恵みの章2
「私達は、この人達を守ってゆくんだ。」
巫子王国サフラ国王太子である王子は、
3歳年下のまだ無邪気な双子の弟と妹の方を振り向いた。
懸命に兄の後から付いてくる二人は、
前方で微笑みながら待っている
兄に少しむくれながら
転げ落ちそうになる身体を必死で支え
王宮の塔へと登る階段を登る。
朱金の髪を持った凛々しくも秀麗な兄は
やっと追いついた弟と妹の頭を両方の手でそれぞれ撫ぜると前方に瞳を向けた。
「もう少しで頂上だ
お前達に見せたい光景はそこで見られる
もうちょっとだけ頑張れるか?」
兄の優しげではあるが奥に宿る
意志の強さを感じる赤茶色の瞳を見上げながら
焦茶の髪に元気な寝癖が付き
兄と同じ赤茶色の瞳に好奇心の光を宿す
弟と
月の女神の映し身であるのかと疑うような
サラリと流れる青銀の髪に
静けさを称えた緑の瞳を持った
妹は
「頑張れる!」
「・・・もう少し大丈夫」
と応えた。
塔の頂上まで登ったきょうだい達は、
前方に広がる美しいくも力強い光景に瞳を輝かせた。
「ごらん・・・・此処から私達の
国の町並みがよく見えるだろう?」
兄は、弟と妹達が自分の見せたかった光景に
感動してくれているのに
満足して言った。
「太陽の光と、月の光に包まれて
見守られている。
でも、そのなかでこの美しい町並みを築き上げているのは
人なんだ。
誰か一人では無くて沢山の人の力で
沢山の人が建てたこの町並みは
こんなにも美しい。」
「「・・・・・はい・・・・あにうえ」」
双子の言葉は重なった。
「私達は、この人達を守ってゆくんだ。」
太陽と月に慈しまれる
人の都を見つめながら
人の王と
人の巫子王の子ども達は
そう心に刻んだ。




