プロローグ
週一投稿目指して頑張ります
彼女は優しい少女だった。
困っている人には手を差し伸べ、泣いている子には笑いかける優しい少女。
同じく優しい母親と、家族を大切にする父親に育てられた。
小さな村だが友達は多く、幸せそうに暮らしていた。
けれど突然、少女の両親は消えてしまった。
村の人達は少女に何があったのか聞くが、彼女は泣いてばかりで何も話さない。
「両親とその子供が森に入っていくのを見た。けど戻ってきたのは子供だけ」
「前の日まで、3人仲良く暮らしていたのに。可哀想」
「きっとショックで何があったのか話せないんだわ」
「私たちが彼女のめんどうをみてあげよう」
だが優しかった村人は突然、態度を変えた。
「血まみれになった服が森で見つかったらしい」
「服からして彼女の両親のものだ。森のバケモノに襲われたんだろう」
「じゃあどうして少女だけ森から帰って来られたのだろう」
「きっと本物の彼女はバケモノに殺されているんだ。」
「今の少女は人間の皮をかぶったバケモノだ」
少女が話しかけても、周りは離れていく。
少女が笑いかけても、周りは恐れる。
少女は一人ぼっちになってしまった。
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満月の夜だった。
少女は両親を思って眠れない夜が続いていた。
すると、ドアをノックする音が聞こえた。
久しぶりに訪ねてくる人に心を躍らせつつも、少しの恐怖心からゆっくりと扉を開ける。
そこに居たのは真っ黒な髪に青い瞳の青年。
さらに、黒い衣服に身を包んだ彼は吸い込まれそうな闇のように感じた。
見ず知らずの青年に少女は思わず息を呑む。
「はじめまして。君がエリカかな?」
青年の優しい声に小さく頷くと、彼は少女の目線に合わせて背をかがめた。
これが青年なりの、怯えさせないようにするための対処なのだろう。
「僕の名前はジフ。今日から君と暮らす友達です。」
「…友達…?」
これは優しいバケモノと人間の話。




