幼子の章3
抱きしめてください・・・・・・
「・・・・・カルー・・・・・?」
(『・・・・・・抱きしめて・・・』)
脳裏にカルーの悲痛な叫びが響く
(『・・・・・・私も・・・・抱きしめて・・・』)
カルーの想いがシルクにそのまま伝わってくる
心を締め付けるそれが何なのか
カルーもシルクも今では分かっていた。
生まれたときから馴染みのもの
一生与えられないものへの望み
「カルー?」
空間を移動して姉の・・妻の許へと降り立つ
「シルク・・・」
カルーの頬を伝う涙をそっと拭うと
いつものように温かさを分け合うように
抱きしめる。
「・・・・・乳母やの娘に子供が生まれたって
・・・・・乳母やの娘が今さっき見せに来てたよ・・・」
「・・・・・うん・・・。」
震えるカルーの背中を力を入れて抱きしめ直して
シルクは、髪に顔を埋めてあやす様に口付けを落とす。
「・・・あんなに大切そうに赤ん坊というものは
抱かれているのだな・・・・・あんな笑顔を貰って
・・・・あんなに愛されて・・・・」
「・・・・うん・・・・」
肩口がカルーの涙で濡れてゆく
「・・・・・・私達はあんな風に抱かれたことが無い・・・
神の子だから・・・・・。」
「・・・・あんな口付けを貰ったことが無い・・・・
国の主だから・・・・。」
カルーの言葉にただ静かにシルクは頷いた。
自分達を抱きしめ口付けを落とし
時には叱り
愛してくれる存在を
カルーとシルクは渇望していた。
「・・・カルー・・・・私達は・・・・・何の為に生まれたのだろうね
・・・・何の為に生きているのだろうね・・。」
「シルク・・・・・私は・・・私は
本当はお前だけが居れば良い
国なんて本当はどうだって良いんだよ・・・」
「・・・カルー・・・寂しいね・・・・・・愛されたいね
・・・・でないと・・・・・・なんの為にこの国を守るのか分からない。」
二人で抱きしめあっていても
心は凍えそうで
何もかも見るもの全てが灰色で
誰より力にあふれ強く
精霊達の与えてくれる
無限の知識を持ち
誰より高い地位に付き
恵まれているはずの自分達だけど
欲しくて堪らないものだけは始めから与えられなかった。
「せめてお前だけは
ずっとそばに居てくれシルク・・・・私の半身」
「ずっと一緒だ・・・・・私の半身カルー
だって私にもお前しか居ないのだから」
対等で居られるのは
温かさを分け合えるのはお互いしか居ない。
それさえ無くなったなら
どうしたら良いのだろう
その想像の恐ろしさに身が震えた。