転生と神様
「ねぇ、そこのかわい子ちゃん、俺といっしょに空中浮遊デートしない?」
俺が声をかけたその魂はすばやく走り去って行った。はぁ、また失敗してしまった。
魂のままだと俺の前世のルックスが生かせないからかなりハンデがある。はやく転生がしたいものだと空を見ながら愚痴も出てしまうのも仕方ない。
ここは天界、死んだ者が転生を待つ待合所のようなものだ。転生を待つ間は暇なのでこうしてナンパをしたりして過ごしている。早く転生して女の子のおっぱいに囲まれたいのだが転生まで後300年あまりあるのでそれもの叶わない。俺は溜息を吐きつつまた女の子の魂を探す為に浮遊し始める。
「そこの者、待つのじゃ」
そう言って振りかえると老人が立っていた。天界でしっかりと形を成してしているのはかなり高位の存在のはず、しかも、人型となるともしかして相手は・・・。
「神様ですか?」
俺がそう聞くとうむ、と頷いた。これは驚きの展開だ。神様なんて転生前にちょっと会うだけの存在なんじゃなかったっけ。そんな存在が俺になんのようがあるんだろうか?
「お主、早めに転生してみたくないかの?」
「!!!」
な、なんだって!て、転生が出来るだと。転生しておっぱい生活が俺を待っているというのか!
「いや、おっぱい生活はないじゃろう?かなり性に貪欲な者のようじゃな」
俺の心の声が聞えたようだ。まぁ、神様ならそれくらい出来るだろう。ちなみに魂でも声は発声出来る、口も声帯もないのに不思議なものだ。
「転生したいのならば、付いてくるのじゃ」
すると眩い閃光に包まれて俺は別の場所に移動させられる。そこは周りの景色が歪んでいる不思議空間だった。
ちょっと、これを見よと神様が突然、杖を出現させて床にコツンと付くと円形状に景色が見え始める。どうやらどこかの部屋のようだ。一人の人間が宙に浮かんでいる、魂としてでは無く、物理的に浮かんでいるのだ。具体的に言うと首を縄で縛って浮かんでいる。平たく言うに首つり自殺をしていた。
「グロイ映像いきなり見せますね。どうせなら女の子のおっぱいを見せて下さいよ」
「おっぱいなど、見せてどうする。お主にはこの者の体の中に入って転生してもらいたい」
えー。こいつの中入って転生するの。顔はまぁ、イケメンだけどなんかナヨってしていて見るからにインテリっぽい。俺、体動かす系なんだよね。
「この者の父親は我が世界を救った英雄でな。まぁ、恩みたいな物があってあの子の人生とあの者の父親が作ったギルドをなんとかしてやりたいのだ。神が特定の者に目を掛けるのは良く無いのじゃが今回は特別にな」
神様は長い白髭を擦りながら憐れんだ目で首つり男を見ていた。
「うーん。転生出来るのありがたいんですけど、なんかあのモヤシ野郎気に入らないですよね」
なんか、死んでいてなお悲壮感というか貧乏っぽいっていうか殴りたくなるタイプの人間なのだ。
「まぁ、モヤシなのは否定出来んな。魔法の知識は膨大にあるが魔力と体力と運が無い為に人生をダメにした男だからの」
「ま、魔法があるんですか?」
マジかよ。俺は某漫画の眼鏡魔法少年に憧れていて魔法に興味あるんだよね。あの漫画はいいよね、すぐ女の子服脱げるし。
「うむ。あの世界は科学と云う物質を探求する概念を持ち合わせてないが魔法という概念が浸透している世界でな。生きる為には個人の技量が重要な世界なのだ。未だに魔物という外敵がいる為に武装も欠かせないしの。」
「つまり、剣と魔法の世界?」
俺は興奮が収まらずに聞いて見た。手の中はビッショリな感覚だ、魂だから無いけど。
「剣か。お主にとっては確かに剣と魔法の世界と言っても過言ではないかもしれんの」
うむ、うむ。となんか一人で納得しているような神様。俺にとっては?
「あのー。それって、どういう・・・!!!な、なんだと!」
神様が見せてくれていた映像の中で首つり男を介抱している女の子がいるではないか!しかもかなりのおっぱいちゃんだ!あのモヤシ野郎に膝枕をして顔におっぱいを当てていやがる。なんという羨ましい光景だ。
「俺、転生します。今すぐお願いします。はやくしないと俺の至福が終わってしまう」
「そうか。お主は前世の地球では魔力が莫大にありながら魔法という概念がないばかりに才能を無駄にした男だ。その才能は向こうに行っても引き継がれるから存分に新たな人生を楽しむがいい」
神様は人々の心を穏やかにするような笑顔を俺に向けているが、俺はそんな事はどうでもいいのだ!早くしないと俺のおっぱいパラダイスが消えてしまう。
「んな。事よりも早くしろや!神様。転生を早く転生を!」
「う、うむ。まだいろいろ説明せねばならん事があるのだが。その血走った目が怖いからの。転生させよう。では、達者で暮らせ」
俺は光に包まれて神様の元から去って行った。待っていろよ、俺のおっぱいちゃん!!!。