儚き乙女の章7
守りたい・・・傍に居たい
その笑顔が見ていたい
私は、君を愛している。
「どうしてルージュは泣くのだろう」
エーフィルは、分からなかった。
ルージュがエーフィルを好きでいてくれているのは
流れてくる素直な心から良く分かっていた。
自分も姉のカルーとは別として
ルージュが愛しいと思っている事は自覚していた。
自分がルージュに傍に居て欲しいと思っていることも
ルージュの笑顔を見ると心の中が温かくなる様な
でも少しだけ愛しさが過ぎて痛いと感じる事も何となく分かっていた。
「この気持ちは何なんだ・・・・?」
エーフィルはまるで分からなかった。
傍に居て欲しいと思うから笑顔を見ていたいと思うから
家族になろうと思った。
でも、ルージュが泣いた。
ルージュも好いていてくれているはずなのに嫌なのだろうか
そう思った。
やはり私はカルー以外の人の心に疎い。
弟が落ち込んでいる事に
双子の姉であるカルーは気が付いたのだろう
寝台で寝込んでいたカルーは、ふらつきながらもしっかりと
寝台から起き上がりおもむろに
近くの椅子に座っていた弟の頬を張り飛ばした。
叩かれて驚く弟を尻目に一言、
「何をグジグジしている。
私の弟が!ここでそうして居ても何も分からないぞ
何の心配もせず、お前はお前の思うとおりに生きろ!
そうしているうちに答えは出るものだ」
突き刺さるような強い瞳でカルーは言った。
「カルー、私はカルーを愛しているよ
でも、ルージュも大切なんだ。・・・・
でも何故か時々私はルージュを泣かせてしまう・・・
辛くて苦しくて哀しい気持ちにさせてしまうみたいなんだ」
その言葉にカルーは、
「それを言ってみれば良い。・・・・・
後悔は後で良い
相手を思いやっている気持ちがあれば、
きっと後悔は後でしたらいいんだ・・・・・・
私はケーナズを愛した事を後悔していないぞ
だから、お前も誰かを愛する事を躊躇うな!」
命を宿した腹部に優しく触れながらの
その言葉は弟の心を強く突き刺した。
「ルージュ!」
エーフィルはルージュの元へ向かう。
エーフィルの声にルージュはゆっくりと振り向いて柔らかく微笑んだ。
エーフィルの心臓がその笑顔を見て
トクンと音を奏でた。
「ルージュ、私・・・。」
勢い込んで来たものの何を言ったら良いか分からないし
思うとおりにと言っても自分がルージュに何を求めているのか
と言うのが明確に分からなくて
戸惑った。
(・・・・・エーフィル様、これ、)
伝えてくる声と差し出している手に
エーフィルはその手の中のものを見てみると
ルージュは押し花のしおりのような物を持っていた。
野に咲く何処にでもあるような小さな黄色い花
でも、ルージュのこの生命力溢れる花を見て
少しでもエーフィルの大事な人に元気になってもらいたいと
いう気持ちが伝わってきた。
(余計な事かも知れませんけど
お守りも元気になるお薬も何も出来ないけれど
お花を見たら元気が沸いてくるかも知れないと思って・・
野の花の元気を少し分けてもらえるかも知れないと思って・・・)
差し出た事をしていると思う恥ずかしさに
ルージュが頬をピンクに染めて
震える睫にエーフィルは再び心臓がトクンと鳴った。
「・・・・君は・・・なんて・・」
言葉を紡ぎ掛けてでもなんて言葉にしたら良いのか分からなくて
エーフィルはルージュを抱きしめた。
守りたい・・・傍に居たい
その笑顔が見ていたい
私は、君を愛している。
エーフィルの心から留まる事の無い想いが
溢れ出した。




