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たまたま

掲載日:2016/07/14

著・森見登美彦 「ペンギンハイウェイ」に多大な影響を受けた作品です

 小学四年生の頃の話だ。


 その頃我が家はとても貧しく、一家五人が六畳二間のボロアパートの二階で暮らしていた。


 両親は共稼ぎで、歳の離れた兄たちはアルバイトをして自分の小遣いを稼いでいたので、学校から帰っても家には誰もいなかった。


 その日も、いつも通り学校から帰り、夕方から始まるアニメの再放送を楽しみにしていたのだけど、ドアの前に立って鍵を開けようとしたときに、ジャンバーのポケットの中に、部屋の鍵が入っていない事に気が付いた。


 どうやらどこかで落としたらしく、すでに季節は真冬の盛り。


 冷たい風と雪が吹き付ける中で、僕は鼻水を垂らしながら途方に暮れていたのだ。


 いくら北国生まれの、北国育ちとは言え、寒いものは寒いのである。


 両親や兄たちに連絡の取りようのないまま、僕はここで凍死するのかと、遠い目で最後であろう町の景色を眺めていたのだった。


 「たんたんたぬきのキンタマは〜か〜ぜもないのにぶ〜ら、ぶ〜ら たんたんたぬきのキンタマは〜か〜ぜもないのにぶ〜ら、ぶ〜ら」


 人が生きるか死ぬかの瀬戸際に、そんな脳天気な唄を歌いながらアパートの階段を登ってきたのは、隣の部屋に住んでいるおっぱいの大きな女子大生のお姉さんだった。


 「あら、少年どうした?虐待?」


 お姉さんは僕に気づくと、開けた防寒ジャンバーの前で、おっぱいをぷるるんと振るわせながらしゃがみ込んで、僕の視線の高さに合わせると、話しかけてきた。


 「部屋の鍵を無くしたのです」


 僕はお姉さんのおっぱいに打ちひしがれてそう答えると、お姉さんはそれは困ったねと言う顔をしてから言った。


 「それじゃぁ、お母さんか、お兄ちゃん達が帰ってくるまで、お姉さんの部屋にいなさい。そんなところで凍死されたら、お姉さんも冬の寒空の下で凍える君を見殺しにしたと言う事で、罪悪感にさいなまれちゃうから」


 そう言って、部屋の鍵を開け中に入っていくお姉さんに続いて、僕も中に入ったのだった。


 お姉さんは今年の春から入学した大学に通うためにこのアパートに引っ越してきた。


 背は高校生の兄よりも頭一つ小さいが、おっぱいはとても大きかった。


 中学生の長兄が言うのにはノーブラ主義者というものらしい。


 僕にはそれがよく解らなかったが、とても良いおっぱいであると言う事は理解出来た。


 昔は大きかったというお母さんのおっぱいは、兄たちや僕に吸い尽くされて、今はとても残念な事になっているが、お姉さんのおっぱいもいつか残念な事になるのかと思うと、それは寂しい話である。


 お姉さんにはいつまでもこのままのおっぱいでいて欲しいと切に願う次第である。


 がんばれ!お姉さん!!


 「お風呂湧かしてあげるから、入って体を温めなさい」


 いくら小学五年生とはいえ、ものの節度は知っていると思う僕である。


 「そんなご迷惑をおかけする訳にもいきません。僕はこのこたつがあれば充分なのです」


 そう言ってみたが、お姉さんはちっとも耳を貸してくれず、風呂にお湯を流し込む音が聞こえてきたのだった。


 「さぁ、ちゃっちゃと入っちゃいなさい」


 お姉さんはそう言うと、僕の服を脱がし始め、真っ裸になった僕を浴槽に放り込んでくれたのだった。


 「熱いです!! 熱いです!! 熱湯風呂は、見るだけで充分です!!」


 僕は涙ながらに抗議をしたのだが、すでに素っ裸のお姉さんがおっぱいをぷるぷるさせて風呂場に入ってきたので思わず熱さも忘れておっぱいに見とれていたのだった。


 「さぁ、ちょっと詰めて下さいよ。なにぶん狭いもので」


 お姉さんは僕を抱きかかえる形で肩まで湯船に浸かると、僕の肩を掴んで同じように浸からせたのだった。


 「ところで、少年」


 お姉さんが僕に話しかけてきた。


 「なんでしょうか?」


 「きみは、アレかい?おっぱい星人かい?」


 「その質問にはイエスと答えておきましょう。基本的に我が家系の男子はおっぱい星人なのです」


 「そうなんだ。それは良い趣味だねぇ」


 「お姉さんは、何星人なのですか?」


 僕は聞いてみたのだ。


 特に理由はなく、話の流れという奴だった。


 僕はなかなか空気の読める奴である。


 「お姉さんは、たまたま星人だね」


 衝撃の告白だった。


 「えっ!? たまたまのどこがそんなに母性本能をくすぐるんですか? はうっ!?」


 僕がそう聞いたのと同時に、お姉さんは僕のたまたまを両手で掴んでいたのだった。


 「あらら、まだこんなにたまたまが縮みあがっているじゃない。良いたまたまはもっとでろんとしているべきよ。歌にもあるでしょう? か〜ぜもないのにぶ〜ら、ぶ〜ら って」


 そう言いながら、お姉さんは僕のたまたまをもみほぐしていた。


 「それは知りませんでした。ぶらぶらしているのが良いたまたまだったのなんて。もっと、キリッ!! としているのが良いたまたまだと思っていました」


 「勉強不足だよ、少年」


 お姉さんはそう言って笑ったのだった。


 風呂を上がり、お姉さんが作ってくれた鍋焼きうどんを食べながら、良いたまたまについてお姉さんと熱い議論を交わしていると、二人の兄が迎えに来たのだった。


 どうやら、お姉さんは張り紙をしていたらしく、せっかくの至福の時間に水を差される形となった。


 「また、今度ね。少年」


 そう言ってお姉さんは笑って送り出してくれたのだけど、それがお姉さんを見た最後となった。


 次兄の話によると「たまたま星」に帰ったんだろうという事だった。


 それから何年かの時が経ち、大人となった僕は今でもおっぱい星人だった。


 お姉さんは今でもたまたま星人なのかと思う事がときどきある。


 僕のたまたまは、かぜもないのにぶらぶらするくらいにはなったけど、やっぱりおっぱい星人である僕には、たまたま星人の気持ちは解らないのである。


 

 

 

 

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