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血よりも濃い者

作者: 紺今田

「そういえば離婚して何年だっけ?」

「もう8年かな」

「知り合ってからだと12年か」

「早いね。前から聞きたかったんだけどさ、何で私なんかとつるんでるの?」

「何でだかな(笑)腐れ縁か?」

「普通ならとっくに縁切ってるでしょ(笑)」

「確かにな(笑)付き合い始めたきっかけは出会い系で1ヶ月もしない内に連絡取れなくなってさ(笑)次に連絡取れた時は金貸してくれだもんな(笑)」

「そうだっけ?(笑)」

「金渡してさ、一緒に住み始めて3ヶ月で突然失踪(笑)」

「いやいや忘れた(笑)」

「3ヶ月連絡なくてもういいかなって思ってたらいきなり帰ってきてさ(笑)ゴメンねも何も無く普通に住み始めて(笑)戻ってきたならしょうがないかって許したら半年後にまた失踪(笑)」

「酷い女だね(笑)」

「また3ヶ月行方不明で連絡取れない(笑)その間も心配して捜索願い出したり取り下げたり(笑)1ヶ月で帰ってきた時に流石に心配してたって怒ったら勝手に心配して余計な事をしないでくれる?って逆ギレでさ(笑)」

「そうだったね」

「俺もお前と出会う直前に親父が保証人なって自殺したじゃん。その時にお前が明るく接してくれたお陰で立ち直れたからさ、凄く助けて貰ったから我慢してたんだよ。」

「うん」

「でも流石に一年後に同じ様に失踪した時はもう無理だって思ったよ(笑)」

「だろうね」

「それから半年して電話かけてきた時はコイツふざけてんな!って心底思ったよ(笑)」

「うん」

「でもあの時お腹に今付き合ってる人の子供がいるって、相手の男がろくでもない奴で検診費用も生活費も渡してくれないって相談だったじゃん。次の日相手の男に電話で、男なら最低限責任ある行動しろって怒鳴りつけたら翌日勤め先の売上金持ってバックレてさ(笑)」

「だね」

「もうおろせる時期じゃないからどうしようかってなってさ。そこから3ヶ月悩みに悩んで俺から結婚しないかってプロポーズしたよな。他人の子供を自分の子供として育てられるか、この方法が最善なのか散々考えた末に決断したんだよな…俺」

「うん」

「子供が産まれれば男癖も治ると思ったし、何より俺自身がそうしたいって思ったんだよ。周りからは止めとけって言われたけど、どうなっても後悔はしないって思ったからさ。」

「うん」

「だから東京の仕事辞めてお前の実家のある田舎に越してさ、朝から夜中迄働いても20万しか貰えなくても我慢して必死にやってたじゃん。なのに2才の誕生日直前に出会い系で知り合った東京の男の所に行きます。ごめんなさい。って置き手紙1枚置いて子供連れて出ていってさ。その後どれだけ心配したか。ちゃんと飯食えてるのかとか虐待されてないかとか毎日が地獄。しかも出ていった日が給料日で全部持って出ていったから飯は食えないし家賃も光熱費も払えないし(笑)」

「……」

「軽い鬱になって会社に迷惑かかるの分かってたけど黙って辞めて東京帰ってきてさ、毎日あてもないのに東京中歩き回ってさがしてさ。あれだけ世話になった社長に申し訳無くて未だに挨拶にもいけてないよ。」

「……」

「離婚も出来ないまま9ヶ月してやっと連絡きたと思ったら子供に飯も食わせられてない、風邪ひいてるけど病院にも行けないってさ。あの時の怒りを通り越した哀しみは一生忘れないと思うよ。迎えに行って離婚の話し合いした時に、もうやらないから許して欲しいって初めて謝ったよな。俺も子供の為にもう一度だけ許そうと思って一緒に東京で暮らしはじめたじゃん。2か月後に一緒に暮らしてた奴との子供を妊娠してたの発覚。また5ヶ月過ぎてておろせない。結局育てる事は出来ないから乳児院に預けてさ。」

「…………」

「それでも我慢して暮らしたけどまた男……んでもう子供も物心ついて色々分かるようになるからって事で離婚、お前が育てられないの分かってたから俺が引き取って現在に至ると(笑)」

「そんな細かく覚えてるなら私の事憎いんでしょ?いいよ無理して子供に会わせたりしなくたって!ずっとそうやってろくでもない女って思ってるのに、無理して私と会う必要ないでしょ!」

「正直何回か殺してやろうと思ったよ(笑)」

「だったら殺せば?好きにすればいいじゃん!」

「でも今は何とも思ってないよ。ってか感謝してるよ(笑)」

「はぁ?何言ってんの?バカじゃない?」

「色々あったっていうか有りすぎたけどさ、お前と出会わなければ子供には会えなかった訳でしょ。過去がどうであれ、今俺の所に子供が居てくれるってのが物凄く幸せなんだよ。地獄みたいに感じた何年かより、これから子供の成長を見れる幸せの方が何倍も長い。だから心底お前には感謝してる。それに離婚しようが離れてようがお前は母親だろ?堂々と会えばいいじゃん。こういうの腐れ縁っていうんだろ(笑)」

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