儚き乙女の章5(発覚)
「・・・・・・ごめん・・・・・ルージュ
私、なかなか言えなかったけど
触れると心の声が聞こえる・・・・・みたいなんだけど・・・
あの・・・それから私、実は男なんだ・・・・
君の気持ちは・・・その・・・ありがとう」
「ルージュ・・・・ねえ・・・
君は結婚するの?」
何故か恐る恐るそんなことをエーフィルが言うので
ルージュは思わず首を傾げた
(何故)
「・・・・・だって、君には、口付けを交わす相手が
居るだろう?
だったらもしかしたら私と会ったりするのも
不味いのかも知れないと・・」
(どういうこと?)
考えてルージュは恥ずかしくなって
あの時の口付けはやはりエーフィル様じゃないんだ
ルージュはそんなことを想像していた
自分がますますエーフィルを汚していると
再び止まりかけていた涙が溢れ出た。
(申し訳ございません申し訳ございませんエーフィル様
それに、私には口付けを交わす人なんて居ないです)
「・・・・・君が幸せになれるのなら
それも良いだろうと思った・・・真実お互いに
想いが通じているのならと・・でも!」
何だか迷っている様子のエーフィルに必死でルージュは
首を振った
肝心な事が通じなくてもどかしい。
「・・・・・あの人は・・・・あの人はね・・・・
婚約者が居るんだ・・・・・自分でもやり過ぎだと思ったんだけど
調べて貰ったんだ
一ヵ月後に結婚する。・・・今のところ取りやめる様子もないし
君が不幸な事になるのではないかと・・・
私は君の事を大事な人だって思っているから・・・
同じくらいの年ではあるけど、
もしかしたら年が離れた妹が居たらこんなじゃないかって
思っているから」
ごめんなさいルージュ
勝手な事言って
勝手な事して
私はもう君の前に現われない方が
良いかも知れないね
一つ頭を下げて謝るとエーフィルは、
悲しそうな顔をして身を翻して行ってしまおうとする
(違うの・・・・そんな人なんて知らない)
ルージュはもどかしくなって
ぼろぼろ涙を零した。
でもエーティルを引き止める事が出来なくて
そんな引っ込み思案で内気な自分が悔しかった。
(私は、エーフィル様が大好きなのに)
エーティルの姿が小さくなっていく
でも動き出せなくて
でもこのまま会えなくなるのなんて嫌で
ただポロポロ涙を零していた。
(嫌・・・・・嫌・・・・
行かないで!お願いエーフィル様
私の女神様!)
ルージュは駆け出した
今まで何か行動を起こせたためしはなかったのに
ただエーフィル様と離れたくないという思いで
走った。
泣きじゃくりながら走る姿は
まるで幼い子どものようで
だけど2度と会えないかもしれないと
思うと胸が潰れてしまいそうで
走らずに居られなかった。
(エーフィル様!エーフィル様!)
手を伸ばす。
もう間近に迫っていたエーフィルの背中が不意に
立ち止まって此方を向く。
ルージュはここまで走ってきながら
急に恥ずかしくなって止まろうとするが
咄嗟に止まれなくて足が縺れた。
あっと思ったときには身体は地面に向かっていた。
けれど覚悟を決めた痛みは襲ってこなくて
支えられている感触に
顔を上げるとエーフィルで
一気に赤面した。
(恥ずかしい・・・・・・
済みません・・・・)
心の中で謝りながら
ルージュは私の声は聞こえないのだから
せめて私の本当の気持ちだけでも
エーフィルに心の中で言いたい、通じないけれど
と、思いエーフィルを改めて見上げて
(他の人なんて知らない、
私は貴方だけが大好きなんです。
私の女神様、どうか行かないで下さい。
片想いで良い、ただ傍に居たいのです。)
と心の中で言った。
そして、ルージュは自分の気持ちを伝えられなくても
心の中で言いたかっただけだからと
これで満足して、
涙を拭い微笑もうとした。
ところが何故か一気にエーフィルの顔が真っ赤に染まった。
そして、ルージュもふとエーフィルの腕の中で
何かに気が付いた直後、驚きの表情になると
みるみるうちに真っ赤になった。
急いで離れてルージュは
頬を押さえた。
(エーフィル様、・・・・男の人・・。)
「・・・・・・ごめん・・・・・ルージュ
私、なかなか言えなかったけど
触れると心の声が聞こえる・・・・・みたいなんだけど・・・
あの・・・それから私、実は男なんだ・・・・
君の気持ちは・・・その・・・ありがとう」
そうエーフィルが言った。




