セイバーズとBBQ①
凄惨な事件があったその日の夕方。
ロアはバッドエンズを離れ、セイバーズの集まりに参加していた。
もともと参加予定ではあったのだけれどもまぁ、バッドエンズに居たら思い出しちゃうからね。
ボスが絡んでくるから。
もちろんこっちには近藤もいるのだが、下手に刺激してこない分いくらかマシである。
そっとしておいてほしいのだ。
ロアには心を癒す時間が必要だからね。
ちなみに今セイバーズのメンバーが何をしているのかというと、それぞれバーベキューの準備をしている。
平和だね。
近藤はひたすら火をおこしているし、楠木は食材の下ごしらえ。
橋本は楠木の手伝いをしている。
斎藤と速川は食器やテーブルの準備をしていた。
ロア?
ロアは隅っこで、体育座りをしているよ。
膝に顔を埋めながらどんよりした空気をかもしだしている。
斎藤と速川が声をかけようとして近藤に
「そっとしておいてやってくれないか。」
と、言われていたのはついさっきの事だ。
ーーーーー
そして肉が焼けてきた頃
ロアは無心でキャベツを齧っていた。
別に肉が嫌いなわけではない。
むしろ好きだ。
嫌いなのは生魚くらいである。
けれど何故かキャベツのみをずっと齧っている。
おそらく精神がまだ回復してないのだろう。
その時
「ローア!なにしてんのさ、肉も食べなよほら!」
そう話しかけてきたのは斎藤だった。
その手には二本のフランクフルト。
それもサイズ違いの。
おや?
「え……、カズ先輩?」
「ほらほら、どっちがいい?大きなウインナー?それとも普通サイズのウインナー?」
そう聞く斎藤の顔はとても良い笑顔だ。
そこでロアは気が付く。
コイツ、わかってやってやがると。
そう一部始終を見ていた小さな影とは斎藤のことだった。
この間のこともあり、いいネタを掴んだとワクワクしていたようだ。
うわー。
ロアも一応女の子なのにね。
その事に気がついたロアの顔はみるみる青ざめていく。
見られていた。
ガッツリいじる気まんまんだと。
それに何より思い出されるあの絶望感と生々しい感触。
そんなロアを見ていた速川も近寄ってくる。
「どうしたー?顔色悪いじゃん?」
「だいじょうぶぅ?」
純粋にロアの事を心配してくれている速川と違い、声が震えている斎藤。
笑いをこらえてやがる。