草原の狼の章4
誰よりも強くなっていよう・・・
「それでは女王・・・・・・
又どこかで会ったら手合わせしよう・・・」
「・・・・あ・・・・ああ・・・・。」
行ってしまうのか?
何だか寂しい気持ちがカルーの心を過ぎった。
誰かに対して、愛してくれる両親という存在に対する渇望の気持ちや
双子の片割れのシルクがそばに居ないとき等に感じる気持ちは別にして
そんな気持ちを感じたことはなかったのだが
不思議にケーナズが行ってしまうと思ったときに
行かないで欲しいなと思った。
「・・・・」
行ってしまいかけたケーナズが無言で此方を振り返った。
「・・・・・・?
・・・・どうしたのだ?・・・えっと・・・ケーナズ。」
ムスッとした顔になってケーナズは
「・・・・・服・・・・」
と言って無意識に服を掴んでいたカルーの右手を
剥がそうとした。
カルーはもう一度此方を振り向いてくれたことが
何だか嬉しくて
でもその気持ちと自分のやっていることの
不可解さに困惑して
「・・・・済まぬ」
真っ赤な顔で慌てて自分の手を離そうとするのだけれど
自分の手なのに離れなくて戸惑う。
「・・・・・・・・・・・ケーナズよ・・・」
「・・・・はい?・・・・・女王」
思案顔でカルーは、言った。
「・・・・・・・私自身初めてで分からないのだが・・・
どうやらお前に行ってほしく無いと
私は思っているようなのだ・・・・・・
・・・・我が城に来て一緒に昼食だけでも食べて行かぬか?」
「・・・・いいや・・・・・私は、行く
・・・・これ以上女王と一緒に居ては
離れられなくなりそうですから」
ケーナズのその言葉がどういう意味なのか
カルーが図ろうと力が抜けた瞬間にケーナズは素早く
身を引いて離れてしまった。
「・・・・・では・・・・女王。
俺は強くなりたい
旅をして・・・たくさんの強いものと戦い
強くなることが俺の意味だから、一所に居れません。」
「・・・・・ならば行くが良い誰より強くなって
再び私と手合わせに来るが良い・・・・。」
笑みを浮かべケーナズの言葉にそう答えたカルーの顔を
ケーナズは、体全体で振り向いてマジマジと
幼さが見える顔で見つめると無邪気ににっこり笑った。
「・・・・・私も・・・国中・・・いや・・・
他国からも強いものを呼び集め手合わせして
今よりも強くなっていうであろう」
なんなのだその微笑みは?
と思いながらカルーは言葉を続けた。
と、ふいにケーナズに抱きしめられて
放された。