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儚き乙女の章6

(・・・・きっと知り合いの人は


エーフィル様の大切な方、


どうかその人の心の痛みも身体の苦しみも消えて


幸せになられますように・・・)






















「カルー体の具合はどう?」


寝台に横たわる双子の姉にして自分の妻であるカルーに


エーフィル―シルク―は話しかけた。




「・・・・シルク、ああ、大丈夫だ


済まない、お前に心配をかけて」


何があっても強気でその赤茶の瞳に


生命力を溢れさせていたカルーのオーラが


哀しみと体調のせいで少し暗くなっていた。




カルーは、つい先ごろ最愛の人ケーナズを亡くした所だった。


ケーナズの忘れ形見を宿したばかりの身体だというのに


哀しみと、妊娠初期の悪阻で


カルーは、寝台から中々起きれない状態が続いていた。






「今は、何も考えずに子どもを生む事を考えるんだ


毎日子どもの無事と


ケーナズの魂の平穏を月の女神に祈ってるから・・・


政務は宰相と大臣が一生懸命やってくれているよ」


カルーの瞳から涙が光った。


















午後からエーフィルはまたルージュの様子を見に来ていた。


ルージュの懸命に頑張る姿を見ていると自分も


頑張ってカルーを支えたいと思えてくる。


ジッと働く様子を見ているエーフィルに


ルージュが近づいてきて裾を軽く引いた


少し物思いに耽っていたエーフィルは、慌てて笑顔を向けて




「どうしたの?」


と聞いてみたが


ルージュが何だか悲しげな顔をしてみている。


触れている所からルージュの心が流れてくる。


ルージュは、エーフィルが心の声が聞こえると告白してからも


躊躇わずエーフィルに触れてくれる。


このことは、少なからずエーフィルに驚きと


嬉しさを与えた。




彼女にならいつか本当のことを全て話せるかもしれない


全てを知ってなおカルーとは別に家族のように


私を対等の者として愛してくれるかも知れない


そんな希望を抱かせた。






(エーフィル様・・・・辛そう・・・


何か辛い事があったのですか?)


ルージュから労わりの心がエーフィルに伝わってくる。


それが嬉しくて


エーフィルはにっこりと微笑む




「ありがとう、ルージュ


私の・・・・・知り合いが、身体と精神共に弱って


寝台から起きられないんだけど


どうしてあげたら良いのかと思っていたんだ。」


エーフィルのその言葉に


ジッとルージュはエーフィルの顔を見ていた。




(・・・・そう)


エーフィルは頷いてルージュの頭を優しく撫でる。


ところがルージュは微笑をエーフィルに


返しかけてだんだん曇った顔になってきた。




「・・・・ど・・・どうしたの?


ルージュ」


慌てるエーフィルに


ルージュの哀しい気持ちが伝わってくるが


どうしてそんな気持ちになるのか


ルージュ自身にも分からないのか


理由が伝わってこない。




(済みませんエーフィル様、


それはエーフィル様も見ていてお辛いでしょうね


知り合いの方も早く元気になられたら良いのに


辛い想い、哀しい想いばかりが続くのは


本当に苦しい。)


表情は微笑を浮かべているのに


瞳からはポロポロと透明の涙が零れ


ルージュは、慌ててエーフィルから身を離して


顔を隠すように後ろを向いた。




「ルージュ」


何だか分からない胸の痛みをエーフィルは感じて


気が付いた時には


ルージュを後ろから抱きしめていた。




(・・・・きっと知り合いの人は


エーフィル様の大切な方、


どうかその人の心の痛みも身体の苦しみも消えて


幸せになられますように・・・)


涙を堪えたルージュのその心の声に


エーフィルはルージュを抱きしめる力を強めた。


身をよじってエーフィルの腕から


抜け出そうとするルージュにエーフィルは、




「・・・・・確かにその人は、私の大事な人だ。


だけど、ルージュも、もう、私の大事な人だよ、


ルージュとその人と私で家族になれないだろうか?」


と言葉を掛けた。


けれどその言葉によって余計に溢れ出した


ルージュの涙と、哀しいのか苦しいのか分からない


流れ込んでくるルージュの心に


エーフィルはどうしたら良いのか


とまどった。

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