草原の狼の章7
お前の言葉など信じない
お前はきっと離れていく
「変な奴だ・・・・」
思わずカルーの口からそんな言葉が漏れた。
目の前ではお城の近衛の者達が戦闘訓練をしている。
仕官したケーナズは、その腕でさっそく将軍達の目に留まり
(というか、カルー自身が紹介したが)
もめた結果、一ヶ月弱で近衛隊に配属される事になったが
一人突出しすぎた実力を持っている上に
性格が団体行動に向いていないらしい為
隊になじまずに浮いてしまっていた。
「・・・・・あんな不満そうな顔をして
さっさと私など諦めて帰ればいいものを」
(なかなか諦めないな・・・・もしかしたら隊に入ってみて
面白い物でも見つけたのかもしれないな・・・
曲がりなりにも国中の強いものを集めているのだから、
それに・・・・・本当に帰ってしまったらちょっとはまあ、寂しいが)
一人だけ練習から抜け出して演習場の隅で
昼寝をしているケーナズに上官が近づいてきて
思いっきり頭を叩かれている。
それでも何故なのか顔は不満そうなのに
しぶしぶ隊の所に帰って行っている。
戻る前にいつから気付いていたのか
カルーの方に視線を送って
口元だけ微笑ませたのに何故か少しだけ頬を熱くして
カルーは再び言葉を漏らした。
「本当の本当に変な奴だな」
カルーはケーナズの様子が気になって仕方が無かった。
(何だかもやもやするな・・・・・遠乗りでも行くか)
極力ケーナズの顔を見ないほうが
きっともやもやも収まるだろうとカルーは考えた。
『・・・・・どうやら俺はお前が好きらしい
お前が欲しいらしい・・・・・』
『・・・・・お前を俺の妻にしたいようだ。
俺は・・。
女王カルー・・・いやカルー
俺のモノになってくれ』
突然浚いに来たときの
ケーナズの言葉がカルーの頭の中で響き渡る。
かつて自分が寂しさのあまりに漏らした言葉を思い出した。
『・・・・・つまらないんだ・・・
何もかもがつまらなくて寂しい・・・・・・・・
私達はあんな風に抱かれたことが無い・・・
神の子だから・・・・・。』
そしてシルクが続けた言葉を
『・・・・あんな口付けを貰ったことが無い・・・・
国の主だから・・・・。』
『・・・カルー・・・・私達は・・・・・何の為に生まれたのだろうね
・・・・何の為に生きているのだろうね・・。
・ ・・カルー・・・寂しいね・・・・・・愛されたいね
・・・・でないと・・・・・・なんの為にこの国を守るのか分からない。』
カルーは、対等の者として誰かに愛されたかった。
そうしてくれるのは双子の弟のシルクだけだった。
その他には誰も居なかった。
ケーナズだって今は興味を持って居ても
きっと離れていってしまう。
だって、ケーナズが見ているカルーの
部分は神の子である強さなのだから