恵みの章1
この子達を、この国をその世界を
一緒に慈しんで行こう
カルーとシルクは子ども達を抱きしめながら
そう固く誓った。
床に伏したままのカルーは
弟シルクに微笑みかけた。
シルクも姉カルーに微笑みかけた。
「私達は、まるで正反対なのに
本当によく似た姉弟だなシルク」
愛する人と別れたシルクに
カルーは、筋肉が落ちて細くなってしまった手を差し伸ばした。
「本当に・・・それでも幸せだった所までそっくりだ。」
シルクは、カルーの手を取りその身体を支えた。
二人は、王宮の奥にある父王カルフォス王が
造ったと言われる
月の女神の神殿へと向かい
正面にある
女神像を見上げた。
女神は何処までも優しく、気高く
慈愛に満ちていた。
「父上が月の女神に
どんな想いを抱いていたのかは分からないけれど
父上も手の届かない女神を愛して、女神も父上を愛した。
私は、おそらく父上も、
こんなに魂を燃やし尽くす程の恋をしたんじゃないかと思う。」
カルーは、月の女神の像を見上げ
そう言った。
「私も思う、
きっと父上も、それが無ければ保てないほどの
魂の奥底に深く沈んでゆく程の恋をしたのではないかと」
シルクは、そっと視線を落とし
しみじみとそう言った。
カルーとシルク、生まれた時から
神の力を与えられて生まれてきた双子の姉弟
そんなものは要らないと
与えてくれるのならば愛が欲しいと嘆いた二人、
しかし、きちんと与えられていた。
始めから自分達が一人ではなかったこと
それから、人を愛し、人に愛される
哀しみも、苦しみも
恋慕も幸せも感じられる
人の身と
人の心を与えられていた事
その神の力と、人の心を持って
二人は思った。
愛する人と出会いそして思い出を育み
愛する人の亡骸を抱く
この国が愛おしい・・・
そして、愛おしい人が、愛しい人達が生きる
この世界が愛おしい・・・
この力とこの身は愛しい子達と
愛しい人達をこの世界を
慈しみ守る為にあるのだと
その為に与えられたのだと
空に手を伸ばすと
その意思に沿って
カルーとシルクの間に生まれた子供
カルーとケーナズに生まれた双子、
3人の幼子が現れた。
まだ何も知らない純粋な透き通った瞳で
愛情を疑う事も無い
信じきった瞳で二人を見ている
それだけで無条件に愛しいと思える。
カルーの心に愛した人、
激しく強く共に歩いたケーナズが思い浮かび
涙が零れ落ちた。
シルクの心に愛した人、
優しく繊細で包み込んでくれたルージュが思い浮かび
涙が零れ落ちた。
「とうたま?かあたま?」
上の子がおろおろと二人を見る。
「だう~あ?」
「んぶ・・」
生まれたばかりの双子も視線を向ける。
この子達を、この国をその世界を
一緒に慈しんで行こう
カルーとシルクは子ども達を抱きしめながら
そう固く誓った。




