草原の狼の章2
お前と私・・・どちらが強い・・・?
「・・・確か・・・その顔は、ここの国の女王
だったよね?」
始めは突然馬で駆けて来たカルーに怪訝な顔をしていた
その男は顔を見て国王だと気付いて
とたん目を輝かせて興味深い顔に変わった。
「・・・・え・・・ああ・・・
それがどうした?」
獲物を取られて怒っていたというのに
男のその様子にカルーは何だか気が削がれて
聞いてみる。
「とても強いと聞いた。・・・
男よりも戦士よりも・・・・。」
「・・・・戦士・・・そう言えば、遥か東の国に
戦士の国があると聞いたが、お前は、
そこの国の者か?」
ふと、そういう噂を聞いた気がすると思い
カルーが聞いてみるが
そのとたん男はどこか怒った顔をして
「・・・・お前では無い!
俺・・・私は、東の草原の国、戦士ケーナズだ!
女王、カルー。」
「・・・・す・・・まん」
カルーは、『お前』と言って怒られたのは
初めてだった。
怒るようなことだったのか?と、
そのことに
驚いてしまって。
謝罪の言葉がスルリと出た。
「・・・・お前・・・・と言うのは・・・その・・・
凄く失礼なことなのか?
もしかして・・・。」
恐る恐るカルーが聞いてみると
「・・・・・驚いた・・・・。
・・・・失礼じゃないと思ってたん・・・ですか・・。」
男の言葉に何だか恥ずかしくなって来て
頬が微かに赤く染めたままちょっとだけ頷く。
「・・・・・失礼だけど分かって無かったなら良い・・。
・・・ねえ・・・・女王、女なのにどうして強いの?
どの位強いのか闘ってみたいな」
男の言葉にカルーは再び驚いて
「私と闘いたいのか?」
「本当に強いのならだけど」
不思議な男だ。
そして不思議な気分だ
とカルーは思っていた。
本当に強いのなら
なんて失礼な事を言われているのにあまり気にならない
男の純粋な好奇心
強いものと闘いたいという瞳がそう思わせているのか
カルーは反対に男に対する興味が沸いてきた。
「・・・・・・私も、お前が強いと言うのならば
闘ってみたい。」
「強いよ俺は。
・・・・女王・・・私と手合わせして下さい。」
自分はカルーに『本当に強いのなら』などと
言っておきながら自分に言われた場合は
ムッとしながら男はそれでも
黒味がちな茶色の強い輝きを持った瞳で
カルーを見据えた。
カルーは、何となく男が
失礼と丁寧のまぜこぜになった言葉使いをしているのは
強いと言われる女王にいちよう敬意を払って
だったのかな?と気付いた。
(興味深い・・・・・・とても興味深い人間・・・。)
カルーは何だか楽しくなってきた。