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漫才の台本

漫才「高校野球」

作者: 沢山書世
掲載日:2019/07/22

漫才六作目です。どうぞよろしくお願いいたします。

 野球のグラウンド、ベンチの前で生徒が泣きながらシューズバッグに砂を詰めている。監督が近寄ってきて、

「やめておけ」

「グラウンドは僕の青春の場所なんです。思い出を手元に残しておきたいんです」

「ここは甲子園じゃないんだぞ」

「解っています。ここは市営球場で、僕達は地区予選で敗退しました」

「そう、一回戦をコールド負けでな。でも、次また頑張ればいいじゃないか」

「僕は3年生なんですよ。もう高校野球とはお別れなんです。あーあ、とうとう一勝も出来なかったなあ」

「三年間全敗。みごとなもんだ」

「一勝だけでもしたかったなあ」

「諦めるのは早い。まだチャンスはあるぞ」

「え? 敗者復活戦でもあるんですか?」

「残念ながらそれはない。公式戦はもう終わりだ」

「やっぱり」

「でもな、公式戦だけが野球じゃないんだぞ。練習試合があるじゃないか」

「おお、その手がありましたね」

「君たちになんとか勝たせてやりたい」

「それは僕たちの方から監督に言いっておきたい台詞でもあります」

「自慢じゃないが、監督に就任してから六年間、勝ち星なしだものなあ」

「以前はうちの学校も勝率五割くらいはあったらしいです」

「俺が監督に就任してからチームが変わったと言われている」

「訳の分からないサインを出して、チャンスを台無しにしてきましたからね」

「すまん。お詫びとして、勝てそうな相手を見つけ出して来るからさ」

「本当ですか? でも、近隣の学校は強豪ばかり、もううちなんかを相手にしてくれないと思いますよ」

「周辺の中学校を当ってみるよ」

「いやですよ。もしも負けたらかっこがつきません」

「じゃあ、県外に出向くか」

「交通費がかかります」

「それは部費で賄えるさ」

「いいんですか?」

「心配はない。予算はたっぷりあるんだ。なにせ甲子園に行くことを前提に計算して貰っているんだからな。いつも一回戦負けだったからそれが六年分残っている」

「そいつはすごい。でも、もう一つ課題が」

「なんだ、言ってみろ」

「うちが勝てそうな相手とやりたいんです」

「念のため、予選をコールド負けしたチームにしか声はかけないようにしよう」

「なるほど。それだったらうちと一緒で時間は有り余っていますしね。暇だからという理由だけで引き受けてくれるチームがあるかもしれません」

「弱いチームは勝ちに飢えているものだからな。勝てそうな相手であれば、食いついてくる確率が高い」

「逆も考えられませんか? これ以上負け試合を増やしたくはないという理由で、対戦を断られたらどうします?」

「だったらアポなしで行くことにするか。土曜日の午後だったら狙い目だろう。たいていの野球部は活動しているはずだ。スイカでも手土産に持って行けば、向こうだって無下には断れないだろう」

「弱いチームに不意打ちを食らわせれば、互角に戦えるかもしれませんね」

「そうだな。だから今日のところは砂を拾うのはやめておけ。勝利をこの手に収めてからにしよう」

「はい! あっ、五百円見つけた」

「なに?」

「やった、二つもあった」

「本当かよ」

 監督もしゃがんで砂を集め始める。

「五百円はおおきいですよ」

「そうだよな、ラーメンが食えるものな」

 監督が指で地面に線を引く。

「こっち側は俺の縄張りだからな。お前はそっち側で探せよ、こっちに入ってくるなよな」

「監督こそ」


読んでいただき、どうもありがとうございました。

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