少年の願い事
「僕に用って何?」
中央広場の噴水に腰掛け、テイに今し方貰ったばかりの菓子を頬ばる。
「リツカお姉さんと君との関係をしりたくてね。」
「関係?」
「そ。花屋で働きだす前を聞くと、みんな君と歩いているのを見たって言うんだ。だけど、その話しか聞かないんだ。なんか不思議だよね?」
テイは少年の横に座りながら優しく問いかける。
「ん~・・・。何で知りたいの?お兄さん何者?悪い人?」
「いい人だよー。さっきの街を守っている人達のお友達だよ。」
「ふ~ん。だから強いんだね。さっきかっこよかった。」
ありがとうと言いながらテイは少年の頭をポンポンする。
「・・・リツカお姉さんは僕が呼んだんだよ。」
「呼んだ?」
「僕ね。昔シェリーに助けて貰ったことがあるんだ。ずーっと恩返しがしたくて悩んでいたの。まだ子どもだから出来ることも限られるし。シェリーはお礼なんてしなくていいって言うし。だからお願いをしたんだよ。」
「お願い?」
「お兄さんお願い事したことないの?みんなするよね?僕、シェリーにちゃんと笑って欲しかったんだ。ずーっと笑っているようで目は笑ってなくて。で、花屋には沢山の色があるでしょ?だから。」
「・・・だから。って何が?」
「え?だからあ、花屋さんだから色々な花のいろがあるでしょ?だけどシェリーの花屋には黒い花はないから、黒い花をプレゼントしたら喜ぶと思ったんだよ。分かる?」
少年は心底呆れた顔をしながら、さも当然のように言い放った。
「ち、ちょっと待ってね。プレゼントしようと思ったのは分かった。で、どこでリツカお姉さんと出会ったの?そもそも花じゃないよね。」
「えー。お兄さん頭悪いー。さっき言ったじゃん。呼んだって。王国には黒い花は咲いてないでしょ?だから女神様に頼んだんだよ。黒い花を呼び寄せてって。」
「・・・」
「呼び寄せたら、黒髪の女の人が出てきてちょっとビックリしたけど、綺麗だし花みたいなもんでしょ?だからきっとシェリーも喜ぶと思ったんだ。実際とても喜んでくれたし、短い間だったけどシェリーは見違えるほど元気になったよ。」
「そっかー。・・・ごめんね。リツカお姉さんはどこから出てきたの?お兄さんに分かるように教えてくれる?」
「え?ここだよ。ここ、中央広場の噴水からだよ。女神様にお願いしたんだから当然でしょ。」
(・・・噴水?)
テイは思わず噴水を見上げる。噴水の中央には女神像があり、いつもと変わらず微笑んでいる。




