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儚き乙女の章8

お父様、お母様、


この人が私の大好きな人です。


私の世界で一番大事な人です。
























「ルージュ・・・・」


今日のエーフィルはちょっとなんだか変だった。


わざわざ会いに来てくれたはずなのに


ルージュの名前を呼んだままじっと


ルージュの顔を見ている。




少しでもエーフィルの大事な人のために自分でも


何か出来たらと思ってしたことだけれど


迷惑だったのだろうか?


ルージュはそう思って野の花の押し花の栞を


引っ込めようとした。




(ごめんなさい、エーフィル様)


ところがそのルージュの手を取って


エーフィル様がグイッとルージュを自分の胸に引き寄せた。


突然のことに身体を支えきれなくて


エーフィルの胸に飛び込む形になって


ルージュは混乱した。






「・・・・・ルージュ・・・ああ・・・


私の大切なルージュ、初めて気付いた。


私はこんなにも君が愛しいと思っていたのだと」


エーフィルの言葉に驚いて見上げるルージュに


いつもの包み込むような温かい瞳じゃなくて


熱を持った瞳でエーフィルは口付けを落とした。




(嘘・・・・嘘・・・)




信じられなくて、まるで夢を見ているようで




唇が離れると、真っ赤になって口元を押さえてうつむいたが、


エーフィルはそっとその手を退けると


ルージュの頬と唇を手の平と指で触れた。


そして、もう一度今度は少し様子を伺うように


ゆっくりとルージュの顎に手をかけて


ルージュにとっては、


胸に痛いほどの愛しくて綺麗なエーフィルの顔を


近づけて来た。


ずっと見ていたいけど恥ずかしくて


ルージュは瞳を閉じる。




(ああ・・・・エーフィル様


大好きな愛しいエーフィル様)


嬉しくてルージュは涙が出てきた。






「・・・どうして泣くの?嫌だったのか?」


エーフィルの声にルージュは首を振る。






「・・・・君だけは・・・・君だけは守らせておくれ・・・

私にとって君は大切な人なんだ・・・」


エーフィルの言葉にもう一度ルージュは首を振る。




(どうか・・・私だけなんて言わないで下さい・・・)

ルージュはエーフィルを見上げ


自分に出来るめいいっぱいの笑顔を見せた。








お父様、お母様、


この人が私の大好きな人です。


私の世界で一番大事な人です。






ルージュは遠い昔処刑と言う形で


死んでしまった


両親にそう話しかけた。




目の前で肉親を殺された哀しみも


苦しさも薄れたわけではないけれど


今は、包み込んでくれる大切な人が居る。


それはなんて幸せな事なのだろうと思った。


















「・・・・私は、ルージュに何をしてあげたら


良いのだろう・・・・大切なルージュに何が出来るのだろう?」


エーフィル様のお言葉はとても嬉しかった。


ルージュは、エーフィルが傍に居てくれるだけで、


エーフィルを愛せるだけで


エーフィルが愛してくれるだけで幸せだと思った。




















そして、それは、突然の事だった。














ルージュは、いつもの下働きの仕事以外の仕事を言い付かった。




単純なお遣いのようなものだったが


頼りにされた事がとても嬉しくて




自分の汚れた服装から埃を掃って


ルージュは軽い足取りで神殿の奥底へと入っていった。








少し迷いながらも


道案内の通りに歩いていると不意に、




「此方です巫子王様」




と言う声がどこから聞こえて数人の足音が聞こえてきた。


此方に向かってきている事に気付いて


巫子王という余りにも高い地位に


ルージュは、脇に逸れて額づいて平伏した。


ルージュの耳にも国王と並ぶ国の最高権力者である


巫子王の事は届いていた。




国王と双子の姉弟であり、唯一の伴侶、


月の女神に愛され祝福された、聖王カルフォス様の御子であり


父王と同じく女神の祝福をその身に受けた神の愛し子。


噂では四精霊にもこよなく愛された


神の力を持ったお方であると聞いた。




お名前は、確か、


シルク・フィエル=サフラ様






足音がルージュの前を通ろうとしている


とその時、よく知っている香りがして思わず顔を上げてしまった。




「・・・・・ご尊顔を仰ぎ見るとはなんと無礼な!」


お付きの神官の方々の声も、周りのざわめきも


その瞬間ルージュは遠ざかった。




瞳を上げた先には


ルージュの愛しい人が立っていた。




「・・・・・ルージュ・・・・。」


(エーフィル・・・様・・・・?)




エーフィル様がどうしてここに居るの?


どうしてそんなに哀しい顔をされているの?








国王カルー様の命で


父を母を家族を処刑された痛みと哀しみ


たった一人きりになった寂しさと苦しさ


それをエーフィル様は癒してくださった。




最愛の人になっていた。






そのエーフィル様がどうして・・・・?










ルージュはその場に倒れ付した。

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