様お母様は「今日も変わらず天使の様に可愛い」などと、本気でほざいている。

ーーが、兄のハルソフはそうではなかった。

 なんなら1番、悪魔つき説を信じているのは彼かもしれない。

すごい気味悪がってるもの。失礼しちゃうわ。


 しかし、順調に進めていると思った矢先、破滅への道の元凶その1がやって来た。



「お父様、今何と? 」

「レティアもずいぶん元気になっただろう? だから、そろそろ殿下の訪問をお受けしようと思うんだ。

嬉しいだろう? 殿下がお見舞いに来て下さるんだぞ! 明日」

「あら、なんだか眩暈が…(な~にしてくれてんだ、バカ親父ー!!) 」

「まあっ、レティアったらそんなに喜んで。うふふ、お受けして良かったですわね、あなた」

「ああ。こんなに喜ぶなら、もっと早くしても良かったかもしれんな。ハッハッハ」



 違う。全っっ然違う。

 もうやだ、この両親。頭お花畑じゃない。



「あなた、準備は進んでますの?

あと、レティア。明日はそうね、少し具合が悪い様に装いなさい。

今の様にたくさん、物を食べてはダメよ。

あくまで、病み上がりの可憐な令嬢になるの。良いわね? 」



 前言撤回するわ。頭お花畑じゃなかった。



「お母様…」

「返事は? レティア」

「はい、お母様」

「よろしい。ハルソフ、お前も殿下のお相手をなさい。次期当主である貴方が気に入られれば、この婚約もより強固になるわ。分かっているわね」

「もちろんです。お母様」



 いや、ハルソフよ。まだ15でしょ。

そんなんで良いのか、アンタの人生。

青春1mmもないよ? 後悔するよ、30代に入ったら。

 私は後悔したわ。もっと遊べば良かったって。29歳ですでに。ぐすっ。


 どこで間違ったのかしら。

 小中高と無難に地元の学校に通い、大学は都心に出て工学部 情報工学科へ。

ちょうどIT系が頭角を現し始めたタイミングだったから、難なく就職。

 入社3年目では、チームリーダーも任された。

 順風満帆のはずだったのよ。なのに…。

どうして私は仕事一筋になっちゃったのよー!!

そりゃあね、楽しかったわよ?

任される仕事も増えるし、部下も育っていくし。

 でもね、27になると軒並み周囲の友人が結婚したり、婚約し始めたの。

ええ、私は彼氏さえいなかったわよ。

 26のクリスマスにフラれたからねっ!

 何でよりによって、クリスマスにバグが起きるのよ、システムエラーって何よ。

緊急案件で残業を余儀なくさせられ、彼氏の家に着いたのは26日の朝。

 今まで残業でブッチした事は何回もあったけど、クリスマスはないわって静かにフラれた。

 分かってる。酷い彼女だと思う。

 気合いを入れて飾り付けされた部屋とテーブルの上に並ぶ、乾いたチキンとホールケーキ。

まずケーキ出しっぱだったから、暖房で生クリーム溶けてたわ。

冷蔵庫入れろよと思ったけど、ムリだった。

すんごい沈んでるんだもん。

 私には勿体ない彼氏だったわ。幸せになってくれっ!と別れ際願ったもんよ……。


 まあ、2年後に結婚したけどね。

可愛い家庭的な奥さんと。

しかも人伝じゃなく、本人から聞いた。

「結婚するんだけど、結婚式来る?

ほら、よく出会いの場って言うだろ。

ちゃんと良い人いるのか?」

 いやね、それ元カレのセリフじゃなくね?

アンタは私の父親か何かか!?

 仕事だ!って電話ブチ切ってやったわ。


 29歳を迎えた今年、ついに可愛がってた後輩にまで先を越され。

上司には「まだか」「紹介するか」と言われる始末。

 29で未婚の女なんて、世の中にごまんといますから!普通ですから!

むしろ周りが早いんですぅ。


 ああ、振り返ってみれば私の人生仕事だけ。趣味だって、動作のテストを兼ねて始めた乙女ゲームと1人晩酌。

全て1人で完結する事ばかり。

 乙ゲーだって、半分仕事みたいなもんだし…せめて学生時代にハッチャケとけば良かった。

 何もない。私の人生、平坦すぎて山も谷もない。

それは認めよう。


 だからって飛躍しすぎです神様ー!!

 私がつまらなすぎたせいですかっ。

何故、突っ込んだら負けみたいな頭の沸いたゲームに転生させるんですかぁ!

しかも悪役で!

 いっそ全部ツッコンだろか?

 ヒロイン顔だけだろ、王子オツム弱いんか、爵位を継げない次男坊三男坊のくせに、偉そうなんじゃ、ボケェ!


 

…言いすぎました、神様。

 ですからどうか再度転生させて下さい。

平凡最高。つまらない人生最高!



「ーーィア、レティア。どうかしたのか」

「あっ、いえ。何でもありませんわ、お父様」

「あらあら。きっと殿下にお会いするのが楽しみで、緊張しているのね」

「え? あ、うふ、うふふ」



 楽しみで緊張するって何ですか、夫人。

 破談にしたい。破談にしたいけど、なったらなったで、夫人の反応が恐い。

 破滅フラグへし折った瞬間に人生終わったらどうしよう。

 チラッと顔色を窺うと、ニッコリ微笑み返された。



「なぁに、レティア。

ああそうだわ。後でマナーのおさらいをしましょうね。

貴方はとても優秀なレディだけど、万が一の為に、ね? 」

「はっはい、お母様! 」



 ヒィッ、殺される!

しくじったら()られる。

 ゆっくり、徐々に殿下には退場頂こう。

先にお母様を何とかしなきゃイケナイわっ。



「旦那様、お食事中失礼致します。

王室より知らせが参りましたので、急ぎご確認を」

「ほう。

ーーなになに、ふむ。これはこれは」

「あなた、何と書いてあるのです? 」

「ああ。カルロ殿下と共にアベルト殿下も来られるらしい。

少し明日の席を変更しなければならないな」



 何ですと?!



「…まあ、カルロ殿下はずいぶん弟君(おとうとぎみ)に優しくてらっしゃるのね」

「こら、不敬だぞ」

「でもそうでなくって?

末の王子は賎民の血が流れた子供ではありませんか。まして、その母親にさえ捨てられたんですのよ?

アレが我がヴォストラ家の縁者になるだなんて……おぞましい」



 酷い。ちゃんと王様の血を分けた王子なのに。

それに陛下と王妃様に1番可愛がられてるって噂でしょう?

そんな人を悪く言うだなんて。



「陛下の不興を買いたいのか。

今のは聞かなかった事にする。どこに人の目があるか分からん。

決して外で話すでないぞ」

「ふんっ、分かってますわ。

ああ嫌だ嫌だ。せっかく楽しみでしたのに、興が削がれました」



 そうか。

だからお茶会の時、ハルソフはあんな態度をアベルト殿下に取ったんだわ。

お母様の考え方がそうさせたんだ!

(レティア)も危なかったんじゃない? この感じだと。

 バカね、ゲームでも第1王子のブラコンぶりは有名なのに。

だけど、そんな背景があったなんて知らなかった。やっぱり、本当にゲームの世界に転生してしまったのね。


 あ゛ー!

 何であの時、補強工事中のビルの前通ったかな~。

私のバカーっ!!


 



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