バッドエンズin会議室⑤
「あ、あの……、ボス?」
自分の取り皿をボスに持たれていることに困惑している須藤が声をかける。
「んー?須藤には俺様直々に取り分けてやろう。」
それに対してボスは何のことも無いように答える。
少し楽しそうに。
「……っ!ありがとうございます!!」
そんなボスに感激したようにお礼を述べる須藤。
その姿をロアはニヤニヤ見つめていた。
「あ、寺ちゃん達のは自分が取り分けてあげるっすよ。」
そう言って取り皿を渡してくれと手を差し出す。
「え……。」
「私は遠慮しますよ。」
寺沢も蛛井も芳しくない返事をする。
「なんでっすか?」
きょとん顔で聞くロアだが、それはそうだろう。
さっきの今でロアに任せるのはどう考えてもダメである。
そんなことはロアもわかっているため、しつこく言うことはしなかった。
もう各々食べ始めているしね。
食べ始めているのだが如何せん量が多い。
皿の料理が一向に減っていなかった。
まぁこれもロアの計算のうちなのだが……。
メンバーが食事を始めてから少しした頃、ロアは動きだす。
飲み物の時のターゲットは寺沢と蛛井であったが、今回は須藤と蜂須賀、それに長代だ。
「シン先輩!まだまだおかわりいるっすよね?取ってあげるっすよ!」
そう言ってロアは長代の取り皿に、わんこそばのように追加の料理を盛っていく。
長代は全然嬉しそうではないが、そんなこと知ったことではない。
ちなみに山盛り五皿目だ。
さすがにそこまで大きくない取り皿でも山盛り五皿はきつい。
たとえ食べ盛りと言われる年齢でも、だ。
それを蜂須賀にもしている。
蜂須賀は四皿目だ。
だいぶ苦しそうにしている。
さっぱりとした酢の物とはいえ、南蛮揚げや酢豚などの油の多いもの、あんかけ焼きそばのようにガッツリ炭水化物もあるのでお腹にたまる。
地獄である。
須藤は須藤でボスに同じことをされている。
そりゃあ断れるはずがない。
しかし実はボスとロアは打ち合わせ等はしていない。
一応事前にイタズラを仕掛ける了承だけは取ったものの、何をするかまでは種明かししていなかったのだ。
さっすがボスファインプレーだ。
さすがのロアも三人同時には、骨が折れたであろうから。
その三人はもうさっきから無言である。
「ねぇロア〜、ぼくもうおなかいっぱいだよぅ〜
。」
「俺も……だ。」
「え?ちょっとよく聞こえないっすね。」
二人の声は都合よく聞こえないふりをする。
「……せめてのみものほしいよー。」
それはそうだ。
蜂須賀に渡されていたのはハチミツの原液。
料理を流し込むことも出来なければ、喉を潤すこともできない。
「あ、はい。どぞっす。」
その言葉にロアがコトリとテーブルに置いたのは、なみなみと注がれたハチミツだった。
地獄は終わらないよ!!!!
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