草原の狼の章3
私の元に来ないか・・・?
「・・・・強いな・・・・・・私と同じくらい強い奴って
初めて会いましたよ。」
「・・・・私も驚いた・・・。
まともに手合わせできる者等初めてだ・・・・面白い。」
男、ケーナズと女王カルーは手合わせをしてみて
お互いを対等の力を持つと認めた。
そしてそれは誰も対等の力
(カルーの場合、弟のシルクは又別の所で対等ではあったが・・)
を持つものがなかったという
二人にとってとても嬉しく面白いことだった。
「・・・・・私と共に在ってくれぬか?・・・・
今まで誰一人として私の相手になったものは居なかった。」
「・・・・仕官するなんて嫌だ・・・・私は、自由に
強いものと手合わせして腕を磨いていきたい。」
これからも時々手合わせがしたいと思って
傍に居てくれないかとカルーは、ケーナズに誘いをかけたが
自由で居たいケーナズは一瞬も考えずにカルーの申し出を断った。
「・・・・・私の望みを断るのか?」
「・・・誰も私の自由を妨げることは出来ない・・・・
それが、一国の王だったとしても」
カルーはその言葉に考え込んでしまった。
今まで一番の望み以外はどんなことでも大抵は
周りの者達が叶えてくれたので
きっぱりと断られたことに
驚き、しかも自分の望みが誰かの自由を奪う事だと
いう事に驚いた。
「・・・・・駄目か・・・・・ざ・・」
ケーナズが傍に居て自分と手合わせをしてくれないのだと言う事が
残念だと少しだけつまらない気持ちで
言葉を続けようとした時、不意に
ケーナズが手を伸ばしてきた。
「・・・・!?・・・・」
「・・・・頬が切れてた・・・・
私との手合わせの時に当たって切れたのか
その前の怪鳥の時に切ってたのか・・・・・今、頬から
血が滲んできたみたいだ・・・。」
頬に触れた男の指にカルーは温かさを感じて
落ち着かない気持ちになった。
「・・・へ・・・・平気だ・・・・舐めてたら治る。」
カルーの言い様にケーナズは、クククッと
笑っていたがふと笑いを消して
じっとカルーを見つめた。
「・・・・なんだ・・・・?」
不思議に思ってカルーが眉根を寄せて尋ねると
ケーナズは、首を振った。
「・・・・・何でもない・・・・・でも、
自分の頬は自分で舐めれないですよ。」
「・・・・分かっている・・・・将軍達が言っている真似を
しただけだ。
キチンと消毒して治療したらすぐに治る
・・・・治癒力も私は、高いからな。」
ケーナズの指摘に、恥ずかしさでみるみる顔が勝手に
熱くなっていくカルーを見て
ケーナズは、無意識にペロリとカルーの頬を舐めた。
「・・・・・!?・・・・・な・・なに!」
飛びのいたカルーをケーナズは黙ってみていた。